ドッグフードの原材料:セイヨウイラクサ(nettle)
料理や薬用など有用性が高い
セイヨウイラクサはイラクサ科イラクサ属に属する多年草で、ヨーロッパやアジア、北アメリカ、北アフリカなど広範囲に分布しています。
古くから薬草として利用され、利尿作用や抗炎症作用があるとされています。また、葉や茎はハーブティーやスープ、ソースの材料としても使用されます。丈夫で繁殖力が高いため、雑草として扱われることもありますが、有用性が高い植物です。

画像引用元:生薬の花イラクサ|公益社団法人日本薬学会
セイヨウイラクサの茎や葉には刺激性の毛が密生していて、この毛にはヒスタミンやギ酸、セロトニンなどが含まれており、触れると皮膚に痛みやかゆみを引き起こします(上記写真)。葉は細長い卵形で鋸歯があり、緑色の濃い外観が特徴です。
散歩で出合う?
セイヨウイラクサは湿り気のある土壌を好み、特に道端や河川敷、草地、荒地、森林の縁などで多くみられます。都市部では雑草として繁殖することもあり、公園や散歩道でも見られる場合があります。
セイヨウイラクサが原材料のドッグフード例
毛の毒性は加熱すると無くなる
セイヨウイラクサの茎や葉に含まれる毒性成分は、加熱することで無害化されます。そのため、ドッグフードなど加熱された商品は健康に問題ありません。
セイヨウイラクサとイラクサの違いは?
セイヨウイラクサとイラクサはいずれもイラクサ科イラクサ属の植物ですが、別種のものになります。
- イラクサ:主に東アジアや日本(北海道から九州まで)に分布
- セイヨウイラクサ:主にヨーロッパや北アメリカ、北アフリカに分布
海外産のキャットフードではセイヨウイラクサがよく使用されますが、国産キャットフードではイラクサはほとんどみられません。
セイヨウイラクサが原材料のドッグフード例
マジョラムは様々なドッグフードの原材料に使用されています。
原材料欄には、イラクサ、セイヨウイラクサ、ネトルなどと表記されます。イラクサと記載されていても、セイヨウイラクサを指している場合もあります。
- マッサンペットフーズ ウィリアムドッグフード
- リリーズキッチン コテージパイ
- ファインペッツ ドッグフード
- AATU チキン
- C&R ビーフ&ミレット
- アーガイルディッシュ グレヴィレア・アダルト
- ハッピードッグ ダッグ&サーモン など
セイヨウイラクサの栄養素と犬への健康効果
セイヨウイラクサには様々な健康効果があることが報告されています。
利尿作用
セイヨウイラクサにはフラボノイドやカリウムなどが含まれているため、尿の排出を促進し、体内に溜まった余分な水分や毒素の排出を促進する利尿作用があります。
そのため、膀胱炎や尿道炎などの尿路感染症にかかりやすい犬に対して、尿量が増加することで尿路を清潔に保ち、細菌の繁殖を抑えることができます。
また、利尿作用により尿が希釈されることで、尿結石の形成リスクが軽減します。
抗炎症作用
セイヨウイラクサにはフラボノイドやポリフェノール、カロテノイドが含まれているため、抗炎症作用を持っています。
これらの成分は、体内の炎症を引き起こすシグナル伝達経路の活性を低下させ、慢性的な炎症を軽減します。ヨーロッパでは伝統的にリウマチの治療に利用されています。
アレルギー性鼻炎の緩和
アレルギー性鼻炎の患者69名を対象に、二重盲検無作為化プラセボ対照試験において、イラクサの凍結乾燥製剤を摂取したところ、アレルギー性鼻炎の症状が緩和したことが分かりました。
参考:Randomized, double-blind study of freeze-dried Urtica dioica in the treatment of allergic rhinitis
関節症の改善
親指や人差し指の付け根に関節症の痛みがある患者27名を対象に、二重盲検クロスオーバー無作為化プラセボ試験において、セイヨウイラクサの葉を1週間毎日患部に塗布したところ、症状の自己評価5項目中2項目で改善が認められたことが分かりました。
参考:Randomized controlled trial of nettle sting for treatment of base-of-thumb pain
セイヨウイラクサの注意点
サプリメントの過剰摂取はNG
ドッグフードに配合されているセイヨウイラクサは他のハーブ類とバランスをとって配合されており、また配合量はごく少量です。
そのため、ドッグフードの給与量をきちんと守れば心配ありませんが、サプリメントは成分が凝縮されているため、犬にとっては与えすぎは過剰摂取となります。
茎や葉に注意
セイヨウイラクサには刺激性の毛があり、犬が触れると人間と同様に皮膚に痛みや痒みを引き起こす可能性があります。被毛が多い胴体よりも、鼻や口、肉球など被毛が薄い部位は特に注意が必要です。
犬の散歩中にセイヨウイラクサを見かけた場合は、直接触れないよう注意しましょう。もし犬が触れた後にかゆがったり舐めたりする場合は、患部を優しく洗い流し、動物病院で診てもらいましょう。
まとめ
- 葉や茎の毛には刺激性があるが、加熱すれば無毒化される
- 公園などに自生していることもあり、散歩の際は注意が必要
- 利尿作用や抗炎症作用、抗アレルギー作用などの健康効果がある
- 過剰摂取しないよう注意する