「愛犬にはいつまでも元気でいてほしい」ーーそれはすべての飼い主が願うことです。
その鍵となるのが「免疫力」です。免疫力が高い犬は病気にかかりにくく、毎日を健やかに過ごせます。しかし、偏った食事や運動不足、ストレスは免疫力を低下させる原因に。
そんな愛犬の健康を守るために、食べ物が果たす役割をご存じですか?
今回は、免疫力を高める食べ物や栄養素を解説します。
ご家庭で用意できる食べ物ばかりなので、ドッグフードにトッピングしたり、手作りごはんに取り入れてみましょう!
免疫力とは?
有害物質から体を守る防御システム
免疫力とは、病原菌やウイルスなど外部から侵入する有害物質から体を守る防御システムです。
免疫力が低下すると普段は問題にならない病原体にも抵抗できずに感染症や炎症が発生しやすく、回復にも時間がかかります。
とくに犬は、季節の変わり目の気温や湿度の変化、花粉やほこりなどのアレルギー、ストレス、換毛期による体への負担などにより、病気にかかりやすいです。
免疫力を高めるメリット
犬の免疫力を高めるには、健康的なバランスの良い食事、質の良い睡眠、ストレスを溜めさせない、適度な運動、飼い主とのコミュニケーションなどが挙げられます。
犬の免疫力を高めることで得られるメリットは多く挙げられます。
- 病原体に対する抵抗力が強く、病気にかかりにくくなる
- 病気になった場合でも、自然治癒力が高いため病気の回復が早い
- 過剰な免疫反応が抑えられるため、アレルギー症状が軽減
- 活発に動くエネルギーを生み出しやすく、エネルギッシュで活動的
- 免疫力の高さにより病気を防ぎ、長寿に繋がる
- 病気の頻度が少なくなることで、動物病院の通院や治療の負担が軽減
免疫力が低い犬種は?
免疫力が低下するのは、ストレスや運動不足、偏った食事による栄養不足、老化などが原因であるため、免疫力の低下はどの犬種でも起こりえることですが、特定の免疫関連疾患や遺伝的特徴により、免疫系が弱くなりやすい犬種もいます。
- チワワ:超小型犬としてのストレス耐性の弱さが、免疫力の低下を招く可能性
- ダックスフンド:椎間板ヘルニアに伴う炎症が慢性的であり、免疫機能が低下するリスクが高い傾向
- ジャーマンシェパード:遺伝的に胃捻転や炎症性腸疾患にかかりやすく、免疫力の低下につながる
- ゴールデンレトリバー:遺伝的にガンや自己免疫疾患が多い
犬の免疫力を高める食べ物
免疫細胞の約70%は腸内に存在
犬の免疫細胞は全身に存在しますが、とくに腸は「第2の脳」ともよばれ、免疫システムの約70%が集まる重要な器官です。
そのため、腸内環境を整えることは、免疫システム全体が活性化し、免疫力を高めることにもつながります。
犬の免疫力を高める食べ物
犬の免疫力を高める食べ物として、代表的なものが下記です。免疫力を高める効果の他にもさまざまな健康効果があります。
食べ物 | 栄養素 | 特徴 |
---|---|---|
鶏肉 | ・高品質なタンパク質 ・ビタミンB6 ・亜鉛 ・リン | ・高品質なタンパク質 ・低脂質 ・消化がいい ・エネルギー代謝を促進 ・骨や歯の健康を維持 |
七面鳥 | ・高品質なタンパク質 ・トリプトファン ・セレン ・亜鉛 | ・高品質なタンパク質 ・低脂質 ・低アレルギー性 ・筋肉の形成を助ける ・ストレスの軽減 ・強力な抗酸化作用 |
赤身肉 (牛肉や鹿肉) | ・良質なタンパク質 ・鉄分 ・亜鉛 ・ビタミンB12 | ・免疫細胞の生成をサポート ・赤血球の生成 ・神経系の健康を支える ・筋肉の維持 ・貧血予防 |
サーモン | ・ビタミンD ・セレン ・オメガ3脂肪酸 (EPAやDHA) ・アスタキサンチン | ・免疫調節作用 ・抗炎症作用 ・強い抗酸化作用 ・皮膚や被毛の健康維持 ・心臓や関節の健康を促進 |
イワシ | ・カルシウム ・亜鉛 ・セレン ・ビタミンB12 ・オメガ3脂肪酸 (EPAやDHA) | ・小魚の中で高栄養価 ・抗炎症作用 ・抗酸化作用 ・歯や骨の強化 ・骨格の健康維持 |
