犬の膵炎・膵外分泌不全症。原因や症状、10%以下の低脂肪なドッグフードが推奨

犬 膵炎 病気

犬の膵炎(Pancreatitis)

膵炎とは、膵臓が炎症を起こした状態をいいます。膵臓は消化酵素を含む膵液を分泌して消化器官に届ける器官であり、食べ物の消化やエネルギーの生成において重要な役割を担っていますが、膵炎により機能が低下すると、エネルギー生産量の低下による衰弱や体重減少、消化不良を引き起こします。

犬においては、下記の犬種や、中高齢の肥満気味のメスの犬が発症しやすい傾向にあります。

  • ミニチュア・シュナウザー
  • シェットランド・シープドッグ
  • ドーベルマン・ピンシャー
  • ロットワイヤー など

急性膵炎

急性膵炎は、膵臓の消化酵素(トリプシン、リパーゼなど)が活性化し、膵臓自体が自己消化されてしまうことで起こります。

犬の急性膵炎の原因は、偏った食事や高脂血症、肥満、高カルシウム血症、上皮小体機能亢進症、外科手術、投薬(ステロイドホルモン、利尿薬など)、副腎皮質機能亢進症、寄生虫による感染症、血行障害、膵臓の外傷、胆道疾患、免疫介在性疾患など多くの可能性が挙げられますが、はっきりとした原因は分かっていません。

慢性膵炎

慢性膵炎は、急性膵炎が長期化したり繰り返し再発することによって慢性化した状態を言います。慢性再発性膵炎は、急性膵炎と同様の症状が多いですが、発熱、黄疸、腹水や胸水の貯留が認められることもあります。

膵外分泌不全症

膵外分泌不全症は、消化酵素の活性化によって起こる膵炎とは反対に、膵臓の外分泌機能で十分な膵酵素が分泌されず消化不良に陥った状態を言います。

主な原因は遺伝、または成犬型の膵腺房細胞萎縮によるものですが、膵炎やその治療によって引き起こされることもあります

膵外分泌不全症は、膵臓の外分泌機能を行う組織を著しく失い、消化酵素が本来作用するべき部位ではないところで作用します。結果、組織障害により十分な量の栄養素を吸収できず、下痢や体重減少、小腸疾患を引き起こします。

犬の膵炎の症状

  • 食欲不振
  • 体重減少
  • 抑うつ状態
  • 嘔吐
  • 下痢
  • 患部の痛み
  • 発熱
  • 黄疸
  • 腹水や胸水の貯留

膵炎では、食欲不振や抑うつ状態、また嘔吐下痢、そして激しい痛みを伴います。

嘔吐物は消化できていない食べ物が吐き出されるイメージで、重傷になると粘液や液体を含むようになります。口の渇きを癒やすために、犬が水を飲んでは嘔吐を繰り返す場合もあります。下痢の多くは嘔吐の最盛期に見られます。

犬の膵炎の診断・検査

膵炎は、犬の定期健診でも行われる血液化学検査で、白血球の増加や肝臓/膵臓の酵素活性の上昇が見られます。また、トリプシン様免疫反応物質を測定し、X線検査や超音波、CT、MRIなどの検査を行って診断できます(慢性膵炎も診断や治療は急性膵炎と同じ)。

膵外分泌不全症の場合、これまでの愛犬の病歴聴取と身体検査に加えて、糞便検査で末消化脂肪を確認し、尿検査、血液化学検査(特に血清アミラーゼ、エイパーゼ活性)などで判断します。ただこれらの検査では確実に診断できないことが多いため、消化酵素の低下を確認する必要があります。

犬の膵炎の治療方法

絶食絶水による活動抑制

犬の膵炎の治療では、始めに絶食絶水で輸液療法を行い、短期間膵炎の活動を抑制しつつ、注射で制吐剤(クロルプロマジン、プロクロルベラジン)や鎮痛薬、抗生物質を投与します。

これまでの急性膵炎の治療は、徹底的な絶食で膵炎の安静を保つことがスタンダードとされてきましたが、近年犬の膵炎に対する絶食に対する考え方が大きく変わり、早期の給餌開始、また中程度の膵炎の犬には制吐剤を用いつつ胃チューブを介した少量の低脂肪食の給餌が推奨されているようです。

高脂血症との併発を防ぐために低脂肪食が推奨

膵炎では高脂血症を併発する犬が多く、高脂血症が膵炎の原因でになることも多いため、一般的に10%以下の低脂肪なドッグフードが推奨されています

ただし低脂肪なドッグフードが必須というわけではなく、高脂血症が原因または併発の可能性がある場合には低脂肪ドッグフードが薦められますが、他に原因があったり、低脂肪ドッグフードの継続により痩せ過ぎ、体力や筋力低下などが顕著に現れる場合には、中程度の脂肪量のドッグフードを与えた方がいいケースもあります。

膵外分泌不全症は膵酵素活性剤を投与

膵外分泌不全症では、膵炎とは反対に消化酵素が分泌されないことが問題なので、犬の消化管内の膵酵素活性を補う「膵酵素末(バイオカセーV)」を1日2回、バランスのとれた総合栄養食のドッグフードに混ぜて投与します。十分な量の膵酵素剤の補充を行っているにもかかわらず下痢が治まらない場合にはビタミンや酵素剤を与えます。

まとめ

  • 膵炎は消化酵素が活性化し自己消化されることが原因
  • 高脂血症になりやすい犬種や中高齢の肥満気味のメスの犬が発症しやすい
  • 食欲不振や体重減少、嘔吐や下痢などの症状が現れる
  • 短期間の絶食絶水や低脂肪食の給餌が推奨

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一般社団法人ペットフード協会ペットフード販売士、キャットフード勉強会ディレクターとして、キャットフードに関する情報を提供しています。また、日本化粧品検定協会のコスメコンシェルジュ資格を有し、ペットフードだけでなく化粧品にも精通しています。販売時に必要な知識となる薬機法などについてもご紹介ができます。 日本化粧品検定協会会員。