廃棄予定だった雪下キャベツがドッグフードに。フードロスと犬の健康を両立するサステナブルな取り組み

廃棄予定だった雪下キャベツがドッグフードに。フードロスと犬の健康を両立するサステナブルな取り組み

古川さん
ドッグフードの原材料にキャベツですか!珍しいですよね。

犬田さん
はい、新潟県上越市の雪下(ゆきした)キャベツです。甘くみずみずしい味わいで知られていますよ。

今冬の大雪によって収穫後に廃棄予定だったのですが、今はこうしてドッグフードの原材料として再利用され、新潟市のペットショップで数量限定で販売されています。

古川さん
へえ…犬にキャベツって、大丈夫なんですか?

犬田さん
大丈夫です。とくにこの雪下キャベツは甘みが強くて、食物繊維やビタミンも豊富。適切に調理すれば、犬の腸内環境にも良いんです。

古川さん
それにフードロスも減るって…なんだかすごくいい話ですね。

犬田さん
この動きは、単に“もったいない”を解消するだけにとどまりません。

地域農業の支援、犬の健康促進、環境への配慮といった多方面にわたる価値が内包された、まさに未来型のフードサイクルと言えるでしょう。

今回は、雪下キャベツを原材料にしたドッグフードの取り組みを紹介しながら、フードロス削減とペット栄養学の観点からその意義を深掘りします。

雪下キャベツとは?自然の冷蔵庫が育てた冬の恵み

雪下キャベツとは、冬の間、雪の下に埋めるようにして保存・熟成されたキャベツのことです。新潟県の上越、福島県の会津磐梯、北海道の富良野などの豪雪地帯が名産で、雪の断熱効果によって低温でじっくりと糖化が進み、通常のキャベツよりも甘味が強く、繊維も柔らかくなるのが特徴です。

この雪下キャベツは、これまでも寒さによる凍結や流通の困難さから、収穫されても一部が廃棄されることが少なくありませんでした。とくに今冬(2025年)は記録的な積雪により、収穫後の搬出が難航し、多くのキャベツが流通に乗らず「フードロス」となる運命にありました。

しかし、新潟市のあるペットショップがこの状況に目をつけ、「人間が食べなくても、犬の食事に再利用できるのでは」と発案。農家との連携を通じて、廃棄予定だったキャベツをドッグフードに加工・販売するプロジェクトが立ち上がりました

野菜は犬にとって必要?キャベツの栄養価と安全性

キャベツには、不溶性・水溶性の両方の食物繊維が含まれ、腸内環境を整える効果があります。また、抗酸化作用のあるビタミンCやカリウム、葉酸なども豊富で、とくに雪下キャベツは低温熟成の影響でそれらの栄養価が高まっていることが知られています。

さらに、雪下キャベツのように柔らかく甘味が強い野菜は、犬の食いつきにもプラスに作用します。キャベツは加熱調理(焼く・蒸すなど)をすることで甘みが増すため、高齢犬や偏食傾向のある犬でも、自然の甘さに誘われて食事への意欲が高まるでしょう。

ただし、「ゴイトロゲン」に注意

キャベツに含まれる「ゴイトロゲン」は、ヨウ素の吸収を妨げる働きがあり、過剰に摂取すると甲状腺機能に影響を与える可能性があります。

研究によると、ゴイトロゲンは30分の茹で調理で約90%のゴイトロゲンが分解・除去されることが分かりました。そのため、犬に与える際は必ず加熱調理(焼く・蒸すなど)を行うようにしましょう。

犬にキャベツは与えてOK!キャベジンやビタミンCが豊富!甲状腺や尿路結石の心配は?

犬にキャベツは与えてOK!キャベジンやビタミンCが豊富!甲状腺や尿路結石の心配は?

2021年8月26日

参考:Goitrogenic Foods and Thyroid Health
参考:Goitrogen

フードロスという社会課題とドッグフードの接点

農作物の生産現場では、下記の理由によって出荷できずに破棄されるケースが多発しています。

  • 形が小さすぎる・大きすぎる
  • 色ムラがある・曲がっている
  • 輸送中に傷がついた
  • 収穫量が多すぎて売り先がない

農林水産省の発表によると、日本では年間600万トン以上の食品がフードロスとして廃棄されており、その中には野菜類も多く含まれています。

こうした廃棄野菜をペットフードとして再利用する取り組みは、近年少しずつ増えつつあります。雪下キャベツの事例は、地方農業・ペット産業・環境問題の先進的な取り組みとして、他の地域への波及が期待されています

参考:令和3年度版食品ロス削減ガイドブック|消費者庁

フードロス削減だけでなく、安全性に重要視

雪下キャベツを使ったドッグフードの魅力は、栄養価やフードロス削減だけではありません。もう一つの大きな意義は「地元の農作物であること」、そして「誰が作ったかが明確であること」です。

近年の飼い主は、犬の食事への関心の高まりにより、「食材の安全性」を重視する傾向にありますが、市販ドッグフードの中には、原材料の産地が不明であるケースも少なくありません

こうした背景の中で、地域農家との連携により、「どこで育てられた、誰が作った、どのような栄養素があるのか」が明確なドッグフードは、飼い主からの高い信頼を集めています。

サステナブルな製品選びを大切にする飼い主層には、とくに魅力となる商品となるでしょう。

犬の健康と環境保護を両立させる「これからのごはん」

食事が単なる栄養補給でなく、環境保護や地域活性化に貢献できるものであるという考え方は、今後のペットライフスタイルに大きな変化をもたらす可能性があります。

もちろん、犬に与える食材には慎重さが必要です。全ての廃棄野菜が安全に使えるとは限らず、栄養バランスや衛生管理がきちんとされた製品であることが前提です。

そのうえで、地域野菜や未利用資源の活用が進めば、ペットフード業界全体がより持続可能な方向へと進化していくはずです。

まとめ

  • 上越産の雪下キャベツが廃棄予定からドッグフードへと再活用
  • 雪下キャベツは甘みが強く、食物繊維やビタミンが豊富
  • キャベツに含まれるゴイトロゲンも加熱により分解・除去される
  • フードロスの削減、地元農家の支援、地域活性化につながる

ABOUTこの記事をかいた人

アバター画像

帝京科学大学アニマルサイエンス学科卒業。愛玩動物飼養管理士2級、ペットセラピスト、ペット看護士の資格を取得。ドッグフード勉強会ディレクターとして、わんちゃんの栄養や病気、生態、ドッグフードなどの情報を提供しています。わんちゃんの魅力を発信し、飼い主さんの悩みや不安を解決することで、わんちゃんと飼い主さんの幸せのお手伝いになれれば嬉しいです。