

今回は、銀杏中毒の危険性や、秋の散歩の注意点をご紹介します。
銀杏(ginkgo)について
秋の紅葉の季節になると、沿道や公園を鮮やかな黄色で彩るイチョウの木。愛犬との散歩やピクニックでイチョウを見にいく方も多いのではないでしょうか。
銀杏はイチョウの雄株と雌株が受粉して発生する種子で、雌株に実ります。固い殻と独特の匂いが特徴的で、落ちている銀杏の異臭を感じて避ける犬もいますが、好奇心旺盛で興味を示してパクっと口に入れてしまう犬もいます。
銀杏は、犬が食べてはいけない危険な食べ物です。銀杏を食べることで中毒症状があらわれ、触れることで皮膚炎の原因となる恐れがあります。
犬が銀杏を食べたらどうなる?
中毒成分メチルピリドキシン
人が食べる黄色の銀杏は、固い殻の中に入っている胚乳とよばれる部分です。この胚乳には、犬の中毒成分となるメチルピリドキシン(ギンコトキシン)が含まれています。
メチルピリドキシンはビタミンB6の働きを阻害する作用があります。
ビタミンB6はヘモグロビンの合成、炭水化物の代謝、アミノ酸の代謝、脂質の代謝など多くの酵素のサポート因子です。このビタミンB6の働きが阻害されるとビタミンB6欠乏症を引き起こし、食べてから1~12時間で嘔吐や下痢、痙攣、てんかん発作、呼吸困難などの症状を引き起こして最悪の場合は命に関わります。
皮膚炎の原因となる成分ギンコール酸
銀杏には中毒となる成分だけでなく、皮膚炎の原因となる成分が含まれています。
銀杏の外種皮に含まれているギンコール酸です。触ったり踏んだりすることで皮膚炎を起こす恐れがあります。
人も銀杏の大量摂取は危険
実は、人も銀杏を大量に食べると中毒を起こすと言われています。
人は体内に解毒機能が発達しているため中毒を起こしても治療により予後良好の場合が多いですが、犬は人よりも解毒機能が低いため、少量でも重症化しやすいと言われています。
どのくらい食べると危険?
人は多くて15~20粒、子供は5粒でも危険
人が銀杏中毒があらわれる銀杏の粒は約40粒といわれ、一般的に1日に食べる量は多くても15~20粒が推奨されています。子供の場合は5粒でも中毒症状があらわれる恐れがあります。
犬は1粒でも危険?
人の銀杏中毒は古くから知られているため中毒摂取量や症状などの文献は多数ありますが、犬は人との感受性の違いや銀杏の匂いや味を好まないため誤食しないことが多いことなどの理由により文献が乏しく、明確にされていません。
犬は子供よりも体が小さいため、1粒でも中毒症状があらわれると推測されます。
特に体が小さい小型犬や内臓機能が未発達の子犬は1粒でも安全とは言い切れないので、注意が必要です。
参考:銀杏中毒を疑った犬の1例
飼い主さんが気を付けること
犬が銀杏中毒や皮膚炎となってしまうのは、
- 銀杏の殻を噛み砕いて飲み込んだ場合
- イチョウの木の下が踏み荒らされていて殻が割れている場合
- 銀杏を踏んでしまった場合
- 自宅で拾い食いをしてしまった場合
が多くみられます。
犬が銀杏を食べないように触れないようにするために、飼い主さんができる対策をご紹介します。
イチョウの木の近くを通らない
犬が銀杏を食べないように触れないようにするには、イチョウ並木に近づかないことが一番の対策です。
イチョウ並木の下に落ちている銀杏はほとんどが硬い殻に覆われている状態で、もし口に含んでしまっても咀嚼をしなければ中毒成分を摂取するリスクは低いと言えますが、犬が銀杏を咀嚼する前に取り出すのは難しい場合があります。
また、銀杏の殻が割れて胚乳部分が出て踏んでしまい、皮膚炎になるリスクもあります。
愛犬とイチョウ並木を散歩する際は、銀杏が落ちていないかの確認をすること、落ちている銀杏に近づかせないこと、食べようとしたら即座に離すことが大切となります。

銀杏を調理中は犬を近づけない
中毒成分メチルピリドキシンは熱に強いため、加熱したとしてもその特性が失われません。
ご自宅では焼き銀杏や銀杏ご飯、茶わん蒸しなど様々な料理に活用できますが、加熱調理したとしても毒性は失われないので、盗み食いや拾い食いなどされないように十分に注意しましょう。銀杏を調理中は、キッチンに犬を入れない方が良いでしょう。
また、犬は匂いにつられてゴミ箱を漁ることもあります。銀杏をゴミ箱に捨てる際はポリ袋などで密閉するなど工夫をしましょう。
実は漢方に使われるほど栄養が豊富
銀杏はビタミンAやビタミンB、食物繊維などが豊富に含まれています。人にとっては栄養効果が高い食べ物で、漢方にも使われています。特にビタミンCは、食べられる種実類の中ではトップクラスの含有量です。
しかし、犬にとっては少量でも中毒となります。おねだりされるままに与えてしまいそうになりますが、「犬に与えてはいけない」ということをきちんと家族間で共有して徹底することが大切となります。
犬が銀杏を食べてしまったときの対処法
犬が銀杏を食べているところを見つけた場合は、すぐに口から取り出しましょう。少しでも銀杏が体内に入れないことが大切となります。口から取り出すことができても、少しの成分で中毒症状があらわれる恐れがあるので動物病院で診てもらってください。
食べてしまった場合は、すぐにかかりつけの獣医師に連絡をしましょう。水を飲ませて吐き出させる応急処置もありますが、素人の処置では犬に大きな負担となる恐れがあります。
犬の様子、銀杏を食べた時間、量などをメモに取り、獣医師さんに報告しましょう。
まとめ


銀杏は犬にとって中毒と聞いたことがあるのですが、もし食べてしまった場合はどうなるのでしょうか…?