犬がかかりやすいアトピー性皮膚炎(CAD)
犬の約10~15%がアトピー性皮膚炎を発症
犬アトピー性皮膚炎(Canine atopic dermatitis)は、犬に最も頻繁に見られる皮膚疾患です。日本では犬のアトピー性皮膚炎の発症率についての発表はありませんが、海外での発表によると犬の約10~15%がアトピー性皮膚炎と言われています。
犬アトピー性皮膚炎の発症の平均年齢は2.56歳で、アトピー性皮膚炎の犬の62.6%は、生後6ヶ月~3歳までの間に発症しています。
アトピー性皮膚炎は、人と同様で原因がはっきりわかっているわけではなく、絶対的な治療法なども確立されていないので、完治は難しいとされています。
アトピー性皮膚炎にかかりやすい好発犬種
- シー・ズー
- 柴犬
- ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア
- ゴールデン・レトリーバー
- ジャーマン・シェパード・ドッグ
- ダルメシアン
- ミニチュア・シュナウザー
- テリア系
犬のアトピー性皮膚炎の症状
アトピー性皮膚炎の診断基準
アトピー性皮膚炎と診断する場合、下記の主徴と副徴、それぞれ3つ以上を満たすべきであるとされています。
主徴 | 副徴 |
---|---|
・そう痒 ・顔面と肢端の皮疹 ・足根屈曲面や手根伸側面の苔癬化 ・慢性あるいは慢性再発性皮膚炎 ・症例や家族のアトピー歴 ・犬種好発性 | ・3 歳齢までに発症 ・汎発性の乾皮症 (1997 追加) ・浅在性ブドウ球菌感染症 ・皮膚再発性マラセチア感染症 ・両側性細菌性外耳炎(1997 追加) ・顔の紅斑と口唇炎 ・環境アレルゲンに対する即時型皮内反応陽性 ・血清アレルゲン特異 IgE の上昇 |
ただ上記の判断基準は獣医師による診察や検査をしなければ不明な項目もあるので、飼い主さんは、アトピーかな?と思ったら以下の症状に当てはまっているか確認し、獣医師さんや動物病院で診てもらいましょう。
寄生虫あるいは細菌感染を併発するため他の皮膚病と誤診されやすいので、後からアトピー性皮膚炎だと分かる場合もあります。
強い痒みと皮膚の赤身や発疹、脱毛
犬のアトピー性皮膚炎は、どの犬種でもかゆみや発赤が最も多く見られています。
引用元:犬のアトピー性皮膚炎の発症年齢と臨床症状 (Age of Onset and Clinical Signs in Canine Atopic Dermatitis)
他にもアトピー性皮膚炎になると以下のような症状や様子が見られます。
- 強いかゆみ
- 全身を床や壁にこすりつける
- 後ろ足で耳や頭を掻く
- 皮膚が赤くなる
- 皮膚の乾燥、かさつく
- フケが出る
- 全身の脱毛
- 膿が出る
若い間は治ったりひどくなったり、一部分だけの症状の場合もありますが、年齢を重ねると徐々に治りが悪くなり、症状も目立つようになる傾向があります。
頭部や目、耳、手足の先、お腹の辺りに症状が見られる
アトピー性皮膚炎では、上記のような症状が以下の患部に特に強く見られます。
アトピー性皮膚炎では特に耳や目、顔全体に症状が出やすく、また関節の内側や腹部に症状が見られることが多いです。関節の外側や背中側の症状はあまり見られないのが特徴です。
食物アレルギーで出る皮膚疾患と部位が似ています。
また、耳にも炎症が出ている場合、外耳炎も併発している可能性があります。
犬のアトピー性皮膚炎の原因
犬のアトピー性皮膚炎の原因ははっきりとは分かっていませんが、好発犬種があることから、何らかの遺伝的な要因に加えて、花粉、ダニなどの原因物質(抗原、アレルゲン)に対して、過剰なアレルギー反応を引き起こすことによって発症する病気と考えられています。
複数の抗原が作用していると言われていますが、原因物質としてはハウスダストが多いとされています。また、食事が原因の場合もあります。
アレルギーを起こすアレルゲンが体に侵入すると、体内でリンパ球に作用し、このリンパ球から免疫グロブリン(IgE)抗体が産生されることで、アトピー性皮膚炎の症状を引き起こします。
犬のアトピー性皮膚炎の治療方法
アトピー性皮膚炎を発症した犬には、症状の程度に合わせて薬用シャンプーやステロイド、抗アレルギー剤などの内服薬を投与します。
また、食事が原因となっている場合は、食事の内容を改善していくこともあります。アトピー性皮膚炎の犬用に開発された療法食や対応食のドッグフードも販売されているので、そちらを勧められる場合もあります。
また、アトピー性皮膚炎はハウスダストが原因であることが多いと言われているので、日頃から愛犬の過ごす環境は清潔を保ち、チリやホコリをためないようにすることがアトピーの症状の悪化を抑え、改善することにつながります。
アトピー性皮膚炎の予防方法はある?
アトピー性皮膚炎は遺伝的な要素もあるので、好発犬種の場合、どうしても発症してしまうことはありますが、子犬の食事で興味深い研究がありました。
引用元:フィンランドの成犬における飼い主が報告したアレルギー/アトピー皮膚徴候の発症の要因としての子犬の食事
4022頭の犬を評価した。1158頭が症例で、2864頭がコントロールであった。幼犬期に食べていた食事をアンケートにより調査した。結論として、幼犬期に生の動物性食品を与えることでアレルギー性/アトピー性皮膚症状を防ぐ影響があるかもしれない。一方で幼犬期に混合油、加熱調理の食品、フルーツを与えることはその後のアレルギー性/アトピー性皮膚症状を引き起こす可能性があるかもしれない
フィンランドで、幼犬期に生の動物性食品を与えることでアレルギー性・アトピー性皮膚炎の症状を防ぐ影響があるかもしれないという研究結果が発表されています。反対に、混合油や加熱調理の食品、フルーツはアトピーを引き起こす可能性があるかもしれないという可能性も示唆されています。
生の動物性食品を子犬に与えるのは、寄生虫や感染症、食中毒のリスクを考えると、実践は難しいところですが、幼犬期の食事によってアトピー性皮膚炎の症状に影響を与えるという点で、今後アトピー性皮膚炎の予防や治療に活かせる可能性はあるかもしれません。
まとめ
- 約10~15%が発症する犬アトピー性皮膚炎
- 頭部や手足、関節の内側などに強い痒みや発赤が現れる
- 原因は複数の要因と考えられているがハウスダストが最も原因物質として多いとされている
- 治療は基本的にステロイドなどの薬の投与