
このように、愛犬の「誤食」についてお悩みの飼い主さんは少なくありません。
誤食は命に関わる重大な事故へとつながる可能性があり、とくに若い犬や好奇心旺盛な犬種では誤食のリスクが高く、十分な対策が必要です。
本記事では、犬の誤食の原因やよくあるケース、誤食をしやすい犬種の傾向、対策について解説していきます。
犬が誤食してしまう原因とは?
本能や好奇心からくる行動
犬は本来、においや味に対して非常に敏感な動物です。とくに嗅覚は人間の数千倍以上ともいわれており、対策をしていないと床に落ちている食べ物やおもちゃなどにすぐ反応してしまいます。
とくに若い犬や好奇心旺盛な犬種ほど何でも口にして確かめる傾向が強く、結果として誤食につながってしまうことがあります。
留守番中のストレスや退屈
犬はひとりでの留守番中にストレスや退屈を感じることがあります。ストレス解消や退屈しのぎのために部屋の家具やクッションを噛んだり、キッチンのごみ箱をあさってしまうことも。
食べ物と勘違い
食べ物と勘違いして口に入れてしまうこともあります。例えば色鮮やかな子どものおもちゃや、お菓子の香りが移ったビニール包装、また落ちた薬などは、犬にとって魅力的な存在です。
こうした勘違いによる誤食は、対策をしなければ頻繁に発生してしまいます。
誤食はどの年齢、どの犬種がしやすい?
アニコム損害保険株式会社が発行した「家庭どうぶつ白書2024」によると、犬種別の誤飲(誤食)による保険金請求割合ランキングでは
1位:シベリアン・ハスキー
2位:ビーグル
3位:ビションフリーゼ
4位:ミニチュアピンシャー
5位:フレンチブルドッグ
でした。
これらの犬種は好奇心旺盛で探求心が強く、活動的でエネルギッシュであることが共通点として挙げられます。また、生後数か月~1歳未満の子犬は何にでも興味を持ちやすく、「これは何だろう?」「食べてみよう!」といった好奇心で口にしてしまうことが非常に多くあります。
誤食は年齢や犬種、生活環境を問わずに起こり得ることですが、とくにこれらの犬種の飼い主さんは注意し、対策を練りましょう。
犬が誤食しやすい物と危険性について
犬の誤食は思わぬ物が原因になることが多く、飼い主が「まさかこれを?」と驚くようなケースも少なくありません。身近な日用品や食品が、犬にとっては危険な誘惑になり得ます。
生活環境を今一度見直し、対策をするきっかけにしましょう。
ここでは、動物病院でも実際に報告されている「犬がとくに誤食しやすい物」と、犬がなぜそれに興味を持つのか、またその危険性についてご紹介します。
■靴下・下着・ハンカチ
→理由:飼い主のにおいで安心感がある
→危険性:飲み込むと腸閉塞を起こしやすく、開腹手術の場合も
■おもちゃ・ゴムボール・ぬいぐるみ
→理由:噛みごたえがよく、遊び中に破壊して誤食
→危険性:喉や腸で詰まると嘔吐や便秘を起こす
■ビニール袋・食品トレー・ラップ・アルミホイル
→理由:食べ物のにおい残りやカサカサ音が刺激になる
→危険性:消化できず腸閉塞に。ラップはレントゲンに写らず発見が遅れることも
■タバコ・電子タバコ
→理由:独特なにおいと見た目への好奇心
→危険性:ニコチン中毒を起こし、震え、嘔吐、重症例では死亡の危険あり
■医薬品
→理由:甘味料・香料のにおいでおやつと勘違い
→危険性:吐き気、けいれん、昏睡、肝機能障害など深刻な中毒を起こす
■キシリトール入りガム・キャンディ・歯磨き粉
→理由:甘い香りが魅力的。小包装も口にしやすい
→危険性:少量でも低血糖・肝障害を引き起こし、命に関わる
■チョコレート・レーズン・マカダミアナッツ
→理由:におい・味が強く嗜好性が高い
→危険性:テオブロミン中毒、腎障害、痙攣などを引き起こす
■焼き鳥の串・骨つき肉(加熱した骨)
→理由:香ばしい香りに惹かれる。食卓から盗みやすい
→危険性:鋭利な骨片により胃や腸を傷つけ、出血することも
■芳香剤・消臭剤・除湿剤(シリカゲル)
→理由:フルーツや石けん系の香り、軽くて音がする包装
→危険性:化学薬品による中毒、嘔吐、ふらつき、痙攣などを引き起こす
■ティッシュペーパー・ウェットティッシュ
