ドッグフードのビタミン。犬に必要なビタミン量とそれぞれの働き

ドッグフード ビタミン
佐藤さん
五大栄養素の一つで種類が沢山ある印象のビタミン。AAFCOが定めたドッグフードの成分基準でもビタミンの最低基準が示されていますね。
犬田さん
そうですね。ビタミンというのは、よく聞かれる栄養素ですが、どのような栄養素なのか、飼い主さんはきちんと理解できているでしょうか。

ここではビタミンの種類や犬におけるビタミンの働き、犬に必要な推奨量などをご紹介したいと思います。

ビタミン(Vitamin)という栄養素

ビタミンとは

ビタミン(Vitamin)は五大栄養素の一つで、炭水化物・タンパク質・脂質を除いた有機化合物の中で、生物の体内に微量に必要な栄養素のうち、その生物が体内で合成できない栄養素の総称です(ちなみに五大栄養素のミネラルは無機物)。ビタミンは種類も非常に多くあります。

ビタミンは生物によって違う

犬にとってのビタミンの多くは人と共通しています。犬は雑食性で人と長く生活してきた歴史から、食生活も人間寄りになっています。しかし合成できる栄養素は生物によって違うので、人間におけるビタミンが犬にとっても必須であるとは限りません。

たとえば、アスコルビン酸。人間はアスコルビン酸をを体内で生成できないので必須栄養素として「ビタミンC」と呼んでいますが、犬や猫を含めた他の動物はアスコルビン酸を体内で生成できるため、犬や猫にとってアスコルビン酸はビタミンではありません。

ビタミンの種類

脂溶性ビタミンの特徴

脂溶性ビタミンは、脂に溶けやすいビタミンのことで、体に蓄積されやすく排泄されにくい性質を持ちます

脂溶性ビタミンは体に必要なビタミンではありますが、過剰に摂取するとバランスを崩し様々な症状を引き起こすため、過剰摂取には注意が必要なビタミンです。

脂溶性ビタミン
  • ビタミンA
  • ビタミンD
  • ビタミンE
  • ビタミンK

水溶性ビタミンの特徴

水溶性ビタミンは、水に溶けやすいビタミンのことで、体内には蓄積されにくくすぐに排泄されやすい性質があります。

水溶性ビタミンは主に体を正常に保つための酵素の手伝いをする「補酵素」として働きます。水溶性ビタミンは脂溶性ビタミンに比べてたくさん摂取してしまっても中毒になることがないので、沢山摂取してもそこまで心配はいりません。

水溶性ビタミン
  • ビタミンB1
  • ビタミンB2
  • ナイアシン
  • ビタミンB6
  • パントテン酸
  • 葉酸
  • ビオチン
  • ビタミンB12
  • コリン
  • ビタミンC

ビタミンの働き

ビタミンA

ビタミンAは脂溶性ビタミンの一つで、視覚や粘膜の機能を維持する働きがあります。ビタミンAが不足すると正常な視覚を保てなくなってしまいます。

レチノールというビタミンAは分解などせずにそのまま利用することができますが、犬は緑黄色野菜に含まれるβカロテンからもプロビタミンAを合成することができるので、植物からもビタミンAを得ることができます。

ビタミンD

ビタミンDも脂溶性ビタミンの一つで、骨の健康維持に関わるビタミンです。骨はカルシウムとリンなどで構成されていますが、ビタミンDはカルシウムやリンの吸収のために必要な働きを担っています。

不足すると骨を軟化したり骨粗鬆症になったり、運動失調など骨に関する症状が見られるようになります。

ビタミンE

ビタミンEは脂溶性ビタミンの中でも比較的、多く摂取しても中毒症状が出にくいビタミンです。働きとしては、細胞膜の構造を維持したり、生殖腺や筋肉、神経など運動機能の維持にも関わっています。

