ドッグフードの原材料:パセリ(parsley)
パセリとは地中海原産のセリ科の植物で、古代ギリシャやローマ時代から薬草や食用として利用されてきた歴史あるハーブです。その特徴的な鮮やかな緑色と独特の香りから、料理の彩りや香り付けとして世界中で親しまれています。
パセリはその栄養価の高さから「スーパーフード」とされており、ビタミンやミネラル、食物繊維、そして抗酸化成分を豊富に含んでいます。とくにビタミンA、C、Kの含有量が高く、免疫力の向上や細胞の酸化防止、骨の健康維持など多岐にわたる効果が期待されています。また、パセリにはクロロフィル(葉緑素)も含まれており、体内の毒素排出や口臭予防にも役立ちます。
こうしたパセリの栄養成分と健康効果の高さから、人間だけでなく犬にとっても注目される食材となり、ドッグフードの原材料にも使用されています。
パセリが原材料のドッグフード例
原材料に使用される目的
パセリがドッグフードの原材料に使用される目的としては、栄養価の高さだけでなく、口臭ケアや抗酸化作用といった健康サポートがあるためです。パセリは人工的な添加物の代わりに使用されることもあり、飼い主さんにとっても安心感のある成分といえるでしょう。
実際に、市販の高品質ドッグフードには原材料としてパセリが含まれているものが多く存在します。ハーブ系成分を取り入れた製品は、健康維持を意識した飼い主に支持される傾向にあります。
乾燥や根も使用される
ドッグフードの原材料で使用されるパセリは、パセリだけでなく乾燥パセリやパセリの根なども使用されます。
乾燥パセリはその名の通り生のパセリを乾燥させて作られたもので、パセリフレークともよばれます。パセリフレークは少量で香りや彩りを加えることができ、ドッグフードの原材料としても利用されやすい形状です。
パセリの根とは、パセリの一種で食用に栽培される根部分を指します。見た目は白く細長く、形状はニンジンに似ています。味はやや甘みがあり、セリ科特有の香りが特徴です。
パセリが原材料のドッグフード例
パセリは多くのドッグフードやおやつの原材料として使用されています。原材料欄にはパセリ、乾燥パセリ、パセリフレーク、パセリの根などと表記されます。
- ミシュワン プレミアムドッグフード
- ウマミネイチャー
- ネルソンズドッグフード
- オブレモ(Obremo) 鶏肉フード
- ウェルネスコア
- C&R ビーフ&ミレット
- EZO(えーぞー)総合栄養食 成犬用
- ソリッドゴールド ドッグフード ホリスティックブレンド
- フェアリーS.ガーデン ビスケット など
パセリの栄養と犬における健康効果
下表は、生のパセリと乾燥パセリ100gあたりの栄養素です。乾燥パセリは水分が抜けて栄養素が凝縮されていますが、乾燥過程で食物繊維などの一部の栄養素が減少することがあります。
生パセリ | 乾燥パセリ | |||
---|---|---|---|---|
エネルギー | 34 | 341 | kcal | |
水分 | 84.7 | 5.0 | g | |
タンパク質 | 4.0 | 28.7 | g | |
脂質 | 0.7 | 2.2 | g | |
ミネラル | ナトリウム | 9 | 880 | mg |
カリウム | 1000 | 3600 | mg | |
カルシウム | 290 | 1300 | mg | |
マグネシウム | 42 | 380 | mg | |
リン | 61 | 460 | mg | |
鉄 | 7.5 | 18.0 | mg | |
ビタミン | β-カロテン | 7400 | 28000 | μg |
ビタミンK | 850 | 1300 | μg | |
葉酸 | 220 | 1400 | μg | |
パントテン酸 | 0.48 | 1.68 | mg | |
ビオチン | 4.1 | 24.0 | μg | |
ビタミンC | 120 | 820 | mg | |
食物繊維 | 水溶性食物繊維 | 0.6 | - | g |
不溶性食物繊維 | 6.2 | - | g |
※出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
多くの研究がなされている
パセリは抗酸化作用、抗炎症作用、利尿作用、腎保護作用、酵素調節作用、抗高血圧作用などあらゆる作用があるため、パセリの栄養効果に関する文献が多く報告されています。
上記の研究では、ラットにパセリの抽出物を与えたところ、シュウ酸カルシウムの核形成と沈殿、尿の過飽和、尿タンパク質排泄を予防したことが分かりました。パセリに含まれるクロロフィルとマグネシウムの含有量が多いことが、それぞれシュウ酸カルシウムの脱水と高シュウ酸尿に対する阻害効果となったと考えられています。
クロロフィルによる口臭予防
パセリが口臭予防に効果的とされる理由は、植物に含まれる天然の色素成分クロロフィル(葉緑素)の働きにあります。
口臭の原因は、口内の細菌が食べ物の残りや唾液を分解する際に発生する揮発性硫黄化合物(VSC)ですが、クロロフィルはこれらの臭い成分を中和し、口内環境を整えます。さらに、パセリには抗菌作用や消化促進作用もあり、胃腸の働きをサポートすることで体内から発生する口臭にも効果が期待できます。
口臭が気になる犬や、口臭を予防したい犬に与えることで自然な口臭ケアが期待できます。
強い抗酸化作用
パセリにはフラボノイドやビタミンC、β-カロテンが豊富に含まれており、体内の活性酸素を除去することで細胞の酸化を防ぐことで老化防止や免疫力の向上に役立ちます。
食物繊維による消化サポート
パセリには豊富な食物繊維が含まれており、主に不溶性食物繊維が多く含まれています。
不溶性食物繊維は腸内で水分を吸収して膨らみ、腸を刺激して蠕動(ぜんどう)運動を促進するため、便秘の予防や解消に効果的です。また、腸内の老廃物を排出するデトックス効果も期待できます。
便秘気味の犬や、消化が不安定な犬に適しています。
パセリを与える注意点
過剰摂取は避ける
パセリはさまざまな栄養効果があり、香りが強いのでドッグフードにトッピングすることで食いつき向上が期待できますが、過剰摂取には注意が必要です。とくに乾燥パセリはトッピングする際に多くを入れてしまいがちなので注意しましょう。
とくにビタミンCにおいては、犬は体内で合成することができます。きちんと給与量のドッグフードを食べていればビタミンCが不足することはないため、給与量以上を与えないようにしましょう。
シュウ酸カルシウム結石の恐れ
パセリにはシュウ酸が含まれています。シュウ酸は過剰に摂取すると体内でカルシウムと結合し、シュウ酸カルシウム結石の原因になることがあります。シュウ酸はカルシウムの吸収を妨げるため、過剰摂取が続くと骨の健康にも悪影響を及ぼすことがあります。
結石ができやすい犬や、腎臓機能や尿路に問題がある犬は結石のリスクが高まるため注意が必要です。
まとめ
- ドッグフードにはパセリそのものだけでなく根も使用される
- パセリは抗酸化作用、抗炎症作用、抗高血圧作用などあらゆる効果がある
- パセリのクロロフィルは口臭予防になる
- 過剰摂取はシュウ酸カルシウムの恐れがある