犬の心臓病。症状や原因、投薬。治療しない選択肢はあり?食事で気をつけること

犬 心臓病 心筋症 僧帽弁閉鎖不全症

犬の病気:心臓病(Heart Disease)

心臓病は、心臓に関わる疾患の総称です。

犬の心臓病でみると、僧帽弁閉鎖不全症やフィラリア症、心不全などが代表的な心疾患として挙げられます。多摩獣医臨床研究会の犬猫の疾病統計調査によると、犬の全疾患57,847件のうち2,547件と4.4%程度が心疾患という診断を受けています。

心臓病は体の全細胞に血液を供給する役割を担う循環器系の疾患(心臓や血管、リンパ管など)です。心臓は循環器系の中でも全身へ血液や酸素を送るポンプのような役割を果たす重要な器官なので、短時間でも心臓の機能不全や障害は犬の死に直結する重篤な症状になる可能性があります。

原因は高血圧や動脈硬化、寄生虫など後天性の場合もありますが、先天性や遺伝的要素も大きいと考えられています。たとえば僧帽弁閉鎖不全症は、中高齢以降の小型犬の発症率が高い心臓病です。他にも小型犬・大型犬などサイズや犬種によって発症しやすいと指定される心臓病があります

犬の心臓病の症状

初期の心臓病は症状が少ないため症状からの早期発見は難しく、症状が見られる頃にはすでに重症化している場合が多いと言われます。

  • 疲れやすい
  • 息切れ・呼吸数の増加
  • 息苦しそうな様子
  • 呼吸困難
  • 失神・意識不明
  • 元気減少
  • 食欲減少
  • 運動減少
  • 多飲

代表的な症状として、心臓の機能に影響が出るため、安静時や少しの運動でも咳や息切れ、呼吸数増加が見られます。また、疲れやすく散歩や外出に対して消極的になり動きたがらなくなる傾向があります。

心臓病の症状が進行すると水をよく飲む多飲の症状もよく見られます。

犬に多い代表的な心臓の病気

僧帽弁閉鎖不全症

僧帽弁閉鎖不全症は、最も犬の発症率が高い心臓病で、犬の心疾患の約75~85%を占めています。

特に中高齢期以降の小型犬(マルチーズ、ポメラニアン、プードル、キャバリア・キング ・チャールズ ・スパニエルなど)に多い心臓病で、これまでは肥満や高塩分食などが原因と考えられていましたが、現在は遺伝の要因が大きいと考えれています。

犬フィラリア症

犬フィラリア症は蚊を介して感染する寄生虫による感染症で、以前までは犬の心疾患の中で非常に大きな割合を占めていた心臓病でした。

近年はフィラリア症の予防法が広く認知され、ワクチン接種なども一般的になったことで徐々に減少してきています。

肺動脈弁狭窄症

肺動脈弁狭窄症は、国内外問わず上位5位以内にはいる発生頻度の高い先天性の心臓病です。

ふらつきや舌の色が白っぽくなったり、急な運動で失神してしまうなどの症状が見られます。

心不全

心不全は心臓の機能異常によっておこる病態の総称です。他の心臓病や疾患などの要因によって起こる状態を指すため病名ではありませんが、ポンプの役割が機能しなくなるため、全身に必要な血液が十分に送り出せず、血液の流れが滞り、他の器官や全身に影響を及ぼします。

急激に心臓機能の悪化が見られる心不全を急性心不全と言います。心臓機能が低下した状態が長期間続くものの症状や状態は安定している状態を慢性心不全と言います。

犬の心不全の割合は1994年から2000年までのたった5年で16.2%から45%まで増加しています。

診断方法

犬の心臓病では以下のような検査を用いて調べます。

  • 身体検査
  • 心電図検査
  • 血圧測定
  • 心音図検査
  • X線検査
  • 心エコー検査
  • 心臓カテーテル検査

身体検査の聴診で心雑音がないか確認します。聴診時に聞こえた心雑音のパターンや強さで、ある程度の病気の種類を判断できる場合もあります。

治療方法

  • 投薬治療(血管拡張剤・利尿剤など)
  • 駆虫薬(寄生虫が原因の場合)
  • 外科手術

心臓病の治療方法はどの心疾患かによって異なります。

犬に最も多い僧帽弁閉鎖不全症では血管拡張剤や利尿剤などの内科的治療が行われるのが一般的です。また、フィラリア症の場合は寄生虫が原因なので、駆虫薬を用いて原因となっている寄生虫を取り除きます。

重症化している場合や根治的な解決を目指す場合には、血管を広げる手術(バルーンカテーテル治療)や開心手術などで治療を行います。

治療しないという選択肢

心臓病の種類によって、無症状や軽度な場合は特に治療は行わず、定期的な検査のみで様子を見る場合もあるようです。

ただ重症化した状態では内科的な対症療法や根治的治療のために外科手術を行うなどが選択されるかと思われます。

心臓病の愛犬にできること

薬や手術などの治療のほか、食事や環境などでなるべく心臓に負担のかけないように工夫できます。

  • 室内の温度を一定に保つ(部屋と廊下などの温度差にも注意)
  • 塩分(ナトリウム)を控えたドッグフード
  • リンを控えたドッグフード
  • 便通や腸内環境に配慮したドッグフード
  • L-カルニチンやタウリン配合のドッグフード
  • 腎臓に配慮したドッグフード(ミネラルバランスやタンパク質量)

環境面では血管の収縮に関わる急激な温度変化に注意しましょう。犬が移動する部屋や廊下は事前に温めておいたり、散歩の時間を調整するなどして、温度の変化が少なくなるようにすることが大切です。

食事面では塩分やリンを控えた食事が推奨されることが一般的です。また便秘の時に便を出すために力むと心不全症状を起こしやすくなるため、水溶性食物繊維、オリゴ糖や乳酸菌、酵母などが配合されたドッグフードで便通を整えるのもいいかもしれません。

また、心臓病の犬は腎臓病も併発しやすくなるので、ミネラルバランスやタンパク質量(高タンパク過ぎない中程度の量)などにも配慮されたフードもおすすめです。

まとめ

  • 犬種や遺伝でかかりやすい心臓病がある
  • 咳や息切れ、運動減少などの症状が見られる
  • 軽度な場合は内科的治療が一般的
  • 重症化した犬や根治的な治療を望む場合は手術も
  • 食事や環境など心臓に負担をかけない生活を心がける
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2020年10月2日

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一般社団法人ペットフード協会ペットフード販売士、キャットフード勉強会ディレクターとして、キャットフードに関する情報を提供しています。また、日本化粧品検定協会のコスメコンシェルジュ資格を有し、ペットフードだけでなく化粧品にも精通しています。販売時に必要な知識となる薬機法などについてもご紹介ができます。 日本化粧品検定協会会員。