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今回は、チョコレートの中でもとくに危険なチョコレートについて、犬の体重ごとの致死量や症状についてご紹介します。
犬のチョコレート中毒(chocolate addict)とは?
チョコレートのテオブロミンとカフェイン
チョコレートに含まれるテオブロミンとカフェインは犬にとって危険な成分です。これらの成分はチョコレートの原料であるカカオに含まれている苦味成分で、メチルキサンチン類に属するアルカロイドの一種です。
犬にとっては危険な成分
テオブロミンは利尿作用や血流改善、冷え性改善、リラックス効果などがあります。ヨーロッパのホテルなどでは就寝前のリラックス効果・ストレス解消のために少量のダークチョコレートが置かれているようです。
このようにテオブロミンは人にとってはさまざまな有益な効果があり、人はテオブロミンをすばやく分解・排出することができます。
しかし、犬は人よりもテオブロミンに強い反応を示すこと、またテオブロミンを分解・排出する機能が低いため体内に長時間とどまって蓄積されていくことにより、チョコレート中毒を引き起こします。
一番危険なのはどんなチョコレート?
下表は、さまざまなチョコレートに含まれるテオブロミンの含有量です。板チョコ1枚(約50g)で比較します。
チョコレートの種類 | カカオ率 | テオブロミン量 |
---|---|---|
※表示なしはメーカーからの聞き取り調査によるもの | ||
チョコレート効果 | 99% | 550mg |
チョコレート効果 | 86% | 495mg |
森永ミルクチョコレート | 表示なし(41%) | 135mg |
明治ミルクチョコレート | 表示なし(36%) | 125mg |
ロッテガーナミルク | 表示なし(33%) | 110mg |
ホワイトチョコレート | 0% | 0mg |
※引用元:独立行政法人国民生活センター|高カカオをうたったチョコレート
チョコレートに含まれるカカオが多いほど、テオブロミンの量も多くなります。
そのため、犬が食べると一番危険なチョコレートは高カカオチョコレートです。
高カカオチョコレートはミルクチョコレートよりもテオブロミンの含有量が多いため、少量の摂取でも非常に危険です。
カカオの脂肪分のみが使われているホワイトチョコレートはテオブロミンがほとんど含まれていないため、犬がホワイトチョコレートを食べても中毒の心配はありません。しかし、だからといって与えるのはリスクが高く、また脂肪分が多いため下痢などの消化不良が起こる可能性があります。
どのくらい食べると命に関わる?
致死量はテオブロミン100~200mg
引用元:The ASPCA Animal Poison Control Center (APCC)|Chocolate intoxication
ASPCA APCCのChocolate intoxicationという文献によると、症状の程度や致死量は下記の通りです。
- 体重1kgあたりテオブロミン20mgで軽度の症状
- 体重1kgあたりテオブロミン40~50mgで重度の症状
- 体重1kgあたりテオブロミン60mgで発作が起こる
- 体重1kgあたりテオブロミン100~200mgで致死量
各種のチョコレートに含まれるテオブロミン量と、チョコレート中毒の症状があらわれるテオブロミン量を比較すると、チョコレートひとかけらを食べただけでは致命的な症状があらわれる可能性は低いといえます。
しかし人のアルコール耐性と同じように、お酒をたくさん飲んでも平気な人や、一口飲んだだけでもフラフラになる人もいます。犬も個体差によってテオブロミンへの耐性が異なるので、致死量であるテオブロミン100~200mgより少ない量でも重篤な症状があらわれる可能性があります。「チョコレートひとかけらだけだから大丈夫」と過信しないことが大切です。
胎児にも影響があらわれる可能性
メチルキサンチンは胎盤を通過して母乳に移行するため、妊娠・授乳中の母犬がチョコレート中毒になると胎児にも影響があらわれる可能性があります。
チョコレート中毒の症状
初期症状
チョコレート中毒の症状は食べた直後ではなく、食べて2時間~半日ほど経ってからあらわれます。
- 下痢や嘔吐などの消化器症状
- 体温が上がる
- 落ち着きがない
- トイレの失敗
重篤な症状
症状が進行すると重篤な症状があらわれ、最悪の場合は命に関わります。
- 呼吸が早くなる
- 痙攣
- 不整脈
- 昏睡
チョコレートを食べたときの対処法
犬の様子をメモに取る
犬がチョコレートを食べたことが分かったら、すぐにその様子をメモに取りましょう。犬の様子やその場の状況を獣医師さんに伝えることで、治療の情報源として活用できます。
- 犬の様子を確認(嘔吐や下痢、痙攣など)
- 犬の様子を写真や動画に撮る
- チョコレートの包み紙(成分などを確認できる)
- 食べたチョコレートの量や時間
チョコレートを食べたあとの犬の様子がいつもと変わらなくても、症状が数時間後にあらわれる可能性が高いです。すぐに動物病院へ連れていきましょう。
家での応急処置は危険!すぐに動物病院へ
犬がチョコレートを食べたときに食塩などを使って吐かせようとする方も多くいますが、飼い主さんの手で吐かせるなどの応急処置をすると、誤嚥(吐いたものが肺に入る)や胃腸障害などが起きるリスクが高くなります。
無理に吐かせようとせず、すぐに動物病院へ連れて行きましょう。
チョコレート中毒を防ぐ対策
犬の手が届く範囲にチョコレートを置かないことが対策となります。さらに、匂いなどを少しでも感じさせないようにタッパーなどフタが閉まる容器に入れて、扉つきの棚の中に入れることがおすすめです。
また、とくに贈答用の高級チョコレートは高カカオであることが多いです。アメリカでは、「スーパーで売っている安いチョコレートならセーフだが、高級ベルギーチョコレートは犬に見つかってはならない」といわれているそうです。
チョコレートだけでなく、カカオパウダーが含まれたお菓子やアイスクリームなど犬に見つからないように保管しましょう。
とくに注意が必要なのは冬
とくにクリスマスやバレンタインデー、ハロウィンなどのイベントが多い冬の季節にチョコレート中毒の発症が多くみられます。この時期はチョコレートの購入が増えたり、家でチョコレートを使ったお菓子やケーキを作る機会が増えることが理由と考えられます。
チョコレートを舐めるだけでも中毒症状があらわれる可能性があるため、お菓子やケーキ作りで使用した調理器具などは放置せずすぐに洗いましょう。またチョコレートの包み紙などは放置せず、ポリ袋に包んで捨てることがおすすめです。
まとめ
- テオブロミンは人にとっては健康効果があるが、犬にとっては危険な成分
- 高カカオチョコレートはカカオ量が多いため、テオブロミン量も多い
- チョコレートの量に限らず、食べたことが分かったらすぐに動物病院へ連れていく
- 冬の時期はとくに注意が必要
チョコレートの中でも、とくに危険なチョコレートはあるのでしょうか?