BARFとは?犬に生肉・生食(ローフード)を与えるメリットとデメリット。寄生虫や細菌による危険

生食 ラウフード
佐藤さん
最近「バーフ(BARF)」という言葉もよく聞くのですが、どういう意味でしょうか。
犬田さん
BARF理論は生食に関する言葉です。これまでは犬の食事といえばドライフードなどが一般的でしたが、最近は、手作り食や生肉が注目されてきたため、バーフが話題に上がることも増えてきました。

ということで、今回はBARFの意味や犬にとって生肉・生食のメリットとデメリットをご紹介したいと思います。

BARF(バーフ)とは

生肉をメインとした非加熱フード

BARF(Biologically Appropriate Raw Food)とは、生肉をメインに動物の骨や内臓、豆、野菜、果物などを含んだ非加熱のフードを言います。

BARF理論は、1993年にオーストラリアの獣医師イアン・ビリングハーストという獣医師が自身の著書「Give Your Dog a Bone」で提唱した考え方で、元々「Bone and Raw Food(骨と生食)」という言葉からでしたが、現在は「Biologically Appropriate Raw Food」へ変更されています。

Biologically Appropriate Raw Foodは、直訳すると「生物学的に適切なローフード(生食)」という意味になります。

BARF理論では、犬の祖先であるオオカミが野生化では草食動物を生のまま丸ごと食べていたことから、生で食べるからこそ得られる栄養素や、草食動物の臓器、胃の内容物なども一緒に食べることこそ、犬にとって理想の食事や栄養バランスであると考えています。

犬に生肉(ローフード)を与えるメリット

加熱で壊れるビタミンや酵素を摂取できる

従来のドッグフードは、ドライフードでもウェットフードでも、保存性を高めるために必ず加熱の工程がありました。しかしビタミンやミネラルの中には加熱に弱く、加熱すると壊れてしまうものが多くあります。

酵素が含まれるので消化器官に負担がかかりにくい

生肉は一見、消化器官への負担が大きそうにも思えますが、生肉には酵素が多く含まれるので、消化を助け、効率よく体内へ吸収することができると考えています。

酵素は年齢を重ねると酵素量は減少してきますが、酵素は加熱に弱く、生の食べ物からしか摂取することができません。ビタミンやミネラルは栄養添加物がありますが、酵素はフードに添加することができないので、生食の目的のひとつには酵素の摂取も挙げられます。

幼犬期に生肉を与えるとアレルギー性皮膚炎を防ぐかもしれない

ドッグフード 生肉引用元:フィンランドの成犬における飼い主が報告したアレルギー/アトピー皮膚徴候の発症の要因としての子犬の食事|

フィンランドで行われた幼犬期に食べていた食事に関するアンケート調査によると、幼犬期に生の動物性食品を与えることで、アレルギー性・アトピー性皮膚症状を防ぐ可能性が報告されています。

実際に行われた調査内容をみると、もちろん生肉以外ににも魚油のサプリメントなど他の食物も与えているので、生肉がアレルギー予防につながったかどうかは定かではありませんが、熱処理をした食品や果物、混合油などをを与えていた群と比較すると、発症率は低かったとしています。

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2021年10月20日

食材本来の食感や味を楽しめるので犬の嗜好性が高い

犬の嗜好性は味や風味の他に食感も影響するので、肉や野菜の本来の食感や味を楽しめるローフードは犬の嗜好性が高いです。

ドライフードでは混ざってどこを食べても同じ食感ですが、ローフードは様々な食材が含まれるので、野菜のシャキシャキ感や肉の弾力感などが楽しめ、フードが飽きにくいというメリットもあります。

犬に生肉(ローフード)を与えるデメリット、注意点

寄生虫や細菌による食中毒に注意

生肉で最も注意が必要なのは食中毒です。寄生虫や細菌による食中毒を起こされないよう、取り扱いには十分注意しなければなりません。

生で与えても問題ない肉は人間と同じで、牛肉や馬肉など。細菌が多い豚肉や鶏肉などは人間と同じで加熱しないと与えてはいけません。

また、生の状態で与える目的で販売されているローフードについても、何らかの菌が付着している可能性があります。犬用に販売されているローフードについて、以下のような調査結果が報告されています。