卵 | ・高品質なタンパク質 ・ビタミンD ・ビタミンB群 | ・完全栄養食品 ・筋肉や骨の健康維持 ・疲労回復 ・皮膚や被毛の健康維持 |
ブロッコリー | ・ビタミンC ・ビタミンK ・鉄分 ・食物繊維 | ・強い抗酸化作用 ・抗炎症作用 ・骨の健康を維持 ・腸内環境の改善 |
ほうれん草 | ・βカロテン ・ビタミンK ・鉄分 ・葉酸 | ・血液循環が改善 ・細胞の再生と修復を促進 ・貧血予防 |
にんじん | ・βカロテン ・食物繊維 | ・皮膚の健康維持 ・視力の維持 ・腸内環境の改善 |
かぼちゃ | ・カリウム ・βカロテン ・食物繊維 | ・腸内環境の改善 ・皮膚や粘膜の健康維持 ・血圧の調整 ・体力回復 |
サツマイモ | ・βカロテン ・カリウム ・食物繊維 | ・腸内環境の改善 ・皮膚や粘膜の健康維持 |
キノコ類 | ・βグルカン ・エルゴチオネイン ・ビタミンD | ・強い抗酸化作用 ・抗炎症作用 ・腸内環境の改善 |
ケール | ・カルシウム ・βカロテン ・ビタミンC ・ビタミンK | ・抗酸化作用 ・抗炎症作用 ・デトックス効果 ・骨や歯の強化 ・血液凝固 |
りんご | ・ビタミンC ・ビタミンK ・食物繊維 | ・低カロリー、低脂肪 ・抗酸化作用 ・腸内環境の改善 |
ベリー類 | ・ビタミンC ・ビタミンE ・食物繊維 ・アントシアニン ・プロアントシアニジン | ・抗菌作用 ・抗酸化作用 ・目の健康維持 ・泌尿器系の健康維持 ・老化防止 |
ヨーグルト | ・カルシウム ・プロバイオティクス | ・腸内環境の改善 ・骨や歯の強化 ・消化不良の改善 |
亜麻仁油 | ・オメガ3脂肪酸 (EPAやDHA) | ・抗炎症作用 ・皮膚や被毛の健康維持 ・心臓の健康維持 |
ココナッツオイル | 中鎖脂肪酸 | ・抗菌・抗ウイルス作用 ・エネルギー代謝を促進 ・消化吸収がいい |
犬の免疫力を高める栄養素
免疫力を高める食べ物には、多くの効果的な栄養素が含まれています。
上記でご紹介したように、ビタミンCやビタミンD、ビタミンE、抗酸化物質なども免疫力を高める効果がありますが、その中でもとくに有効的とされる栄養素はオレンジ文字の栄養素(βカロテン、βグルカン、アスタキサンチン、オメガ3脂肪酸、プロバイオティクス、亜鉛)です。
βカロテン
βカロテンとは、体内でビタミンAに変換されるプロビタミンAの一種です。とくに免疫系の強化に大きく関与し、外部からの病原体の侵入を防ぐ第一の防御壁となります。βカロテンを摂取することで皮膚や粘膜の機能が強化され、感染症への免疫力を高めることができます。
さらに、βカロテン自体が強力な抗酸化作用を持つため、細胞を酸化ストレスから守る働きもあります。活性酸素が細胞の再生や修復し、病原体への免疫力を高めます。また、βカロテンはマクロファージやナチュラルキラー細胞などの免疫細胞の生成と活性化を促進するため、免疫力を高めることにもつながります。
犬は体内でβカロテンをビタミンAに変換できますが、変換効率は人間より低いため、食べ物からの摂取が推奨されています。
上表で挙げた犬の免疫力を高める食べ物以外にも、パパイヤやアルファルファ、カブの葉などにも豊富に含まれています。
βグルカン
きのこに含まれる代表的な成分であるβグルカンとは、免疫細胞であるマクロファージやナチュラルキラー細胞を活性化させ、感染症や病原体に対する免疫力を高めることができます。また、きのこ類にはエルゴチオネインなどの抗酸化物質も豊富で、細胞を酸化ストレスから保護し、免疫細胞の老化を防ぐ働きがあります。
きのこ類の中でもとくに、しいたけ、舞茸、エノキタケ、ぶなしめじはこれらの栄養素が豊富に含まれています。
さらに、食物繊維が豊富なので、善玉菌が増えて腸管免疫の強化に寄与されることで、免疫力を高めることにつながります。
