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犬に必要な栄養とドッグフードの成分
ドッグフードには犬が健康に生きるために必要な栄養素がバランスよく配合されています。
ですが、使用する原材料や配合量、添加される栄養素や物質などによって、1つのドッグフードの含まれる成分量はバラバラです。
また、成分によって働きも必要量も異なるため、すべてが均等に配合されていればいいというわけでもありません。
ということで、ここではドッグフードに含まれる犬に必要な栄養成分と基準、パッケージに記載の成分分析値の読み方について解説したいと思います。
ドッグフードの代表的な5つの成分
1. タンパク質
タンパク質は筋肉や血管、臓器、皮膚、被毛など体をつくるために働く成分です。他にも補酵素として栄養を運ぶ、成長を促すなどの働きもあります。
タンパク質は体のほとんどの場所に存在しているので、特に肉や魚にはタンパク質が豊富に含まれています。
ドッグフードでは22%以上の基準がありますが、40%近くタンパク質を含むプレミアムフードもあります。
2. 脂質(脂肪)
脂質(脂肪)は、最も効率よく利用できるエネルギー源であり、細胞膜などを構成する成分です。肉や魚、オイル、脂身などに多く含まれる栄養で、エネルギーとして利用しやすい成分です。
高脂肪はあまった脂質がすばやく体に蓄えられるので肥満の原因になりますが、運動量の多い犬には重要なエネルギー源の1つとなります。また脂質は癌細胞に利用されにくい栄養素ということで、癌になった犬の重要なエネルギー源としても注目の成分です。
3. 食物繊維
食物繊維は野菜や穀物、果物などに多く含まれている栄養で、整腸作用や毛玉ケア、体重管理などの働きがある成分です。3%~10%程度が普通です。
胃の消化酵素で分解されずに腸まで届くので、大量に摂りすぎると消化不良で体調を崩したりかえって便秘が悪化してしまったりすることがあるので、バランス良く摂取することが大切です。
免疫力の維持や腸内環境を整えるなどを目的としたドッグフードでは多く配合される傾向があります。
4. 灰分(ミネラル)
灰分はミネラルのことで、種類によって体の器官の一部となったり、体に必要不可欠な活動や機能を維持するために相互で作用し合って働きます。
ミネラルはそれぞれに作用し合うため摂取量もバランスが重要で、あるミネラルが極端に多くなったり少なくなったりすると正常に働くなるので、ミネラル同士の比率や含有量には注意する必要があります。
5. 水分
犬に限りませんが、どの栄養よりも大切なのが水分です。陰は薄いですが、栄養学でみると水分は非常に重要な栄養素です。
動物はタンパク質や脂質を25%程度なら失っても生きていることができますが、水分の場合は体内から15%程度失うと生きていられません。それくらい犬や動物の体には水分が必要であり、欠かすことができないものです。
ちなみにドライタイプのドライフードはカラッカラに見えますが、7~10%程度の水分が含まれています。ただこれだけでは必要な水分量は摂れないので水と一緒に与える必要があります。ウェットフードの場合、75~90%が水分なので水分補給に効果的です。
メーカーによっては表示される成分
ビタミン
ビタミンは生物にとって微量に必要な栄養素のうち、体内で合成できない有機化合物の総称です。ビタミンにはそれぞれ様々な働きと種類があり、体の機能を正常に保ったり、体に必要な栄養素の代謝を行うなどの作用があります。
体外に排出されやすい水溶性ビタミンは沢山とっても大きな問題はありませんが、脂溶性ビタミンは過剰摂取すると中毒症状を引き起こすので配合量やバランスが大切です。
炭水化物
ドッグフードによっては炭水化物も成分表示に記載している親切なメーカーもあります。炭水化物とは糖質と食物繊維の総称なので、糖質量が気になる方は炭水化物量もチェックしておくといいでしょう。
炭水化物は犬にとってエネルギー源として利用できる栄養素なので、ドッグフードではタンパク質と同じくらいかそれ以上に含まれていることが多いです。
ただ炭水化物量は成分表示の項目に入っておらず表記の必要がないため、炭水化物量を明記しているメーカーは少ないです。
代謝エネルギー(カロリー)
代謝エネルギー(カロリー)は成分ではないので、成分表示ガイドラインには含まれていませんが、ほとんどのメーカーが成分表示と一緒に記載しています。
100gあたりのカロリーをそれぞれ他のドッグフードと比較できるのでカロリー計算や管理にも役立ちます。
ドッグフードの成分表示の読み方
パッケージ裏の成分表の見方
