ドッグフードの原材料:山芋(Japanese Yam)
山芋とは、ヤマノイモ科ヤマノイモ属に分類される野菜です。日本では古くから食べられてきた歴史の深い食べ物で、「山のうなぎ」といわれるほど高い栄養価を持っています。山芋や納豆、オクラなどのネバネバした食材は人間にとっては健康に良いとされていますが、犬にとってはどうなのでしょうか?
与え方に注意が必要ですが、豊富な食物繊維について、山芋特有の成分マンナンについて、おすすめの与え方についてご紹介します。
山芋の栄養素
下表は、山芋100gに含まれる栄養素です。
エネルギー(kcal) | 炭水化物(g) | カリウム(mg) | 食物繊維(g) |
64 | 13.9 | 430 | 1.0 |
出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
水溶性食物繊維・不溶性食物繊維
食物繊維には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維があります。
効果 | |
---|---|
水溶性食物繊維 | ・水に溶けて胃に溜まり、満腹感が得られる ・過剰な水分を吸水するため、下痢が改善 ・コレステロールの排出を促進する |
不溶性食物繊維 | ・腸の動きを活発化させることで便通を促進 ・保水してフードのかさ増しによる肥満防止 |
共通 | ・腸内細菌(ビフィズス菌など)のエサとなって腸内環境を整える ・腸内の病原菌を減らし、がんを予防 ・食後の血糖値の上昇をゆるやかにする |
それぞれ上表のような働きを持っていますが、山芋には水溶性食物繊維の両方が含まれています。食物繊維を摂取することは便秘や下痢の改善、がんや肥満の予防、ダイエットなどさまざまな健康効果が期待できます。
カリウム
カリウムは体内の塩分濃度が高くなったときに尿と一緒に排出する働きがあります。体内の浸透圧を調整するためむくみを解消でき、高血圧を予防することができます。
アミラーゼ
アミラーゼ(別名ジアスターゼ)とはでんぷんを分解する消化酵素の一種です。私たち人の唾液にはアミラーゼが含まれていますが、犬には含まれていません。
山芋に含まれているアミラーゼによって犬の体内のでんぷんを消化・分解し、消化不良や胸やけ、胃もたれなどの予防に効果があります。アミラーゼは熱に弱いため、犬に与えるときは加熱せずに生のまますりおろしたものがおすすめです。
山芋特有の成分:マンナン
山芋特有のネバネバは、「マンナン」という水溶性食物繊維とたんぱく質が結合したものです。たんぱく質でありながら食物繊維としての役割も果たします。体内の不要な栄養素を吸着して対外に排出したり、胃腸の粘膜を保護する働きを持ちます。
山芋を触ると痒みが出るのはなぜ?
山芋を触ると痒くなるのは、「シュウ酸カルシウム結晶」が原因です。皮付近に多く含まれる針状結晶で、皮をむいたりすりおろしたりすることで組織が破壊され、山芋に溶け込みます。そのため山芋を触ったときに皮膚を刺激して痒くなるのです。これはアレルギーではなく、単なる刺激による痒みや痛みになります。人間だけでなく、犬にも症状があらわれます。
シュウ酸カルシウム結晶を減らすには、レモン水やお酢を使うと効果的です。シュウ酸カルシウム結晶は熱や酸に弱いので成分を溶け出すことができます。犬はレモン水やお酢のような酸っぱいものが苦手なので、水でよく洗ってから犬に与えるようにしましょう。
山芋のおすすめの与え方
人間の場合、山芋を食べるときは皮ごと食べたりすりおろしにしますが、犬に与える場合は皮をむいたものを与えるようにしましょう。シュウ酸カルシウム結晶の摂取を避けることができます。
また犬は食べ物を丸飲み・早食いする習性があるので、食べやすいように小さくカットしたり、すりおろすことがおすすめです。すりおろした山芋は粘り気が強いので、喉の詰まりや負担を減らすために水やスープを加えて与えましょう。心配な場合は加熱すると、柔らかくほくほくした食感で食べやすくなります。
山芋を与えるときの注意点
与えすぎると体調不良に
山芋には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の両方が含まれています。しかし食物繊維を摂取しすぎると逆効果となり、便秘や下痢、軟便、ガスの発生などの症状を引き起こすことがあります。とくに不溶性食物繊維は栄養素の吸収を抑制してしまうので、ビタミンやミネラルの欠乏症になる恐れがあります。
また山芋は炭水化物が豊富に含まれているので、与えすぎると肥満になる恐れがあります。
犬に山芋を与えるのは、1日の総適正カロリーの10%が目安となります。子犬のころから積極的に与えたり、極端な過剰摂取は避けましょう。
腎臓病を持っている犬には与えない
山芋はカリウムを多く含むので、腎臓病を患っている犬には過剰に与えないようにしましょう。腎機能が低下していることによりカリウムを十分に排出することができず、血中のカリウム濃度が上がってしまいます。これを高カリウム血症といい、痙攣や不整脈などの症状があらわれます。
皮膚病を持っている犬には与えない
皮をむいて白い部分だけを食べる分には心配ありませんが、例えば飼い主さんが山芋を調理していて、うっかり下に落としたときに犬が触ってしまう恐れがあります。最悪の場合は全身に皮膚炎が広がってしまう可能性もあります。犬が皮膚病を持っていたり、皮膚が弱い体質の場合は刺激が強すぎて症状が悪化する恐れがあるため、山芋の取り扱いには十分に気を付けましょう。
まとめ
- 豊富な食物繊維は健康維持に効果的だが、与えすぎには注意
- 山芋に付いているシュウ酸カルシウム結晶が痒みを引き起こす
- 犬に与えるときは、生の山芋をすりおろしたり小さくカットする