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トレーサビリティとは
トレーサビリティ(traceability)とは、原材料の生産から製造、流通、販売に至るまでの情報を追跡できる仕組みのことです。日本語では「追跡可能性」と訳され、食品業界全体で重要視されています。とくにドッグフードにおいては、ペットの健康を守るための安全性確保の一環として注目されています。
人間の食品と同じく、ペットフードもリコールや異物混入などのリスクがあります。もし何か問題が発生した場合に、原因となったロットや原材料をすばやく特定し、被害を最小限に抑えるために、トレーサビリティの体制は不可欠です。
参考:トレーサビリティシステムの確立|一般社団法人ペットフード協会
トレーサビリティが重要視されるようになった背景
ドッグフードにおけるトレーサビリティが注目・重要視されるようになったのは、過去のフードリコール問題がきっかけとなっています。
2007年の北米におけるメラミン混入事件では、多くのペットが腎不全を起こして死亡しました。この事件以降、アメリカやカナダ、EUではペットフードの製造管理体制が強化され、トレーサビリティの整備も進みました。また、日本のペットフード安全法の施行もこの事件がきっかけとなっています。
近年では、日本国内でも輸入ドッグフードが増えていることから、消費者が情報の透明性を求める姿勢が高まっており、企業も対応を進めています。
ドッグフードにおけるトレーサビリティの仕組み
ドッグフードのトレーサビリティは、主に以下のようなステップで情報が管理されています。
1. 原材料の調達・記録
原材料の仕入れ先、生産地、加工法などの情報が記録されます。たとえば「ニュージーランド産の放牧ラム肉」「オーガニック認証取得済の玄米」といった詳細なデータが蓄積されます。
2. 製造過程の管理
どのロットにどの原材料が使われ、どの設備で加工され、何時に製造されたのかが記録されます。生産日やバッチナンバーもここで紐づけられ、追跡可能になります。
3. 流通・出荷の記録
製造されたドッグフードがどの業者に出荷され、どの店舗に並んだかといった流通経路も記録されます。海外製品であれば輸入業者・通関記録も対象になります。
4. 販売情報との紐づけ
パッケージ裏面などに印字されているロット番号や製造日から、上記すべての工程が追跡できるように設計されているのが理想です。
トレーサビリティが果たす役割とメリット
トレーサビリティには単なる情報の記録以上の意義があります。とくにドッグフードでは、以下のような安全性向上に貢献しています。
「トレーサビリティの導入」の記載は信頼度が高い
日本国内では、ドッグフードのトレーサビリティ情報がパッケージに詳細に記載されているケースはまだ多くありません。とはいえ、以下のような情報が印字されている場合は、トレーサビリティ管理がなされている可能性があります。
- 製造ロット番号(例:LOT12345678)
- 賞味期限や製造日
- 原産国や原材料の調達国
- 製造工場の所在地(特にEU圏は明記が多い)
また、「トレーサビリティを導入」「原材料の出どころを公開」など公式サイトなどで記載しているブランドやメーカーはより信頼度が高いといえます。
異物混入やリコールへの迅速対応
ドッグフードに異物が混入したり、原材料の汚染が発覚した場合、トレーサビリティが確保されていれば、問題のあるロットを即座に特定し、迅速なリコール対応が可能になります。これにより、健康被害の拡大を防ぎ、多くの飼い主や犬たちを守ることができます。
また、どの工程で異常が発生したかを追跡できることで、原因究明と再発防止につながる点も重要です。実際に過去のフードリコール事例では、製品番号やロット管理の不備により対応が遅れ、被害が拡大したケースも報告されています。
トレーサビリティは、単なる記録ではなく、ペットの命を守るための緊急時の“命綱”となり得る仕組みなのです。
原材料の透明性確保
トレーサビリティによって、使用されている原材料が「どこの国で、どのように生産されたのか」を明確に把握できるようになります。
例えば「国産鶏肉」とだけ記載されているより、「鹿児島県産の平飼い鶏肉」と表記されている方が、飼い主にとって信頼感を得やすくなります。これにより、アレルギーや添加物への配慮が必要な犬に対して、より適切なドッグフード選びが可能になります。
また、近年ではオーガニックやグレインフリー、ヒューマングレードなどの表示に関心が高まっており、トレーサビリティがあることでそれらの主張の裏付けにもなります。
品質管理の信頼性アップ
トレーサビリティの整備は、単に安全面のためだけでなく、その企業がどれほど品質管理に真摯に取り組んでいるかを示す「信頼の証」となります。
製造工場の衛生管理、原材料の仕入れルート、製造・保管温度などが記録・管理されているドッグフードは製品のばらつきやトラブルが少なく、安定した品質を保つことができます。また、第三者認証(GMP、ISO、HACCPなど)を取得している場合、トレーサビリティが審査項目に含まれることも多く、国際基準に準じた管理が行われていると判断できます。
目に見えない安全への取り組みが、製品の信頼性を高め、飼い主が安心して与えられるフード選びにつながるのです。
トレーサビリティ表示がない製品は危険?
必ずしも「表示がない=危険」というわけではありません。ただし、次のような場合には注意が必要です。
- 製造元や販売者情報が曖昧
- 原材料の国名や内容が不明瞭
- 複数国で加工されているが詳細がわからない
こうした製品は、万が一のトラブル時に原因追及が難しく、迅速な対応がとれない可能性があります。トレーサビリティ体制が整っているかどうかは、「いざというときに頼れるかどうか」を判断する一つの材料となります。
安全なドッグフードを選ぶための5つのポイント
では、飼い主としてトレーサビリティのある、安全なドッグフードをどう見極めればよいのでしょうか。ドッグフードやメーカーを選ぶ際の5つのポイントをご紹介します。
原材料の表記が明確かどうか
例えば「ミートミール」ではなく「チキンミール」「ラムミール」といった表記で、由来動物が特定できるかを確認しましょう。また「国産」とだけ書かれているのではなく、どこの国の原材料か、どこで加工されたのかも重要な情報です。
メーカーや販売元の情報が明示されているか
会社名、所在地、問い合わせ先などがパッケージに記載されているかは基本中の基本です。信頼できる企業は、公式サイトなどで製品のトレーサビリティ情報を公開していることが多いです。
ロット番号や製造日が印字されているか
これらが記載されていれば、製造履歴の追跡が可能になります。とくに賞味期限しかない製品よりも、製造日とロット番号が併記されている方が安心です。
第三者機関の認証や監査があるか
GMP認証、ISO22000、HACCP、BRCなど食品の安全管理に関する認証を取得しているブランドは、トレーサビリティ体制もしっかりしている可能性が高いです。
問い合わせに対して誠実に対応してくれるか
公式サイトなどで質問フォームやカスタマーサポートが設けられており、質問に対して詳細な回答を得られるメーカーは、情報公開に前向きです。
まとめ
- トレーサビリティとは、原材料から販売までを追跡できる仕組み
- 異物混入やリコール時の迅速な対応に役立つ
- 製造日やロット番号の記載で追跡性が高まる
- 表記の透明性や企業の情報公開姿勢が安全性の指標になる
- 信頼できるフード選びには管理体制と情報開示の確認が重要
トレーサビリティとは原材料から販売までを追跡できる仕組み。異物混入やリコール時の迅速な対応に役立つ。製造日やロット番号の記載で追跡性が高まる。