だからこそ、飼い主がリコールの仕組みや過去の事件を知り、どんな対策や認証があるのかを理解しておくことが大切です。そうすればドッグフード選びの安心感もぐっと増しますよ。
ドッグフードのリコールとは
ドッグフードのリコールとは、製品に健康被害や安全性の問題が発覚した際に、メーカーや販売元が該当する製品を市場から回収することを指します。リコールは食品や洋服、車など世の中に販売されている製品はどれも起こる可能性があるものです。
リコールは決して珍しいものではなく、さまざまな国で発生しています。その規模は小さな自主回収から数百万袋単位に及ぶ大規模リコールまで幅広く、ドッグフード業界においても避けて通れない課題といえるでしょう。
リコールが起きる原因とは
ドッグフードのリコールはさまざまな原因によって発生します。
1. 原材料の汚染
リコールの最も多い原因のひとつが、原材料に細菌やカビ毒、化学物質などが混入するケースです。サルモネラ菌やリステリア菌が検出されると、犬だけでなく人間や同居している他のペットなどにも感染リスクが及ぶため、即座にリコールにつながります。
2. 栄養成分の過不足
ドッグフードにはタンパク質や脂質のほか、ビタミンやミネラルなどを規定量含ませる必要があります。しかし製造過程のミスや原料の偏りにより、ビタミンDやカルシウムなどが過剰あるいは不足してしまうケースがあります。
とくにビタミンDの過剰混入は腎不全を引き起こすため、海外では大規模なリコール事例が報告されています。
3. 異物混入
製造ラインの不具合や衛生管理の不徹底により、金属片やプラスチック片が混入してしまうこともあります。ペットフードは細かく粉砕した原材料を加工して作られるため、わずかな異物でも犬の消化器官を傷つける恐れがあります。
4. 法規制違反や表示ミス
禁止されている成分の使用や、ラベルの誤表示もリコールの対象になります。例えば成分の記載に誤りがあった場合、アレルギーを持つ犬に与えてしまうリスクがあるため、回収命令が出されることがあります。
ドッグフードのリコール事件の事例
中国・メラミン混入事件(2007年)
最も有名な事例が、2007年に中国で発覚したメラミン混入事件です。
中国産原材料が配合されたペットフードにメラミンが混入しており、犬猫の腎不全を引き起こして数千頭が死亡しました。
この事件は世界中に衝撃を与え、ペットフード業界の規制強化を進めるきっかけとなりました。
アメリカ・サルモネラ汚染によるリコール(2012年)
アメリカの大手メーカーで製造されたドッグフードからサルモネラ菌が検出され、大規模リコールにつながりました。サルモネラ菌は犬だけでなく人にも感染するため、飼い主家庭にまで被害が及ぶ可能性が問題視されました。
ビタミンD過剰混入事件(2018年)
アメリカを中心に複数ブランドでビタミンDの過剰混入が発覚し、犬に腎不全や体調不良が多発しました。多くのブランドが数万ロット単位でリコールを実施し、製造管理の不備が大きな課題となりました。
イギリス・猫の大量死事件(2021年)
ペットフード業界全体に大きな波紋を呼んだのが2021年のイギリスでの事件です。
特定メーカーのキャットフードを食べた猫がネコ汎血球減少症を発症し、330匹以上の猫が死亡しました。
事件を機に進んだ認証や管理体制の強化
さまざまなリコール事件によりペット業界や消費者からは安全基準の見直しを求める声がさらに強まり、ドッグフードにさまざまな認証や管理体制が設けられるようになりました。
GMP認証
GMPとは製造管理と品質管理の基準であり、衛生的で一貫した製品を提供するための仕組みです。もともと医薬品分野で導入されていましたが、ペットフードにも広く適用されるようになり、リコールの防止につながっています。
ISO認証
ISO 22000をはじめとする食品安全マネジメントシステムは、人間の食品同様にペットフードにも活用されています。国際基準に準拠した管理体制を持つことで、品質の安定と信頼性を確保できます。
トレーサビリティ
原材料の産地や加工ルートを明確にし、問題が発生した際にすぐに特定できる仕組みです。事件を機に多くのメーカーが導入し、飼い主が安心してフードを選べる環境が整いました。
日本のペットフード安全法
日本では2009年に「ペットフード安全法」が施行され、使用禁止成分の指定、成分規格の設定、ラベル表示義務などが定められました。これにより国内のドッグフード安全基準は大きく向上し、大規模なリコールは海外と比べて少ないのが特徴です。
飼い主ができるリスク回避の工夫
ドッグフードのリコール事件は完全には避けられませんが、飼い主の工夫次第でリスクを軽減することは可能です。下記のポイントに着目してドッグフードを選びましょう。
- 認証取得やトレーサビリティの明示を確認
- リコール情報をチェックする
- 購入時にパッケージを保管する
- ドッグフードのローテーション
農林水産省やメーカー公式サイトではリコール情報が公開されています。普段犬に与えているドッグフードのリコール情報はチェックしておくようにしましょう。
- Recall Plus リコール情報サイト「キャットフード」関連
- Recall Plus リコール情報サイト「ペット用品」
- クロネコヤマトリコール.jp「ペット用品」
- 消費者庁リコール情報サイト「ペットフード」関連
まとめ
- ドッグフードのリコールは健康被害の恐れがある際に行われる
- 原材料汚染、栄養成分ミス、異物混入、表示違反が主な原因
- 中国のメラミン事件や米国・欧州のリコール事例が有名
- GMP認証、ISO認証、トレーサビリティ、法律で管理体制が強化
- 飼い主はメーカー選びや情報収集、観察でリスク回避が可能