犬の貧血とは?歯茎の色・息づかいでわかる危険サインと飼い主ができること

犬の貧血とは?歯茎の色・息づかいでわかる危険サインと飼い主ができること

古川さん
愛犬が散歩中にすぐ立ち止まるようになったんです。疲れている、歩きたくないという意味なのでしょうか?

犬田さん
その可能性もありますが、実は“貧血”が原因ということもあるんです。犬の貧血は見た目では気づきにくく、進行して初めて異変に気づくケースが多いんですよ

古川さん
貧血ってそんなに気付きにくいものなんですね!

犬田さん
はい。貧血は「体が酸素を運べなくなる状態」で、命に関わる病気が隠れていることもあります。犬は自分で「苦しい」と言えませんから、飼い主さんが早く気づいてあげることが命を守ることにつながります。

今回は、犬の貧血についてしっかり理解していきましょう。

貧血とは?

犬の貧血とは?歯茎の色・息づかいでわかる危険サインと飼い主ができること

体内の赤血球が不足している状態

犬の貧血とは、赤血球やヘモグロビンが不足し、体に十分な酸素が運べなくなる状態を指します。

骨髄は、体の中で血液細胞を生み出す“製造工場”のような役割を担っており、骨髄の造血幹細胞が分化して作られた赤血球が血管内へ送り出されます。赤血球の内部にあるヘモグロビンは肺で酸素を受け取り、全身の組織へ届ける重要な働きをしています。役目を終えた赤血球は主に脾臓に運ばれ、免疫細胞(マクロファージ)によって分解されます。

犬の赤血球の寿命はおよそ100日前後とされ、健康な状態では「製造される赤血球」と「分解される赤血球」のバランスが取れているため、血液中の赤血球数は安定されます。しかし、体内で異常が起こると赤血球が不足し、結果として貧血が発生します。

原因によって3種類に分けられる

貧血と一口に言ってもその原因はさまざまであり、「なぜ赤血球が減ってしまったのか」という原因から3つに分類できます。

  1. 出血性貧血:血管が損傷を受けた
  2. 溶血性貧血:赤血球が壊された
  3. 再生不良性貧血:血液の生産が阻害された

出血性貧血

出血性貧血とは血液が失われることで起こる貧血で、犬の貧血で最も多くみられます。出血が急激に起こる場合と、少量の出血が長期間続く慢性タイプがあり、早期の出血源特定が重要となります。

主な原因

  • 交通事故やケガなどの急性出血
  • 胃腸炎や腫瘍による消化管出血
  • ノミ・マダニ寄生による吸血
  • 子宮蓄膿症や前立腺疾患による内部出血
  • 外科手術後の合併症

とくに高齢犬では、消化器の腫瘍や潰瘍が慢性的な出血源となり、ゆっくりと貧血が進行することがあります。

症状

  • 歯茎・口の粘膜が白っぽい
  • 立ち上がれない、ふらつく
  • 呼吸・心拍・脈拍が速い、苦しそう
  • 黒いタール状の便(消化管出血)
  • 血尿や吐血がみられることもある

急性の大量出血では命に関わるため、早急な処置が必要です。

飼い主ができること

  • 普段から犬の歯茎の色をチェック
  • 便が黒くないか、赤くないかを確認
  • ノミ・マダニ予防を必ず行う
  • 高齢犬は年1~2回の健康診断で消化管の状態を確認
  • 少しでもぐったりしている時はすぐに受診する

出血性貧血は原因がはっきりしていることが多く、治療すれば改善する場合が多い貧血です。発見の早さが鍵になります。

②溶血性貧血

溶血性貧血とは、赤血球が正常な寿命より早く壊れてしまうことで発生する貧血です。とくに犬では「免疫介在性溶血性貧血」がよく知られ、体の免疫が赤血球を「攻撃対象」と誤って破壊してしまうことで起こります。

主な原因

  • 免疫介在性溶血性貧血
    → 原因不明の場合も多く、急激に悪化することがある
  • 感染症(バベシア原虫など)
  • 中毒(タマネギ中毒、薬物中毒など)
  • 重度の炎症や膵炎
  • 先天性の赤血球異常

とくに免疫介在性溶血性貧血は中型犬~大型犬で発症が多く、緊急治療が必要になることが多い疾患です。

症状

  • 黄疸(歯茎や白目が黄色い)
  • 尿が赤い、濃い褐色になる
  • 高熱が出ることがある
  • 急激な元気消失
  • 呼吸・心拍・脈拍が速い

赤血球が壊されるスピードが速いため、急激に悪化しやすい点が特徴です。

飼い主ができること

  • 黄疸に気づいたら即受診
  • バベシアが多い地域(温暖地)ではマダニ対策を徹底
  • タマネギ、ニラ、ネギなどの危険食材を与えない
  • 薬を飲ませている場合は、薬剤が原因の可能性を獣医師に伝える
  • 再発がある病気のため、治療後も定期的な血液検査を続ける

溶血性貧血は、早期の治療開始が予後を大きく左右する疾患です。気になる症状を見逃さないことが重要です。

③再生不良性貧血

再生不良性貧血とは、赤血球を作り出す骨髄そのものが正常に働かなくなり、赤血球の産生能力が著しく低下することで起こる貧血です。犬では頻度は低めですが、骨髄の造血機能が落ちると、赤血球だけでなく白血球や血小板も同時に減少することがあり、感染症のリスク増加や出血傾向など、体にあらゆる影響が及びます。

主な原因

  • 骨髄の線維化(骨髄線維症)
  • 骨髄腫瘍(白血病、リンパ腫の浸潤など)
  • 薬剤性(抗がん剤・一部の抗生物質など)
  • 重度の感染症
  • 原因不明の場合も多い

高齢犬で多く見られますが、薬剤の影響はどの年齢でも起こり得ます。

症状

  • 持続的な元気消失
  • 食欲不振
  • 歯茎が白い
  • 出血しやすい(鼻血、皮下出血)
  • 感染症を繰り返す

飼い主ができること

  • 長引く元気消失を「歳のせい」と思わない
  • 薬を使っている場合は、その種類をメモして受診
  • 出血や発熱がある場合は早急に診察
  • 動物病院の指示で定期的な血球計数を受ける

再生不良性貧血は自然治癒することはほとんどなく、早期診断・適切な治療が必須です。

まとめ

  • 原因により「出血性・溶血性・再生不良性」に大別される
  • 出血性貧血は外傷や腫瘍、消化管出血などが原因
  • 溶血性貧血は赤血球が破壊される病気
  • 再生不良性貧血は骨髄が赤血球を作れなくなる重い病気
  • 元気消失、歯茎の蒼白、息が荒いなどは貧血のサイン

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帝京科学大学アニマルサイエンス学科卒業。愛玩動物飼養管理士2級、ペットセラピスト、ペット看護士の資格を取得。ドッグフード勉強会ディレクターとして、わんちゃんの栄養や病気、生態、ドッグフードなどの情報を提供しています。わんちゃんの魅力を発信し、飼い主さんの悩みや不安を解決することで、わんちゃんと飼い主さんの幸せのお手伝いになれれば嬉しいです。