犬のトイレ失敗をやめさせたい!原因診断チャートと正しい対処法

犬のトイレ失敗をやめさせたい!原因診断チャートと正しい対処法
犬のトイレ失敗をやめさせたい!原因診断チャートと正しい対処法

そう思いながら床を拭き、溜息をついたことはありませんか?

このように犬のトイレの失敗に悩む飼い主さんは少なくありません。

毎日繰り返される粗相に、イライラしたり落ち込んだり。しつけがうまくいかないことで、「私が悪いのかな」と自分を責めてしまうこともあるかもしれません。

実は、犬がトイレを失敗する原因は一つではなく、複数の要因が絡んでいることも多くあります

この記事では、簡単なチェックチャートを使って原因を探りつつ、タイプ別に有効な対策を紹介します。

愛犬のトイレ失敗はどのタイプ?簡単チャートで分類

犬のトイレの失敗は、他の問題行動(攻撃行動や分離不安など)と比べて環境やしつけ、健康、心理など原因が多岐にわたるのが特徴です。

そのため、やみくもに叱ったり対処するとトイレの失敗を助長したり、飼い主への信頼が薄まったりする可能性があります。

まずは犬が「なぜ失敗するのか」を見極めることが重要となり、愛犬の様子や生活環境を観察して的確な対策をとることで、改善へとつなげることができます。

まずは、以下の診断チャートで愛犬がなぜトイレを失敗するのかを把握しましょう。

トイレの失敗診断チャート
トイレの場所やシートを最近変えた、または模様替えをした?
→ YES → 【タイプA:環境の変化や不快感】
→ NO → ②へ
成功したときに、十分に褒めたりご褒美を与えている?
→ YES → ③へ
→ NO → 【タイプB:しつけや学習不足】
失敗したときに、強く叱ってしまうことがある?
→ YES → 【タイプC:叱られすぎて不安・混乱】
→ NO → ④へ
失敗するのは留守番中や来客時など、特定の場面が多い?
→ YES → 【タイプD:ストレスや生活リズムの乱れ】
→ NO → ⑤へ
トイレ以外の場所(壁、家具など)に少量ずつ排尿している?
→ YES → 【タイプE:マーキング行動】
→ NO → ⑥へ

最近、頻尿・下痢・水の多飲などの体調変化がある?
→ YES → 【タイプF:加齢や体調不良によるもの】
→ NO → 【タイプG:明確な原因がわからない/複合型】

愛犬がトイレを失敗する原因は見つけられたでしょうか。

次項では、犬のトイレ失敗の具体的な対策について一つずつ解説します。

【タイプA:環境の変化や不快感】の原因と対策

原因

犬がトイレを失敗する原因として、まず考えられるのが「環境の変化」や「トイレ周辺の不快感」です。

犬は環境の変化にとても敏感な動物であるため、トイレの位置が急に変わったり、模様替えや引っ越しなどで空間の雰囲気が変わると、犬は「ここでしていいのかな?」と混乱してしまうことがあります。

また、トイレが汚れている、騒がしい場所にある、トイレシートの素材やニオイが嫌いなど、物理的な不快感によってトイレを失敗するケースもあります

犬の行動や仕草
  • トイレに行ってもすぐ引き返す
  • トイレの前でウロウロして排泄せず立ち去る
  • 音や人の出入りが多い場所を避ける
  • シートを引っかく、嫌がる仕草を見せる

対策

対策としては、まずトイレの設置場所を犬が落ち着ける静かな場所に固定し、頻繁に掃除をして常に清潔に保つことが大切です。トイレシートも、以前使っていたものと同じ素材に戻すと安心感を与えられます。

環境を変えたばかりの時期は、犬をトイレの場所まで優しく誘導し、成功体験を積ませるようにしましょう。

【タイプB:しつけや学習不足】の原因と対策

原因

犬のトイレ失敗が続くのは、トイレの場所やタイミングがまだ身についていないことも考えられます。

とくに子犬や保護犬ではトイレの成功体験の回数が少なく、飼い主に褒められる経験を積めていないことで「正しい排泄場所」が定着していないことがあります。

犬の行動や仕草
  • 排泄の場所が毎回バラバラ
  • トイレ以外の場所でも平然と排泄する
  • 排泄した後もとくに気にする様子がない
  • トイレに連れて行っても排泄しないまま戻る
  • 成功しても無反応、または失敗しても気にしない

対策

対策としては、成功体験を意識的に増やすこと、ポジティブな強化を徹底することが何より効果的です。

正しい場所でトイレができた瞬間にすぐ褒める・ご褒美を与えることで、「ここでしていいんだ」と犬が学び、ポジティブな経験を積むことができます。

また、排泄しやすいタイミング(起床後、食後、遊んだあとなど)を見極めて、スムーズにトイレに誘導する習慣をつけることも重要です。最初は広い部屋で自由にさせるのではなく、限られたスペースで練習させると成功率が高まり、正しい行動が定着しやすくなります。

