犬の予防接種について
予防接種は年1回が推奨
予防接種とは、感染症の原因となる病原体に対して、免疫をつけたり強化したりするためにワクチンを接種することを言います。
犬の初回ワクチンは生後6~8週から接種し、以後は2~4週毎に15~18週まで接種します。
犬は散歩で頻繁に外に出ることから、他の犬や動物の糞尿、植物、土、虫など様々なものと接触機会があるため、ウイルスや最近などの病原体が体内に入るリスクが高くなります。
予防接種は初回から1年目以降は、基本的には年1回の追加接種が推奨されています(何歳まで受ければ良いかは種類によって異なります)。
狂犬病ワクチンは年1回の接種が義務
狂犬病ワクチンは厚生労働省が定める狂犬病予防法により生後3カ月以降のすべての犬に対して年1回の接種が義務づけられています。
日本は国内では50年以上も狂犬病は発生していないため、基本的に狂犬病に感染する心配はありませんが、狂犬病は一度発症すると致死率100%の非常に危険な人獣共通感染症です。狂犬病の動物や病原体が海外から持ち込まれる可能性もあるので、日頃から予防接種を受けることは大切です。
犬の混合ワクチンは何種がいい?
6種・8種の混合ワクチンが一般的
混合ワクチンは1本の注射で複数の病気をまとめて予防することができるワクチンです。混合ワクチンは一本ずつ打つのに比べて犬への精神的・身体的負担が少なく費用も抑えられるので、ほとんどの犬が混合ワクチンを利用すると思います。
犬の混合ワクチンは2~10種までありますが、多くの動物病院では、犬の混合ワクチンは6種・8種あたりが一般的です。
混合ワクチンで何種がいいかという質問がよくありますが、6種ワクチンは犬の感染性が高い病気で重症化しやすく死亡率も高いことから、最低限受けておきたい種類です。
感染源が多い川や森など自然豊かな場所に出かけることが多い犬は、8種混合ワクチンや10種混合ワクチンの接種が推奨されています。
犬の予防接種の料金・費用相場
混合ワクチンの料金表
犬のワクチン | 料金相場 |
---|---|
5・6種混合ワクチン | 5,000~7,500円 |
8・9・10種混合ワクチン | 7,000~10,000円 |
【義務】狂犬病予防 | 2000~4,000円 |
予防できる病気の種類が増えると、金額も大きくなります。フィラリアの予防接種は1種単体でも6,000~10,000円以上になることもあり、費用は高めです。
予防接種はペット保険適用になる?
ペット保険の補償内容によりますが、基本的にペット保険は病気やケガに対して補償されるので、予防接種に保険が適用できるペット保険は現状ほとんどないと言えます。
定期的に予防接種を受けることで、基本保険料が安くなるといったプランは今後出てくるかもしれません。
ワクチン接種で予防できる感染症
種類 | |
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2種混合ワクチン | 犬ジステンパー 犬パルボウイルス |
3種混合ワクチン | 犬ジステンパー 犬伝染性肝炎 犬アデノウイルス2型 |
4種混合ワクチン | 犬ジステンパー 犬伝染性肝炎 犬アデノウイルス2型 犬パラインフルエンザ |
5種混合ワクチン | 犬ジステンパー 犬伝染性肝炎 犬アデノウイルス2型 犬パルボウイルス 犬パラインフルエンザ |
6種混合ワクチン | 犬ジステンパー 犬伝染性肝炎 犬アデノウイルス2型 犬パルボウイルス 犬パラインフルエンザ 犬コロナウイルス |
7種混合ワクチン | 犬ジステンパー 犬伝染性肝炎 犬アデノウイルス2型 犬パルボウイルス 犬パラインフルエンザ 犬レプトスピラ(イクテモヘラジー) 犬レプトスピラ(カニクーラ) |
8種混合ワクチン | 犬ジステンパー 犬伝染性肝炎 犬アデノウイルス2型 犬パルボウイルス 犬パラインフルエンザ 犬コロナウイルス 犬レプトスピラ(イクテモヘラジー) 犬レプトスピラ(カニクーラ) |
9種混合ワクチン | 犬ジステンパー 犬伝染性肝炎 犬アデノウイルス2型 犬パルボウイルス 犬パラインフルエンザ 犬コロナウイルス 犬レプトスピラ(イクテモヘラジー) 犬レプトスピラ(カニクーラ) 犬レプトスピラ(ヘブドマディス) |