ドッグフード 生食 サルモネラ菌画像引用元:日本における犬用非加熱フード(ローフード)からのサルモネラ属菌検出状況調査

材料として日本国内で市販されていたローフード46検体、フリーズドライ製品として56検体の計102検体を調査した。 -中略- 犬用ローフード計46検体中7検体からサルモネラ属菌が検出された。原産国(最終加工地)別では7検体とも全て日本であった(表1)。最終加工地が海外の商品である、カナダ産の馬肉ミンチ1検体、メキシコ産馬肉ミンチ1検体、ニュージーランド産子羊肉ミンチ1検体からサルモネラ属菌が検出されなかった。

現在国内で販売されているローフード46検体を調査したところ、そのうち7検体でサルモネラ菌が検出され、そのすべてが国産フードという結果が出ています。

国内産の犬用ローフードからサルモネラ属菌が検出された理由として、加工後の加熱を行っていないことが大きいと考察されており、また、食品として販売されてい生肉にも一定の割合でサルモネラ菌が検出されていることから、犬用に使用されている生肉にもサルモネラ菌が混入している可能性は十分にありうるとしています。

海外では市販の犬用ローフードの細菌混入に関する2つの報告では、アメリカ288検体のうち17検体(5.9%)から、カナダでは166検体のうち35検体(21%)がそれぞれサルモネラ属菌に汚染されていたとのことですが、日本は46検体中7検体ということで検体数は少ないものの、割合にすると15.2%となります。

アメリカより多く、カナダよりは低いという結果ですが、15%ということは1/10以上の確率でサルモネラ菌が混入しているということになるので、日本の食品へ衛生管理や安全性を信じて国産を選んでいた方からすれば、かなりショッキングな数字かもしれません。

生肉メインは市販、手作り食どちらも食費が高くなる

また生肉をメインにする場合、市販のローフードを利用するにしても、手作り食にするにしても、どちらでも犬の食費は高くなります。

生肉自体が高く、また保存やクール便での配送など、何かとコストがかかるので、ローフードはどうしても高くなります。

また、手作りの場合でも、食品の残り物だけを使用するならコストは低くできますが、愛犬用に別で食事を用意する以上、ペット用の生肉や野菜などの食材、足りない栄養素を補うサプリメントなどを買い足したりすると、ドッグフードを購入するよりコストも手間もかかります。

手作りする場合は栄養バランスを考えるのが難しい

手作りの場合は、コストに加え犬の栄養バランスを考えて作らなければならないので、時間や手間がかかります。犬が食べきれる量で栄養バランスが崩れないよう犬にとって必要な栄養素を盛り込みつつ、犬の嗜好性が高いものをつくるのは、一般の方には非常に難しいことです。

リンやタンパク質が豊富なので腎臓病の犬はNG

生肉にはタンパク質やリンが豊富に含まれますが、腎臓が正常に機能していない犬にタンパク質やリンをたくさん与えると、腎臓に負担がかかり病状を悪化させてしまう可能性があるので、腎臓病の犬には生肉は与えないようにしましょう。

まとめ

  • 生食は加熱で壊れる酵素やビタミンが摂取できる
  • 嗜好性が高くアレルギーの予防効果も期待されている
  • 食中毒や栄養バランスに注意
  • タンパク質やリンの制限をしている犬にはNG

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一般社団法人ペットフード協会ペットフード販売士、キャットフード勉強会ディレクターとして、キャットフードに関する情報を提供しています。また、日本化粧品検定協会のコスメコンシェルジュ資格を有し、ペットフードだけでなく化粧品にも精通しています。販売時に必要な知識となる薬機法などについてもご紹介ができます。 日本化粧品検定協会会員。