→理由:破れる感触が楽しく、誤って飲み込みやすい
→危険性:胃腸に詰まり、嘔吐・便秘などの症状が出る
■鉛筆・クレヨン・消しゴム・文具類
→理由:軽くて転がる動きが面白い
→危険性:有害な顔料・成分による中毒や、破片による腸閉塞のリスク
■輪ゴム・ヘアゴム・シュシュ
→理由:弾む・噛める・巻き付く性質が狩猟本能を刺激
→危険性:飲み込むと腸に絡まりやすく、腸捻転の原因にも
■子ども用のおもちゃ・ブロック・フィギュア
→理由:においやサイズ感、音が興味をそそる
→危険性:小さな部品は誤食による窒息や腸閉塞を招く
■スマホケース・イヤホン・充電ケーブル
→理由:飼い主がよく触る/ヒモ状なため興味を持ちやすい
→危険性:噛みちぎって飲み込み、腸閉塞や感電の危険性も
■靴・スリッパ・靴ひも
→理由:外のにおいや汗のにおいが混ざって魅力的
→危険性:靴底の薬剤や汚れも危険。部品を飲み込むと腸閉塞に
■果物の種(桃、梅、ぶどうなど)
→理由:甘い果実のにおいが魅力的
→危険性:中毒症状、腸に詰まる、誤嚥による窒息などのリスク
万が一の誤食時の対応
誤食が発覚した場合、自己判断で催吐させたり、無理に口を開かせようとしたりするのは危険です。誤食した物によっては、逆に状況を悪化させてしまうこともあります。
まずは冷静に、以下のような行動をとってください。
- 何をどれだけ、いつ食べたかを確認
- 犬の様子(元気があるか、嘔吐、下痢、ぐったりしていないか)を観察
- できるだけ早く、動物病院に連絡・受診
とくに薬品や毒性のある食品を誤食した場合、迅速な対応が命を左右します。
飼い主ができる誤食対策
犬の誤食は、飼い主の対策次第でかなりの確率で防ぐことができます。普段の生活環境で対策をして誤食のリスクを減らすことで、愛犬との毎日をより安心で快適なものにしていきましょう。
環境管理を徹底する
犬の誤食を防ぐ最も基本的で効果的な対策は、誤食の“きっかけ”を環境から排除することです。
- 床に物を置かない
- ゴミ箱は必ず蓋付きにする
- 薬や食品は高所に収納する
など、犬が誤って口にできる物を視界・嗅覚の範囲から取り除きましょう。
また、食事や調理中の落下物にも注意し、こまめな掃除や整理整頓を習慣づけましょう。犬の目線で部屋を見渡すと、意外な危険が見つかることもあります。
留守番時にはケージやサークルを活用
誤食事故の多くは、飼い主が目を離している留守番中に発生しています。犬を室内に放したまま外出するのではなく、安心・安全なスペースを用意してあげることが大切です。
ケージやサークルを活用し、中に安心できるおもちゃを入れておくと、ストレス軽減にもつながります。
コマンド訓練を取り入れる
「ダメ」「出して」「待て」などの基本的なコマンドを日頃から教えておくことで、誤食のリスクを大幅に減らすことができます。
散歩中の拾い食いをやめさせたいときや、口に含んだ異物を吐き出させたいときにも、これらの指示がとても有効に働きます。とくに「出して」や「ちょうだい」の訓練は、いざというときの命綱になります。
無理やり取り上げると犬が飲み込んでしまうこともあるため、日常生活の中で繰り返しトレーニングを積んでおくことが安心につながります。
健康管理とストレスケアも重要
誤食はただのいたずらや興味本位だけでなく、ストレスや体調不良のサインとして行われることもあります。
日々の生活の中で愛犬の食欲、便の状態、行動の変化などを観察し、少しでも異常があれば早めに獣医師に相談しましょう。また、十分な運動やコミュニケーション、知的刺激(知育おもちゃなど)を与えることで心身の健康が保たれ、問題行動の予防にもなります。
まとめ
犬の誤食は、ちょっとした不注意や環境のスキから簡単に起こってしまいます。大切なのは「うちの子は大丈夫」と思わず、日ごろから対策を講じておくことです。犬の目線で部屋を見直し、危険な物を排除することで、多くの事故は未然に防げます。
愛犬の健康と安全を守るためにも、ぜひ今日から身の回りの環境を見直し、誤食予防を習慣にしていきましょう。毎日の小さな配慮が、大きな安心につながります。