【タイプC:叱られすぎて不安・混乱】の原因と対策

原因

トイレの失敗を強く叱られた経験がある犬は、「排泄=悪いこと」と誤解し、不安や混乱から失敗を繰り返すようになることがあります。中には、飼い主に怒られるのが怖くて見つからない場所でこっそり排泄するようになる犬もいます。

このような状態では、たとえ環境や学習が整っていても心理的な不安が強く、排泄行動そのものに支障が出てしまいます

犬の行動や仕草
  • 飼い主が見ていない場所で排泄する
  • トイレ中にこちらを気にする
  • 排泄後におびえた様子を見せる
  • 排泄自体を我慢するような仕草をする
  • 排泄後に隠れる、申し訳なさそうに逃げる

対策

このタイプへの対処は、「叱らないこと」が最も重要です。

失敗しても声を荒げたり犬を責めたりせずに静かに片づけ、成功したときにだけしっかり褒めます。そうすることで犬が排泄に対してポジティブな体験を積み重ねることで徐々に混乱や不安が解消されていき、「排泄=良いこと」という印象を得ることができます。

飼い主との信頼関係を取り戻し、安心して排泄できるような環境を整えることが回復への第一歩です。

【タイプD:ストレスや生活リズムの乱れ】の原因と対策

原因

犬は環境や飼い主の行動の変化にとても敏感です。留守番が長くなったり、来客や騒音が増えたり、引っ越し・家族構成の変化があったときなどにストレスを感じ、それがトイレの失敗として表れることがあります。

また、退屈や寂しさを紛らわせたい、飼い主の気を引きたいという感情が背景にあることもあります。

このような場合は、失敗そのものが「問題」ではなく、犬からの「心のサイン」ととらえることが大切です。

犬の行動や仕草
  • 留守番中だけ失敗する
  • 来客やイベントがあると粗相する
  • 家族の行動に過敏に反応し、そわそわする
  • 無駄吠えや破壊行動など他の行動も増えている
  • 飼い主に構ってもらえない時間帯に失敗が多い

対策

対策としては、まず生活リズムを安定させ、散歩や遊びの時間をしっかり確保して心の充実を図ることが重要です。

・留守番中の粗相が多い場合
安心できるスペースや寝床を作る

・留守番が苦手な犬の場合
短時間の外出から徐々に慣れさせる

・退屈や寂しさを紛らわすためのトイレ失敗
散歩や遊びでエネルギーを発散させる

・構ってほしくてトイレを失敗する
失敗時は無反応を貫き、正しくできた時にだけ褒める

【タイプE:マーキング行動】の原因と対策

原因

トイレではない場所に少量の尿をかける行動が見られる場合、排泄ではなくマーキングの可能性があります。

これは縄張り意識や不安、性的本能などが関係しており、とくに未去勢のオス犬に多く、他の犬のにおいへの反応や、来客・新しい家具・他の動物などに対して自分の存在を示すために行われます。また、メス犬でも発情期や不安定な時期にマーキングを行うことがあります。

犬の行動や仕草
  • 家具や壁などに少量ずつ尿をかける
  • 散歩中も頻繁に少量ずつ排尿する
  • いつも同じ場所に繰り返しマーキングする
  • 足を高く上げて排尿する(とくにオス)
  • 他の犬のニオイに強く反応する

対策

対策としては、必要に応じて去勢・避妊を検討することが基本です。

また、マーキングが出やすい場所にはフェンスやマットを敷いたり、ペット用のマーキング防止スプレーなどで事前に対処するのも有効です。日常生活では、マーキングを誘発する要因(不安、他者のニオイの残留など)を減らすことも意識し、落ち着ける環境を整えることが大切です。

【タイプF:加齢や体調不良によるもの】の原因と対策

原因

頻繁な粗相、急なトイレの失敗、夜間の排泄などが見られる場合は、体調の変化や老化が関係している可能性があります。例えば膀胱炎尿石症などの泌尿器系疾患、ホルモン異常、下痢や腸のトラブル、薬の副作用などが考えられます。

また、高齢犬では筋力の低下や認知機能の衰えによってトイレを我慢できなかったり、場所を間違えることもあります。

犬の行動や仕草
  • トイレまで間に合わずに漏らす
  • 排尿・排便の回数が増えている
  • 下痢や軟便などの排便異常がある
  • トイレの場所を忘れたような動きをする
  • 立ち上がりが遅く、移動に時間がかかる