ドッグフードの成分表示は栄養バランスを確認できる表で、構成成分を分析した割合(%)が示されています。
成分表に記載されているのは、上記で紹介したタンパク質、脂質、食物繊維、灰分(ミネラル)、水分ですが、比率やもっと細かく成分値を記載する商品もあります。
「粗」は分析精度の粗さ(あらさ)
ドッグフードの成分名の「粗」は成分の分析精度を表しています。
成分を分析して値が出たとしても、その成分を一定に保つことは難しいです。原材料に含まれる栄養成分も季節や時期で大きく変わるため、分析精度を考慮して成分の頭に「粗」と記載しています。
だからといって食品と分析精度に差があるわけではなく、食品の場合は粗が省略されることが多いだけで、ペットフードと食品の分析精度はほぼ差はありません。
ドッグフードの成分基準を紹介
AAFCO発表のドッグフード成分基準
ドッグフード総合栄養食の成分基準はAAFCO(米国飼料検査官協会)というアメリカの団体が定めており、多くのペットフードはこの成分基準に基づいてレシピや成分バランスを調整しています。
幼犬用最低基準 | 成犬用最低基準 | ||
---|---|---|---|
粗タンパク質 (Crude Protein) | 22.5%以上 (AAFCO) | 18.0%以上 (AAFCO) |
|
粗脂肪 (Crude Fat) | 8.5%以上 (AAFCO) | 5.5%以上 (AAFCO) |
|
繊維 (Moisture) | - | - | |
ミネラル (Minerals) | カルシウム | 1.2 ~ 1.8% | 0.5 ~ 1.8% |
リン | 1.0 ~ 1.6% | 0.5 ~ 1.6% | |
カリウム | 0.6%以上 | 0.6%以上 | |
ナトリウム | 0.3%以上 | 0.08%以上 | |
塩化物 | 0.45%以上 | 0.12%以上 | |
マグネシウム | 0.06%以上 | 0.06%以上 | |
鉄 | 88 mg/kg以上 | 40 mg/kg以上 | |
銅 | 12.4 mg/kg以上 | 7.3 mg/kg以上 | |
マンガン | 7.2 mg/kg以上 | 5.0 mg/kg以上 | |
亜鉛 | 100 mg/kg以上 | 80 mg/kg以上 | |
ヨウ素 | 1.0 ~ 11 mg/kg | 1.0 ~ 11mg/kg | |
セレン | 0.35 ~ 2 mg/kg | 0.35 ~ 2mg/kg | |
ビタミン (Vitamin) | ビタミン A | 5000 ~250000IU/kg | 5000 ~250000IU/kg |
ビタミン D | 500 ~ 3000IU/kg | 500 ~ 3000IU/kg | |
ビタミン E | 50IU/kg以上 | 50IU/kg以上 | |
チアミン (ビタミンB1) | 2.25mg/kg以上 | 2.25mg/kg以上 | |
リボフラビン (ビタミンB2) | 5.2mg/kg 以上 | 5.2mg/kg以上 | |
パントテン酸 (ビタミンB5) | 12mg/kg以上 | 12mg/kg以上 | |
ナイアシン (ビタミンB3) | 13.6mg/kg以上 | 13.6mg/kg以上 | |
ビタミンB6 | 1.5mg/kg 以上 | 1.5mg/kg以上 | |
葉酸 | 0.216mg/kg以上 | 0.216mg/kg以上 | |
ビタミンB12 | 0.028mg/kg 以上 | 0.028mg/kg以上 | |
コリン | 1360mg/kg以上 | 1360mg/kg以上 | |
水分 (Mosture) | ドライ…10%程度以下(ペットフード協会) | ||
セミモイスト…25~35%程度(ペットフード協会) | |||
ソフトドライ…25~35%(ペットフード協会) | |||
ウエット…75%程度(ペットフード協会) |
ドッグフードの成分基準の落とし穴
このAAFCOの成分基準にのっとっていれば、どのドッグフードでも問題がないわけではありません。
以前、アメリカの学生が汚れた革製品や食べ物ではない原材料でAAFCOの成分基準をクリアしたというニュースがありました。成分をクリアしていても原材料や品質が保証されるわけではないことがよく分かるエピソードです。
また、成分もクリアすれば完璧というわけではなく、項目によっては最小値のみで上限値が定められていない成分もありますし、基準自体ない成分あります。
また、AAFCOは原材料ではなく成分値の基準を定めているだけなので、食べ物を使用せずにこの基準を満たすことも可能です。このため成分値の基準だけでドッグフードを判断できるわけではありません。