βグルカンは病原体に対する攻撃力を高めますが、一方で過剰な免疫反応を抑える働きも持っています。この「免疫応答の調節」の特性により、感染症の予防や回復、アレルギーや炎症性疾患の抑制が期待されています。
犬は体内でβグルカンを合成することができないため、食べ物からの摂取が推奨されています。
上表で挙げた犬の免疫力を高める食べ物以外にも、海藻類(わかめや昆布)、ビール酵母などにも豊富に含まれています。
参考:LPS、βグルカン、ペプチドグリカンのマクロファージ活性化力と相乗効果|自然免疫応用技研株式会社
アスタキサンチン
アスタキサンチンはカロテノイドの一種で、サーモンやエビ、カニに含まれる赤い色素です。強力な抗酸化作用を持ち、活性酸素を除去する能力はビタミンEの約1000倍ともいわれています。この作用により、免疫細胞を酸化ストレスから保護し、免疫力を高めることができます。また、炎症を抑える働きがあり、慢性的な炎症による免疫機能の低下を防ぐ効果も期待されています。
アスタキサンチンの免疫能と運動能力に及ぼす影響についての研究では、アスタキサンチンの摂取が若いスポーツ犬の抗酸化力を高め、発育および運動後の回復力や免疫機能の改善に寄与することが分かりました。
上表で挙げた犬の免疫力を高める食べ物以外にも、オキアミ、エビ、いくらなどにも豊富に含まれています。
参考:6ヶ月のスポーツ犬におけるアスタキサンチンの免疫能と運動能力に及ぼす影響
オメガ3脂肪酸(EPAやDHA)
犬は体内で、αリノレン酸からEPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)を合成することができるため必須脂肪酸ではありませんが、変換効率が非常に低いため、食べ物から摂取することが推奨されています。
オメガ3脂肪酸(EPAやDHA)は、強力な抗炎症作用があります。炎症を抑えることで、免疫システムの過剰な反応を防ぎ、アレルギーや自己免疫疾患の症状を緩和する効果が期待されます。また、細胞膜の構造を安定化させることで、免疫細胞の働きを効率的にし、感染症への免疫力を高めることができます。
上表で挙げた犬の免疫力を高める食べ物以外にも、マグロ、サバ、ニシン、えごま油、チアシードなどにも豊富に含まれています。
プロバイオティクス
乳酸菌やビフィズス菌などのプロバイオティクスは、腸内の善玉菌を増やし、悪玉菌の増殖を抑えることで腸内フローラのバランスを改善します。
また腸壁を強化して病原体や有害物質が侵入するのを防ぐバリア機能を向上させたり、免疫細胞であるマクロファージやリンパ球を刺激して活性化させることで、免疫力を高めることにつながります。
プロバイオティクスの健康効果の研究において、プロバイオティクスが犬の腸内細菌叢を改善し、免疫を活性化させ、感染性胃腸炎や下痢の発症を現象させることが分かりました。
またアトピーの犬に関しては、皮膚の痒みや皮膚スコアが減少し、皮膚状態が改善したことから、アトピー性皮膚炎に対する補助的治療効果があるとされています。
上表で挙げた犬の免疫力を高める食べ物以外にも、納豆、発酵野菜(塩分無添加のピクルスなど)、未精製のリンゴ酢(薄めて使用)にも豊富に含まれています。
亜鉛
亜鉛は免疫細胞の生成と機能をサポートする役割を持っており、とくにT細胞やマクロファージの働きを活性化します。これにより、犬の体が病原体に対して迅速に反応し、感染症への免疫力が高めることができます。
また、亜鉛は抗酸化作用を持ち、細胞を酸化ストレスから保護します。さらに、亜鉛は皮膚や粘膜の修復と再生を助けるため、外部からの病原体の侵入を防ぐバリア機能の強化にも寄与します。
上表で挙げた犬の免疫力を高める食べ物以外にも、レバー、タラ、豆腐などにも豊富に含まれています。
愛犬のアレルギーや持病、体質などを考慮し、病気に負けない体作りや、免疫力を高めるために、日々の食事に取り入れてみてください。