対策

まず動物病院での診察を受け、病気や異常の有無を確認することが第一です。

高齢犬の場合はトイレまでの移動距離を短くしたり、段差のない場所に設置したりと、生活環境を見直して負担を軽減することが大切です。

成功に導くよりも失敗を防ぐことを重視し、見守りや介助を増やしてあげましょう。

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2024年11月25日

【タイプG:明確な原因がわからない/複合型】の原因と対策

原因

「これといった原因が思い当たらない」「どのタイプにも少しずつ当てはまる気がする」というケースでは、いくつかの軽微な原因が重なっている”複合型”であったり、一時的な混乱期にあると考えられます。

例えば気候の変化、季節による体調の波、家庭内の小さな変化など、飼い主からは気づきにくいことが影響していることもあります。

複合型については次項で詳しく解説します。

犬の行動や仕草
  • ときどき成功、ときどき失敗する
  • トイレに向かうが途中でやめる
  • 一見問題なさそうだが、失敗が継続している
  • 季節や時間帯によって成功率が変わる
  • とくに緊張や不調もないが場所を間違える

対策

このような場合は、急いで原因を突き止めようとするのではなく、まずは基本に立ち返って環境・しつけ・健康の面を一通り見直すことが大切です。

愛犬の様子をよく観察し、食欲・活動量・排尿頻度などに異変がないかをチェックしましょう。また、トイレの成功時にはしっかり褒めるなど、よい習慣を再確認することで自然と落ち着いてくることもあります。

複雑な問題ほど、丁寧な観察と冷静な対応が改善への近道になります。

複数の原因が重なる”複合型”のトイレ失敗

前述で解説した通り、犬のトイレの失敗には「これが原因」とはっきり言い切れないケースも多くあります。というのも、実際には複数の要因が少しずつ絡み合って起こっていることが珍しくないからです。

・ケース①「環境の問題+心理的不安」
トイレの場所が分かりにくいうえに、過去に叱られた経験がある場合、犬は「トイレに行きたいのに、どうしたらいいか分からない」と混乱し、失敗を繰り返してしまいます。

・ケース②「体力の衰え+環境の問題+習慣のズレ」
高齢の犬では体力の衰えで間に合わなくなっているだけでなく、トイレが遠くて行きづらく、しつけが十分にされていないといった複合要因が重なっているケースもあります。

・ケース③「軽い膀胱炎 × 留守番が多い × 清掃不足」
膀胱炎で排尿頻度が増えているにもかかわらず、留守番が多いために長時間我慢を強いられ、さらにトイレが汚れていて使いたくない状態になっているケース。犬のトイレの失敗を飼い主が「ただの癖」と誤解し、健康チェックが遅れて重大な健康問題に発展するリスクがあります。

このように、表面的には「ただの失敗」に見えても、背景にはいくつかの小さなズレやストレスが積み重なっていることがあるのです。そのため、ひとつの原因に決めつけて対応するのではなく、「環境・しつけ・心理・健康」の4方向から広く見直すことが大切です。

複合的な問題ほど、正確な原因の特定には時間がかかりますが、焦らず犬の様子を観察し、ひとつずつ丁寧に改善していくことで確実に良い方向に向かっていきます。

いつ獣医師や専門家に相談すべき?

犬のトイレの失敗はしつけや環境の工夫で改善できることも多いですが、あるサインが見られたときには早めに獣医師や専門家に相談することが大切です。見過ごしているうちに健康問題が悪化していたり、犬自身のストレスが大きくなってしまうこともあるからです。

例えば、次のような場合は健康問題が隠れている可能性があります。

  • 急にトイレの失敗が増えた
  • 頻尿、血尿、下痢、軟便が続く
  • 水を異常にたくさん飲む
  • 夜中や留守番中など、決まったタイミングで粗相を繰り返す
  • 排泄の仕草が不自然(いきむ、痛がる、何度も排尿姿勢をとる)

とくに高齢犬の場合は加齢による筋力低下や認知機能の低下が影響していることもあるため、「年齢のせいかな」と自己判断せずに、まずは獣医師に相談することをおすすめします。

まとめ

犬のトイレ失敗の原因は非常に多く、また複合パターンも合わせると多岐にわたります。

ひとつの原因だけで判断するのではなく、犬の行動や仕草をよく観察し、広い視点で原因を見極めることが大切です。焦らず、叱らず、犬と向き合いながら、少しずつ成功体験を重ねていきましょう。

必要に応じて獣医師や専門家の力を借りることも、飼い主としての大切な選択肢のひとつです。

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帝京科学大学アニマルサイエンス学科卒業。愛玩動物飼養管理士2級、ペットセラピスト、ペット看護士の資格を取得。ドッグフード勉強会ディレクターとして、わんちゃんの栄養や病気、生態、ドッグフードなどの情報を提供しています。わんちゃんの魅力を発信し、飼い主さんの悩みや不安を解決することで、わんちゃんと飼い主さんの幸せのお手伝いになれれば嬉しいです。