ドッグフードのメイン原材料:肉類
主原料で最も高い割合で配合
ドッグフードには欠かせない肉。アレルギーなどの事情がない限り、ほとんどのドッグフードに主原料として使用されています。
以前までは穀物が主原料の商品が多く見られましたが、ドッグフードや犬の健康に対する意識の変化もあって、現在は肉がメインに配合されることが多くなりました。
この肉が愛犬の生命活動や体を作るために利用され、愛犬は健康維持となります。
近年、肉の選択肢が広くなっている
また、以前はミートミール、家禽ミール、牛、豚、鶏くらいで、使用される肉の選択肢はそこまで多くありませんでしたが、近年は様々な肉が使用されています。
従来の肉にアレルギー反応が出て食べられない犬もいることから、ラム肉やターキーを始め、これまで廃棄されていた鹿肉や猪肉などのジビエ肉(狩猟肉)、食糧難に向けた新しいタンパク源として昆虫を利用したドッグフードも登場しています。
肉に豊富に含まれる栄養素
動物性タンパク質(アミノ酸)
肉には動物性タンパク質が多く含まれています。タンパク質は犬の細胞を構成し、犬の皮膚、筋肉、内臓、神経、骨格、被毛など様々な体の組織を健康に保つために必要不可欠な三大栄養素です。
タンパク質は細胞間の情報伝達物質となって神経の動きを助けたり、必要な栄養素の合成や代謝をするための犬の体内で化学反応を促します。
また、1gあたり4kcalのエネルギーとして利用することができます。
動物性タンパク質には、犬に必要な必須アミノ酸がバランス良く含まれていることから、利用性が高く、少量でも効率良く吸収されます。
脂質(必須脂肪酸)
脂質の過剰摂取は肥満のもとになることから、脂質の多い肉を避けたフードを求める方もいますが、脂質は犬にとって効率良く利用できるエネルギー源のひとつであり、皮膚や被毛の健康維持に関係する必須脂肪酸のオメガ6(リノール酸、アラキドン酸など)の供給源です。
ミネラル(鉄分や亜鉛、リン、マグネシウムなど)
肉には鉄分や亜鉛、リン、マグネシウムなどのミネラルが豊富に含まれています。
神経伝達や酸素の運搬、骨の構成、視覚・粘膜の維持など、それぞれに体の機能維持に必要な働きをもっている必須栄養素です。
肉類一覧の特徴と比較表
肉の種類 | カロリー (100g) | 嗜好性 | 供給量 品質の安定 | 使用頻度 | 特徴 |
---|---|---|---|---|---|
鶏肉 | 229kcal | ◎ | ◎ | 非常に多い | 最もメジャーな肉 |
牛肉 | 298kcal | ◎ | ◎ | 非常に多い | アレルゲンになりやすい |
豚肉 | 386kcal | ◎ | ◎ | やや多い | ビタミンB群が豊富 |
鹿肉(ベニソン) | 109kcal | ◎ | △ | やや多い | 国産で増えてきた |
馬肉 | 109kcal | ◎ | △ | やや多い | 高級ジビエ |
七面鳥(ターキー) | 106kcal | ◎ | ○ | あまりない | 最も低カロリー |
鴨肉(ダック) | 450kcal | ◎ | ○ | あまりない | 最も高カロリー |
ラム肉 | 227kcal | ○ | ○ | やや多い | アレルギー対応 |
アヒル肉(ダック) | 201 kcal | ○ | ○ | あまりない | アレルギー対応 |
うさぎ肉(ラビット) | 146kcal | ○ | △ | あまりない | EU産がほとんど |
カンガルー | 110kcal | ○ | △ | あまりない | EZ産・AU産がほとんど |
バイソン | 146kcal | ○ | △ | ほとんどない | 1ブランドしかない |
ミートミール 家禽ミール | ? | △ | ◎ | やや多い | 避けられる事が多い |
ドッグフードの肉の種類
チキン(鶏)
チキンはドッグフードではかなり定番の肉原材料です。高タンパクで低脂質、高タンパク・低脂質で、クセが少なく好みに偏りがないため、食いつきも良好。
世界中で食べられている食材で、宗教的な問題もありません。飼育しやすい動物で、なおかつ成長が早く生産コストも低いことから、製造面・栄養面の両方でメリットの多い肉原料と考えられています。