ビタミンEには抗酸化作用もあるため、活性酸素の抑制にも効果を発揮します。このため栄養としてではなく酸化防止剤を目的として加えられることもあります。

ビタミンK

ビタミンKはあまり聞き馴染みがないかもしれませんが、こちらも脂溶性ビタミンの一つです。

血液を凝固させたり骨の代謝機能を維持したり細胞を増殖させたりと幅広く働くビタミンです。ビタミンKが不足し血液凝固不全になると、ケガなどで出血した際に血が固まらないので小さな傷でも出血が止まらないといった障害が起こります。

ビタミンB郡

ビタミンBは水溶性ビタミンです。ビタミンBについては非常に種類が多く、ビタミンB1・ビタミンB2・ナイアシン(ビタミンB3)・ビタミンB6・パントテン酸・葉酸・ビオチン・ビタミンB12・コリンなど合わせてビタミンB郡と呼びます。

種類によって働きは細かくわかれていますが、基本的には摂取した栄養の代謝のために補酵素として働きます。

ビタミンC

ビタミンCは水溶性ビタミンの一つです。ただしビタミンC(アルコルビン酸)は犬や猫にとって合成できる栄養素であり、食事から摂取しなければならない必須栄養素ではないので、ビタミンと呼ばないことが多いです。

ただビタミンCには抗酸化作用やコラーゲンの育成などの働きやメリットもあるので、フードに加えられることもあります。

働き欠乏症供給源
ビタミンA
(レチノール)
・視覚、粘膜機能維持
・成長、細胞分化、機能維持
・骨代謝維持
・夜盲症
・眼球乾燥症
・網膜の変性
・粗毛
・皮膚障害
・脳脊髄圧上昇
・腎炎
・骨強度低下
・食欲不振
・体重減少
・虚弱
・免疫機能低下
・乳製品
・卵
・肝臓(レバー)
・肝油
ビタミンD・カルシウム・リンの吸収促進
・骨からのミネラル溶出
・骨・歯の成長促進
・副甲状腺機能維持
・クル病
・骨軟化症
・低カルシウム血症
・副甲状腺機能亢進症
・下半身麻痺
・運動失調
・乾燥草
・肝油
・卵黄
ビタミンE・細胞膜構造維持
・生殖腺、筋肉、神経系機能維持
・肝臓壊死
・筋萎縮
・繁殖障害
・耐候性骨格筋疾患
・静止形成障害
・脂褐素症
・緑黄色野菜
・乾燥草
・米糠
・植物油
・穀類
ビタミンK・血液凝固因子の機能維持
・骨代謝機能維持
・細胞増殖
・血液凝固不全・緑黄色野菜
・魚粉
・卵黄
ビタミンB1
(チアミン)
・糖質代謝
・アセリルコリン合成
・脚気
・浮腫
・神経炎
・心臓肥大
・四肢の失調
・米糠
・小麦胚芽
・全粒穀類
・大豆
・酵母
・緑黄色野菜
・肝臓
ビタミンB2・エネルギー代謝
・皮膚、角膜維持
・髄鞘維持
・体重減少
・脂漏性皮膚炎
・肝斑
・白内障
・繁殖障害
・食欲不振
・乳製品
・製造粕類
・豆類
・カツオ
・マグロ
・肝臓
ナイアシン
(ビタミンB3)
・エネルギー代謝
・脂肪合成
・皮膚炎
・下痢
・中枢神経異常
・黒舌病
・酵母
・製造粕類
・豆類
・カツオ
・マグロ
・肝臓
ビタミンB6・アミノ酸代謝
・神経伝達物質合成
・神経炎
・貧血
・筋肉弱化
・肉
・全粒穀類
・緑黄色野菜
・酵母
・油粕
パントテン酸・糖質、脂質、アミノ酸代謝・成長抑制
・脂肪肝
・低コレステロール血症
・抗体反応の低下
・成長低下
・昏睡
・肉製品
・肝臓
・心臓
・米
・フスマ
・アルファルファ
・大豆
・酵母
・魚粉
葉酸・生体の恒常性の維持
・核酸、アミノ酸代謝
・造血
・悪性貧血
・舌炎
・白血球減少
・肝臓
・卵黄
・緑黄色野菜
ビオチン・脂質、糖質、アミノ酸代謝・皮膚炎
・成長阻害
・奇形
・卵黄
・アルファルファ
・肝臓
・酵母
・大豆
ビタミンB12・メチル基新生、転移
・核酸、アミノ酸、脂質代謝
・葉酸活性化
・造血
・悪性貧血
・神経障害
・成長抑制
・酵母
・肉製品
・内臓
・魚介類
コリン・生体膜成分
・脂質輸送
・メチル基供与体
・成長抑制
・脂肪肝
・出血性腎不全
・胸腺萎縮症
・卵黄
・ミルク
・魚
・胚芽
・豆類
ビタミンC・コラーゲンの生成
・抗酸化作用
・抵抗力を高める
猫や犬は体で合成できるので必須ではない・ブルーベリー
・クランベリー
・肝臓