10種混合ワクチン | 犬ジステンパー 犬伝染性肝炎 犬アデノウイルス2型 犬パルボウイルス 犬パラインフルエンザ 犬コロナウイルス 犬レプトスピラ(イクテモヘラジー) 犬レプトスピラ(カニクーラ) 犬レプトスピラ(ヘブドマディス) 犬レプトスピラ(グリッポチフォーサ) |
犬ジステンパー
犬ジステンパーは犬ジステンバーウイルス(CDV)によって引き起こされる感染症です。日本を含む全世界で確認されています。致死率90%という恐ろしい病気で、ニホンオオカミの絶滅の原因といわれています。
犬ジステンパーは2~10種いずれの混合ワクチンにも含まれています。
犬伝染性肝炎(A1)
犬伝染性肝炎は、犬アデノウイルス1型によって引き起こされる感染症です。子犬が感染すると重症化しやすく致死率も高いとされます。下痢や嘔吐、発熱の他、重傷になると肝臓や配への炎症があらわれます。
犬伝染性肝炎は2種を除く混合ワクチンに含まれています。
犬アデノウイルス2型(犬伝染性喉頭気管炎)
犬アデノウイルス2型(犬伝染性喉頭気管炎)は感染力が非常に強く、犬アデノウイルス2型や犬パラインフルエンザウイルス、犬ヘルペスウイルス、またこれらの病原体の混合感染が原因で発症し、重症化すると気管支肺炎になることもあります。
犬アデノウイルス2型(犬伝染性喉頭気管炎)は2種を除く混合ワクチンに含まれています。
犬パルボウイルス
犬パルボウイルスは自然界に存在する最も小さいウイルスのひとつで、犬同士の接触や母子感染などで感染します。重症化することは少なく自然回復することが多いとされていますが、子犬では免疫力の低下により亡くなってしまうこともあります。
犬パルボウイルスは3・4種を除く混合ワクチンに含まれています。
犬パラインフルエンザ
犬パラインフルエンザ(CPIV)は、犬風邪とも言われる人の風邪に似た症状があらわれる感染症で、咳やくしゃみなどの呼吸器症状を引き起こします。子犬では重症化する場合があります。
犬パラインフルエンザ(CPIV)は2・3種を除く混合ワクチンに含まれています。
犬コロナウイルス
犬コロナウイルスは主に消化器官に感染し下痢や嘔吐などの症状を引き起こす感染症です。新型コロナウイルスとは別もので、成犬は無症状なことも多いものの、他のウイルスとの混合感染が多く、子犬で顕著な症状が出やすいとされています。
犬コロナウイルスは6・8・9・10混合ワクチンに含まれています。
犬レプトスピラ
犬レプトスピラは、ネズミが媒介するレプトスピラという細菌が原因で発症する感染症で、菌は保菌動物の排泄物を経由して川や土壌にも生息します。感染すると肝臓や腎臓で菌が増殖し炎症を引き起こします。
レプトスピラは菌の種類によってワクチン成分が異なるため、4種類のワクチンがあります。10種は4つすべてがカバーできますが、上2種類のみであれば8種で問題ありません。
- イクテモヘラジー(7・8・9・10種)
- カニクーラ(8・9・10種)
- ヘブドマディス(9・10種)
- グリッポチフォーサ(10種)
狂犬病 ※接種義務
狂犬病ワクチンは狂犬病予防法により年1回の接種が義務付けられているため、愛犬には必ず動物病院で予防接種を受けさせなければなりません。
狂犬病ワクチンの接種も年1回なので、混合ワクチンと同じタイミングで受けられると楽なのですが、残念ながら狂犬病ワクチンは、混合ワクチンを接種してから20日(3週間)以上間隔をあける必要があり、このため混合ワクチンと狂犬病ワクチンを一度にまとめて接種することはできません。
予防接種前後の過ごし方と注意点
接種前後は安静に過ごす
ワクチンの接種直後は、ワクチンに対するアレルギーや副反応が見られる場合があるため、接種前後1日は激しい運動や散歩は避け、屋内でゆっくり安静に過ごしましょう。
接種前2~3日はシャンプーやトリミングも避け、接種後は1週間ほどあけると安心です。
まとめ
- 犬の予防接種は年1回が推奨
- 狂犬病ワクチンは年1回が義務
- 混合ワクチンは6・8種が一般的
- 接種前後は安静に過ごす