ほとんどのドッグフードメーカーのラインナップにチキンがあるので、商品数や選択肢が多いです。
- AATUドッグフード
- ニュートロナチュラルチョイス 成犬用 チキン&玄米
- ヤラー オーガニックチキン
- ジウィ・ピーク フリーレンジチキン
ビーフ(牛)
牛肉もドッグフードではよく見られる原材料で、牛は体が大きく人が食べない部分の量も多いため、ドッグフードによく利用されます。高タンパクで脂質も豊富に含まれるため、食べ応えのある満足感の高いレシピになることが多いです。
牛肉については、以前BSE(狂牛病、牛海綿状脳症)に感染した牛肉でつくられたペットフードにを食べたことでペットが死亡した事件があったことから、牛肉を敬遠する飼い主さんいます。現在はBSE対策もメーカーや製造業者で行われているため、基本的にペットフードに混入する心配はないと言われています。
マダニに咬まれると牛肉アレルギーを発症しやすくなることから、犬の牛肉アレルギーの発症率が高いことが分かっています。
酪農や牧場が多いニュージーランドなどの原産国の商品には、グラスフェッドビーフ(牧草牛)など牛肉を使ったドッグフードが多いです。
- ジウィ・ピーク ドライフード NZグラスフェッドビーフ
- 日本のみのり ドッグフード ビーフベース
- ニュートロワイルドレシピ 成犬 ビーフ
ポーク(豚)
豚肉は非常に高脂質な肉原料です。豚肉は他の動物原料と比較して、ビタミンB1やナイアシン(ビタミンB3)を始めとした水溶性のビタミンB郡が豊富に含まれています。脂質は多めですがその分、オメガ6脂肪酸やオレイン酸(オメガ9脂肪酸)が摂取できます。
家畜として様々な国で飼育されていてある程度の大きさがあり人が食べない不可食部位も多く出るため、ペットフードの原材料としても使いやすい原材料の1つかと思います。
- アカナ シングルス ヨークシャーポーク
- ペットドゥ プロステージ
- フォルツァ10 デイリーフォルツァ ポーク
ターキー(七面鳥)
ターキーは肉の中で最も低脂質なヘルシーな肉で、ダイエットにも良い食材です。
日本では七面鳥肉の生産は非常に少ないので、海外のフードに使用されていることが多いです。ターキーというとパーティーやクリスマスなど特別感の強い食べ物なので、原価も高いイメージがありますが、海外では日常的に食べられているので実はチキンと比べてもそこまで金額は高くありません。
- ソルビダ グレインフリー ターキー
- ナチュラルバランス ウルトラプレミアム ハイプロテイン ターキー
- ロータス グレインフリー ターキーレシピ
鴨肉・アヒル肉(ダック)
鴨肉やアヒル肉はかなり高脂質で不飽和脂肪酸も多く含有しています。また、ビタミンB群が豊富です。
日本では鴨とアヒルを別に呼ばれますが、海外では同じダックと呼ばれています。鴨とアヒルは、見た目や飼育化にあるかという違いはありますが、生物学的には大きな違いはありません。鴨は野生、アヒルは品種改良で家禽化したマガモです。
ちなみに鴨とアヒルを交雑させたのが合鴨になります。
- AATUドッグフード ダック
- アカナ シングルス フリーランダック
- アーテミス オソピュア グレインフリーダック&ガルバンソー
ラム(羊)
ラムは生後12ヶ月未満の子羊肉を使用したドッグフードで、アレルギー対応食によく利用されています。
ラムには、かゆみやアレルギー症状を引き起こすヒスタミンという成分を抑えるアミノ酸「メチオニン」が多く含まれています。
また脂質が豊富なラムですが、ラムに豊富なL-カルニチンは脂質の代謝も行うので、多少高脂質でも相殺されるかもしれません。
- ジウィ・ピーク ドッグフード ラム
- ブルーバッファロー 成犬 ラム&玄米
- ナチュラルバランスウルトラプレミアムハイプロテイン ラム
- ニュートロナチュラルバランス 成犬用 ラム&玄米
鹿肉
鹿肉は、国産ドッグフードでもよく利用されるジビエ肉の一つです。手作り食用に冷凍生肉がペット用として塊で販売されていることもあります。
野生化で運動量が多い鹿肉は、高タンパクで引き締まった低脂質な肉質が特徴で、体温が高いため寄生虫なども繁殖しにくいメリットがあります。