ビタミンの成分名

始めに軽く触れましたが、ビタミンは物質名ではなく同じ機能を持つ成分の総称なので、たとえばビタミンAは「レチノール」、ビタミンEは「トコフェロール」のように他に物質名があります。

性質ビタミンの種類成分名
脂溶性ビタミンA・レチノール
・レチニルエステル
・βカロテン
ビタミンD・コレカルシフェロール
・エルゴカルシフェロール
ビタミンE・トコフェロール
ビタミンK・プロトロンビン
・フェロキノン
・メナキノン
水溶性ビタミンB1・チアミン
・アノイリン
ビタミンB2・リボフラビン
・ラクトフラビン
ナイアシン-
ビタミンB6・ピリドキシン
・ピリドキサール
・ピリドキサミン
パントテン酸-
葉酸・フォラシン
ビオチン-
ビタミンB12・コバラミン
・シアノコバラミン
コリン-
ビタミンC・アスコルビン酸

ビタミンは大きく脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンに分けられます。

脂溶性ビタミンは油に溶けやすい性質をもつビタミン、水溶性ビタミンは水に溶けやすい性質をもつビタミンです。

ドッグフードのビタミンの基準値(AAFCO)

AAFCO(米国飼料検査官協会)の成分基準でみた値はドッグフードのパッケージ裏の成分と比較しやすいので、自宅のドッグフードと成分値のどのくらいの違いがあるか比べてみると良いでしょう(ビタミンの成分値がないフードもあります)。

【AAFCO】ドッグフードの100gあたりのビタミンの成分基準
ビタミンA5,000~250,000IU/kg
ビタミンD500 ~ 3000IU/kg
ビタミンE50IU/kg以上
チアミン
(ビタミンB1)
2.25mg/kg以上
リボフラビン
(ビタミンB2)
5.2mg/kg以上
パントテン酸
(ビタミンB5)
12mg/kg以上
ナイアシン
(ビタミンB3)
13.6mg/kg以上
ビタミンB61.5mg/kg以上
葉酸0.216mg/kg以上
ビタミンB120.028mg/kg以上
コリン1360mg/kg以上

ドッグフードのビタミンの値は、メーカーがパッケージや公式サイトで公開していなければ調べることができません。

ドッグフードと犬に必要なビタミンまとめ

犬田さん
ドッグフードの栄養素の「ビタミン」について学びました。

  • ビタミンは動物が正常な機能や活動を行うために必要な栄養
  • 脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンがある
  • 必要量は生物によって異なる
  • ビタミンは摂取量やバランスが大切
佐藤さん
ビタミンは何度も聞いた聞き馴染みのある栄養素でしたが、知らないことだらけで驚きました。ビタミンそれぞれにいろんな働きがあって犬の体を支えているんですね。

他の成分が気になる方は下の成分をチェックしてみてください!

ドッグフードの成分と犬に必要な栄養素。基準と表示の読み方。

2019年2月14日

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一般社団法人ペットフード協会ペットフード販売士、キャットフード勉強会ディレクターとして、キャットフードに関する情報を提供しています。また、日本化粧品検定協会のコスメコンシェルジュ資格を有し、ペットフードだけでなく化粧品にも精通しています。販売時に必要な知識となる薬機法などについてもご紹介ができます。 日本化粧品検定協会会員。