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ドッグフードの炭水化物(可溶無窒素物)
炭水化物はエネルギーとなる栄養素
炭水化物とは三大栄養素の一つで、脳や体の活動には必要不可欠になるエネルギー源となる栄養素です。栄養の面では「糖質」の意味で用いられることが多いですが、炭水化物は正確には糖質と食物繊維の総称です。
ペットフードの表記では可溶無窒素物とかかれていることもあります。
炭水化物は植物の光合成によって作られるため、穀類や芋類、豆類、野菜など植物性の食材に多く含まれています。
犬に炭水化物は不要?
犬にとって炭水化物は必要です。「犬はもともとオオカミで肉食だった」という理屈から、ここ最近はグレインフリーや低炭水化物を売りにしたドッグフードも増えてきています。
犬にとって肉に含まれる動物性タンパク質ももちろん大切な栄養の一つですが、炭水化物も犬にとっては同じく重要な栄養素の一つです。
犬における炭水化物の働き
エネルギー源となる
炭水化物は犬の体内で様々な活動を行うためのエネルギーとして利用されます。
筋肉や体を動かすためだけでなく、脳や神経、臓器など各器官を正常に機能させるためにはエネルギーがなければなりません。炭水化物は体を正常に機能させるためのガソリンのような存在です。
食物繊維は腸内環境を整える
炭水化物は糖質ばかりがフォーカスされがちですが、炭水化物は食物繊維と糖質の総称です。
食物繊維は消化酵素によって胃などの消化酵素では消化されない成分で、腸内を掃除したり腸内に住む善玉菌のエサとなり悪玉菌から腸内を守るために働きます。
食物繊維については下の記事で詳しくお話しています。
炭水化物の種類
栄養学において炭水化物は糖質として扱われますが、糖質は構成する炭素の数によって大きく3種類に分けることができます。
- 単糖
- 少糖(またはオリゴ糖)
- 多糖
単糖とは
単糖類とは、単位が1のこれ以上分解されない糖類です。ブドウ糖と呼ばれるグルコースやガラクトース、果物に多く含まれるフルクトース(果糖)などが有名どころです。
単糖はこれ以上分解できない状態の糖質なので、体内に入った時に分解の手間なくすぐにエネルギー源として取り込まれる特徴があります。
多糖類や二糖類も、結局は単糖によって構成されているので、最終的に体内の消化酵素によって分解・吸収される時には単糖の形になります。
代表的な単糖類 | |
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・リボース ・アラビノース ・キシロース | ペントース (五単糖) |
・リブロース | |
・グルコース(ブドウ糖) ・マンノース ・ガラクトース | ヘキトース (六単糖) |
・フルクトース(果糖) |
少糖とは
少糖とは、単糖が2~10程度結合している糖類で「オリゴ糖」とも呼ばれます。2~10程度の結合とされていますが、何個以上が多糖類というような境が明確ではないので、2~10「程度」という表現になっています。
砂糖の主成分であるショ糖(スクロース)やデンプンを構成するマルトース、セルロースを構成するセロビオース、動物の乳に含まれるラクトース(乳糖)、そしてフラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マンナンオリゴ糖などが挙げられます。
代表的な少糖 (オリゴ糖) |
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・スクロース(ショ糖) ・マルトース ・ラクトース(乳糖) ・トレハロース ・セオビオース | 二糖類 |
・ラフィノース | 三糖類 |
・スタキオース | 四糖類 |
・フラクトオリゴ糖(FOS) ・ガラクトオリゴ糖(GOS) ・マンナンオリゴ糖(MOS) | そのほかのオリゴ糖 |
多糖とは
多糖とは10以上の沢山の単糖が結合している糖類です。デンプンやグリコーゲン、セルロース、イヌリン、ペクチンなど聞き覚えのある成分も多いのではないでしょうか。
炭水化物に通常最も多く含まれるのがデンプンになりますが、食材によっても変わってきます。
代表的な多糖 | 構成する単糖 | 多糖の種類 |
---|---|---|
デンプン | グルコース | ホモ多糖 (1種類の単糖から構成) |
グリコーゲン | ||
セルロース | ||
