目次
ドッグフードの原材料:マッシュルーム(mushroom)
ホワイトとブラウンの2種類
マッシュルームとはハラタケ科に属する食用きのこで、主に白色のホワイト種と茶色のブラウン種の2種類が流通しています。
マッシュルームは低カロリーでありながらビタミンB群や食物繊維、抗酸化物質を含み、とくに腸内環境の改善や免疫力の向上、骨の健康維持などの効果が期待されています。
また、マッシュルームの旨味成分であるグアニル酸は、料理の味を引き立てるだけでなく、消化吸収や代謝調節にも関与しています。
シャンピニオンとも呼ばれる
マッシュルームはシャンピニオン(Champignon)とも呼ばれ、これはフランス語で「きのこ」を意味します。
そのためドッグフードや犬用おやつ、犬用サプリメントの原材料に「シャンピニオンエキス」と記載されるのは、海外産のものが多くみられます。
マッシュルームの栄養素と犬への健康効果
マッシュルームの栄養素
下表は、マッシュルームのホワイト種とブラウン種100gあたりの栄養素です。
ホワイト | ブラウン | ||
---|---|---|---|
エネルギー | 15 | 18 | kcal |
水分 | 93.9 | 92.7 | g |
たんぱく質 | 2.9 | 3.2 | g |
炭水化物 | 2.1 | 2.9 | g |
ナトリウム | 6 | 6 | mg |
カリウム | 350 | 390 | mg |
カルシウム | 3 | 4 | mg |
リン | 100 | 100 | mg |
ビタミンB1 (チアミン) | 0.06 | 0.12 | mg |
ビタミンB2 (リボフラビン) | 0.29 | 0.47 | mg |
ビタミンB3 (ナイアシン) | 3.0 | 4.2 | mg |
ビタミンB6 (ピリドキシン) | 0.11 | 0.15 | mg |
食物繊維 | 2.0 | - | g |
βグルカンによる免疫力の向上
マッシュルームに含まれる食物繊維の一種「βグルカン」は、犬の免疫力の向上や腸内環境の改善に効果的です。
βグルカンは犬の免疫細胞を活性化し、病気や感染症への抵抗力を高める働きがあります。とくにシニア犬や病後の回復期の犬にとって非常に有効的といえます。
腸内環境の改善
βグルカンは腸内の善玉菌のエサとなって腸内環境を整える働きを持ち、消化吸収を助けることで便秘や下痢の予防に貢献します。
また、水溶性食物繊維として腸内でゲル状になり、腸内をゆっくりと移動することで血糖値の上昇を抑える効果も期待できます。
腸内環境を整えることは健康度が高いことにもつながるということが研究により報告されています。

引用画像:犬の腸内環境が多様なほど、健康度が高いことが明らかに!|アニコムのデータをもとに作成
消化吸収や代謝調節
グアニル酸とは、マッシュルームに含まれる旨味成分の一種です。
研究では、グアニル酸は胃の迷走神経求心性線維に応答を示し、消化吸収や代謝調節に関与する可能性が示唆されています。
迷走神経求心性線維とは内臓の情報を脳に伝える神経の線維のことで、グアニル酸はこの迷走神経求心性線維に影響を与え、消化を促進し、代謝を調整する可能性があると考えられています。
食欲が低下している犬の食事への嗜好性を高めたり、関心を引くのに役立ちます。
参考:脳からみた蛋白栄養状態とうま味嗜好性との関係|鳥居邦夫
老化防止・免疫力向上
マッシュルームにはポリアミン(スペルミジンやスペルミン、プトレッシン)が豊富に含まれています。
ポリアミンとは細胞の成長や修復を促進し、老化防止や免疫力向上に役立つ成分として注目されています。とくにオートファジー(細胞の自己修復機能)を活性化し、長寿やアンチエイジングに貢献する可能性が示唆されています。
参考:きのこに多い「ポリアミン」とは?健康長寿に関連する論文をご紹介!|HOKTO
マッシュルームが原材料のドッグフード例
マッシュルームはさまざまなドッグフードやおやつの原材料に使用されています。
原材料欄にはマッシュルームの他に、マッシュルーム抽出物、マッシュルームエキス、シャンピニオンエキスなどと記載されます。
- ドクターズケアドッグフード 犬用ウェイト&ジョイントケア
- プロフェッショナル・バランス 1歳から
- ダービーワン(八幡平マッシュルーム入りドッグフード)
- AD.DOG Support Company フリーズドライ マッシュルーム
- ペット用万田酵素 フェルミック(2袋)犬 猫 サプリ
など
マッシュルームのおすすめの与え方
加熱して与える
生のマッシュルームは消化しにくいため、必ず加熱調理して与えてください。
蒸す・茹でる・焼くなどの方法が適していますが、油や塩、調味料は一切使わずに調理しましょう。
グアニル酸の生成が促進されるのは60~70℃
研究により、調理方法によってマッシュルーム中のグアニル酸含量が変化することが報告されています。
ぬるま湯(40~50℃)よりも熱く、沸騰(100℃)よりも低い温度である60~70℃での加熱により、グアニル酸の生成が促進されて旨味が増すとされています。
(一部抜粋)きのこを加熱調理することによってグアニル酸が生成するのですが、グアニル酸を生成する酵素・分解する酵素の作用するバランスにより蓄積量が変化します。効果的にグアニル酸を蓄積させるには、長時間の低温加熱(45-60ºC)や、熱湯に入れるなどの急激な高温調理を避け、60-70ºC近辺で調理するのがよいようです。
低温調理器などで温度を一定に保ちながら加熱したり、鍋に60~70℃のお湯を作って耐熱袋にマッシュルームを入れて湯せんしたり、オーブンの低温モード(60~70℃設定)でゆっくり加熱すると良いでしょう。
細かく刻むかペースト状にする
マッシュルームは食物繊維が豊富で犬が消化しにくいこともあるため、細かく刻んだり、ペースト状にしてドッグフードに混ぜたり、おやつとして与えましょう。
マッシュルームの注意点
黒く変色しているものは与えない
マッシュルームが黒く変色しているのは、酸化している、カビが生えているなどが原因として考えられます。
とくに内部まで黒ずんでいる場合や異臭、ぬめりがある場合は腐敗の可能性があり、犬が食べると消化不良や食中毒を引き起こすこともあります。
マッシュルームが黒く変色している場合は犬に与えないようにし、新鮮で白く、傷みのないものを選ぶことが大切です。
ポリアミンはヒスタミン代謝を阻害する
前述でポリアミンの犬への健康効果について解説しましたが、ヒスタミン不耐性の犬は注意が必要です。
ヒスタミンとは体内でアレルギー反応や炎症反応を引き起こす化学物質で、体内の酵素によって分解されます。しかしポリアミンは酵素の働きを阻害する可能性があり、体内のヒスタミン濃度が上昇しやすくなります。
そのため、ヒスタミン不耐性の犬がポリアミンを過剰摂取すると皮膚の痒みや赤み、じんましん、消化不良などの症状を引き起こすことがあります。
ヒスタミン不耐性を持つ犬は少量のマッシュルームでも症状が出る可能性があるため、摂取は避けた方が良いでしょう。
まとめ
- 原材料欄にはシャンピニオンと記載されることがある
- 免疫力の向上や腸内環境の改善、老化防止など多くの健康効果がある
- 犬に与える際は加熱して細かく刻む・ペースト状にする
- ヒスタミン不耐性の犬には与えない方が安全