ドッグフードのシナモン。原材料に使って大丈夫?香り成分クマリンの肝毒性について解説

ドッグフードのシナモン。原材料に使って大丈夫?香り成分クマリンの肝毒性について

ドッグフードの原材料:シナモン(cinnamon)

シナモンとは、クスノキ科ニッケイ属の樹皮を剥がして乾燥させたもので、独特の甘い香りと風味、多少の苦みを持っています。

「スパイスの王様」ともよばれるほど古くから利用されてきた歴史があり、粉末状にしてシナモンパウダーにしたり、棒状に加工したシナモンスティックが一般的に知られています。

芳香成分クマリンは肝毒性がある

過剰摂取はNG

シナモンの独特な香りは、クマリン(Coumarin)とよばれる天然の化合物です。クマリンには肝毒性があり、過剰摂取すると肝臓疾患を引き起こすといわれています。

東京都保健医療局が発表した資料でも、クマリンについて過剰摂取しないようにと注意喚起が出されています。

肝臓疾患の症状
  • 嘔吐や下痢
  • 黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)
  • 腹水(お腹が膨れる)
  • 尿の色が濃くなる
  • 口臭が強くなる
  • 神経症状(震えや痙攣など)

参考:シナモン中のクマリンについて|東京都保健医療局

クマリン含有量

シナモンは主に「セイロンシナモン」と「カシアシナモン」の2種類があり、それぞれ香りや成分に違いがあります。

食品産地検出数クマリン含有量(μg/g)平均(μg/g)
セイロンスリランカ711-1714
カシアベトナム44500-67005400
インドネシア119001900
マレーシア113001300
中国2310、850580

上記の表からも分かる通り、カシアシナモンの方が圧倒的にクマリンが多く含まれています

ご家庭でシナモンを使った料理やお菓子を作ったり食べるときは、犬につまみ食いされないように十分に注意しましょう。もしセイロンシナモンであれば過剰に心配する必要はないでしょうが、カシアシナモンは少し舐めただけでも個々によっては症状が出てしまうかもしれません。

参考:シナモン含有食品のクマリン分析法及び実態調査|東京都健康安全研究センターを元に作成

犬にシナモンを与えても大丈夫?

佐藤さん
クマリンは肝毒性があるとされていますが、さまざまなドッグフードやおやつの原材料に使用されていますよね。犬が食べても大丈夫なのでしょうか?
犬田さん
シナモンをそのまま与えることは避けた方が良いですが、「絶対に与えてはいけない」というわけではありません。

というのも、シナモンのクマリン含有量は非常に少なく、日常的・長期的にシナモンを過剰摂取するような偏った食事をしなければ一日摂取許容量(ADI)を超えることはないと考えられるためです。

一日摂取許容量(ADI)とは、ある物質(食品添加物、農薬、化学物質など)を毎日一生涯にわたり摂取しても、健康に悪影響が出ないと考えられる1日あたりの許容量を指します。

クマリンのADIは、体重1kgあたり0.1mg/日です。体重10kgの犬の場合、1日1mg以下が許容摂取量の目安となります。

肝毒性があらわれないレシピで配合

シナモンはさまざまなドッグフードやおやつの原材料に使用されます。

原材料に使用される目的はシナモンの健康効果や香り付けが主ですが、配合される量は、もちろんクマリンの肝毒性があらわれないよう適切に計算されたレシピや製造方法となっています。

クマリンの健康効果

クマリンは肝毒性について注目されがちですが、クマリンにおける健康効果がいくつも報告されており、多くのドッグフードやおやつの原材料に使用されています。

抗酸化作用と抗菌作用

クマリンには抗酸化作用や抗菌作用、血中脂質改善作用、抗発がん作用などがあるとされています。

参考:レモン類が含有するフラボノイド、クマリン類の特徴|愛知淑徳大学

また、ラットにクマリン誘導体を投与した実験において、クマリン誘導体は広い用量範囲で細胞毒性がないことが確認されました。また網膜ミエロペルオキシダーゼ(MPO)の大幅な低下が観察されました。

つまり、強い抗酸化作用を示したことが分かりました。

参考:New coumarin-based anti-inflammatory drug: putative antagonist of the integrins alphaLbeta2 and alphaMbeta2

抗がん作用

さまざまな柑橘類に含まれるクマリンは、皮膚がんや口腔がんなどの抑制活性があることが分かりました。

オーラプテンはナツミカン、ハッサク、グレープフルーツなどの果皮や市販のジュースにも含有されているクマリンであり、in vitro試験による好発がんプロモーター活性や、動物実験による皮膚がん、口腔内がん、大腸がんの抑制活性があることが示されている。また、ベルガモットなどの果汁中に含有されるフロクマリンのベルガモチンには白血病細胞HL-60の分化誘導活性や皮膚がんの抑制活性があることが報告されている。

引用元:カンキツ類のがん抑制成分|川井悟

シナモンにはさまざまな健康効果がある

また、シナモンには上記の抗酸化作用、抗菌作用、抗がん作用の他にもさまざまな健康効果があります。

  • リラックス効果
  • 睡眠促進
  • 抗血液凝固作用
  • 血糖値の安定化
  • 腸内のガス排出
  • 消化促進 など
犬田さん
シナモンに限らずですが、過剰摂取はNGです。摂取する量、配合する量が重要ということですね。

シナモンにおける注意点

シナモンそのままはNG

シナモンはさまざまな健康効果があるとはいえ、シナモンそのものをそのまま、日常的・長期的に与えるは避けましょう

アレルギーの可能性

シナモンはアレルギーを引き起こす可能性は低いですが、ゼロではありません。犬に初めてシナモンを与える際は少量から始め、異常がみられた場合はすぐに使用を中止して獣医師さんに相談しましょう。

シナモンが原材料のドッグフード例

原材料欄にはシナモン、シナモンパウダー、オイルパウダー(シナモン)などと表記されます。

まとめ

  • シナモンの香り成分クマリンには肝毒性があるとされている
  • カシアシナモンはクマリンの含有量が圧倒的に多い
  • シナモンの肝毒性に注目されがちだが、過剰摂取しなければ健康効果が高い
  • 犬にシナモンそのものは与えない

ABOUTこの記事をかいた人

古川菜々

愛玩動物飼養管理士2級、ペットセラピスト、ペット看護士、愛犬飼育スペシャリスト、ドッグフード勉強会ディレクターとして、ドッグフードに関する情報を提供しています。帝京科学大学アニマルサイエンス学科卒業。文章を通してわんちゃんの魅力を発信し、また多くの飼い主さんの悩みや不安を解決することで、飼い主さんとわんちゃんの幸せのお手伝いになれば嬉しいです。