イヌリン | フルクトース | |
マンナン | マンノース | |
ペクチン | ガラクツロン酸 | |
グルコマンナン | ・グルコース ・マンノース | ヘテロ多糖 (複数の単糖から構成) |
アガロース | ・ガラクトース ・アンヒドロガラクトース |
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キチン | ・N-アセチルグルコサミン ・グルコサミン |
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カラーギナン | ・ガラクトース ・アンヒドロガラクトース |
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へバリン | ・グルクロン酸 ・イズロン酸 ・グルコサミン |
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ヒアルロン酸 | ・N-アセチルグルコサミン ・グルクロン酸 |
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アラビアガム | ・アラビノース ・ガラクトース |
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キサンタンガム | ・グルコース ・マンノース ・ガラクツロン酸 |
犬の炭水化物の消化率
犬は炭水化物の消化が得意
犬は穀物や炭水化物の消化が苦手だという話もよく聞きますが、犬にとって炭水化物は効率よく消化吸収できる重要なエネルギー源です。
犬は1万年以上前から人と暮らし食生活も変わったことで、膵酵素と腸粘膜上の2糖類分解酵素の作用でデンプン(可消化炭水化物)を効率的に消化できるようになりました。
炭水化物は犬の栄養状態を向上させる
また、炭水化物はすべての成長段階の犬の栄養状態を向上させる働きがあります。
炭水化物がエネルギー源としてのみ必要なのであれば、エネルギーを他の脂質などの栄養でまかなうことも可能ですが(ただ脂肪を利用するのにも糖は必要)、糖質を適切に配合したフードは食餌性アミノ酸の温存にも関係し、犬の栄養状態の向上に役立つことがわかっています。
ドッグフードに必要な炭水化物の量
ドッグフードの炭水化物は20~50%
ドッグフードにも炭水化物は必ず含まれます。成分表示では炭水化物が記載されていないことが多いですが、それは炭水化物が含まれていないというわけではありません。
簡単に計算してみても、ドッグフードの20~50%は炭水化物が占めています。多くのドッグフードは、タンパク質と同じ位かそれ以上の炭水化物が含まれているので、ドッグフードにおいてメインの栄養素の一つであることに間違いはありません。
量の基準は明確にはない
犬にとってドッグフードの炭水化物量はどのくらいが適切なのか気になるところではあると思いますが、ペットフードの成分基準を定めているAAFCO(米国飼料検査官協会)にも、糖質やデンプンなどの具体的な成分基準はありません。
実際のところ、炭水化物は種類によって糖としてエネルギーに利用されやすい種類と、消化されにくく食物繊維としての働きが大きい種類があるため、一概に炭水化物がどのくらい必要という明確な基準をしめすのは難しいかもしれません。
妊娠期・授乳期の犬には必要
炭水化物(糖質)は、特に妊娠期・授乳期のメス犬にとっては重要です。胎児の成長や授乳の際に子犬の成長に必要な乳糖を生み出すために炭水化物の「グルコース」が必要になります。
妊娠期・授乳期の犬のドッグフードには、少なくとも20%以上の炭水化物が含まれる必要があるため、繁殖においても炭水化物は必要ということがわかります。
炭水化物が多いドッグフードの注意点
中性脂肪の増加によって肥満の原因になる
炭水化物が多いドッグフードは肥満になりやすいという点は注意が必要です。炭水化物のと室は中性脂肪を増加する原因になり、きちんと消化されないとどんどん体に脂肪として蓄積されてしまいます。
先天的な糖尿病は関係なし
炭水化物は肥満の原因になるということで糖尿病を心配される方もいるかもしれません。ですが犬の糖尿病はほとんどが糖質量が関係ない先天的なⅠ型の糖尿病なので、人間や猫ほど糖質量が糖尿病と関係しているわけではありません。
ドッグフードの炭水化物についてお話してきました。簡単に復習しましょう。