栄養面と衛生・安全面の両方で魅力的ですが、鹿肉は他の家畜と違い、一年中安定してとれるわけではないので、大量生産される大手メーカーのラインナップではほとんど見られません。
- アディクション ビバ・ラ・ベニソン
- ペットカインド ベニソントライプ
- ナチュラルバランス スウィートポテト&ベニソン
- ジウィ・ピーク ベニソン
馬肉
馬肉もまた国内メーカーのドッグフードに多い肉原料です。馬肉も鹿肉と同様で運動量が多く体温が高いため、脂質が少なく高タンパクかつ寄生虫が繁殖しにくい安全な肉と言えます。
ただ野生化で生息する鹿とは異なり、野生の馬はいません。カナダや国内に食用馬の牧場はありますが、他の肉と比較すると流通数も少ないので、どうしても原価が高くなります。ペットフード用として利用できる馬の数も多くはないため、大手メーカーのように大量に生産している商品のラインナップには加わる可能性は低いと考えられます。
- Awan馬肉ドッグフード
- ナチュラルハーベスト シンプレックス ホース
- フォルツァ10 デイリーフォルツァ ミディアム ホース
うさぎ肉
ウサギ肉はヨーロッパ産ドッグフードに多い原材料です。
ヨーロッパのスーパーではうさぎ肉が普通に販売されていてある程度の流通数があるため、ペットフードにも利用されることがあります。ドッグフードの原材料としてはメジャーではないので、うさぎ肉を使用したドッグフードを探そうとすると、選ぶ幅が狭くなってしまいますが、高タンパク・低脂質で肉質も柔らかいです。
- プレイアーデン ラビット
- ナチュラルバランス ポテト&ラビット フォーミュラ
- ブリット ケア ウェイトロス
バイソン(野牛肉)
バイソン(野牛)は、アメリカに住む野生のウシ科動物です。別名の「バッファロー」の方が聞き馴染みがある方も多いのではないでしょうか。
アメリカバイソンは準絶滅危惧種に指定されている動物で、保護プログラムによって徐々に生息数は回復してきましたが、まだまだ原材料としての大量に供給することは難しいため、バイソンを使用しているドッグフードはほとんどありません。
牛肉に比べて脂肪分が少なく引き締まった肉が特徴です。牛肉で行われるようなホルモン注射や薬物投与リスクがありません。
- ペットカインド グリーントライプ&バイソン
- ナチュラルバランス スイートポテト&バイソン
カンガルー
オーストラリア産・ニュージーランド産に多いカンガルードッグフード。
まさにオーストラリアらしい原材料ですが、カンガルーは飼育が難しいため、ほとんどがジビエ肉になります。増えすぎたカンガルーを利用したペットフードですが、捕獲数は限られているため、よく売れると生産が追いつかない可能性があります。
カンガルーは大きくて強い筋肉を持っているため、非常に高タンパクで引き締まった肉質です。カンガルーという珍しい肉ということで、少し味にクセがあると感じる犬もいるかもしれません。
- アディクション ワイルド カンガルー&アップル
- ナチュラルバランス ポテト&カンガルー フォーミュラ ドッグフード
- ビィ・ナチュラル
ミートミール(肉粉)・家禽ミール
ドッグフードでは、たびたび話題に上がるミートミール(肉粉)と家禽ミール。
ミートミールとは複数の不特定な動物の肉を使用してつくられた乾燥肉で、家禽ミールは複数の鳥類に限定した肉を使用してつくられた乾燥肉です。どちらも使用される肉の種類が不特定であることから、4Dミートや不衛生な肉が使用されているのではないかと問題視されています。
また「ミール」というのは混ぜて乾燥させたレンダリング過程を踏んだ肉原料なのでそれ自体が悪いわけではありませんが、他の工場や製造国で「乾燥肉」として製造された場合、添加物が使用されても原材料名欄に記載義務がなくなるので、乾燥肉にする際に使用された添加物を隠すことができてしまうデメリットがあります。
まとめ
いろいろな肉原料について解説しました。肉原料は基本的に動物性タンパク質が豊富であることは共通していますが、脂質量やビタミン、ミネラル、安全性やリスク、嗜好性などに違いが出てくるので、ぜひ愛犬に合った肉がメインのドッグフードを与えてあげましょう。
魚のドッグフードが気になる方は下の魚原料の生地もチェックしてみてはいかがでしょうか。