ドッグフードの原材料:ごま油(sesame oil)
ごま油はごまの種子を絞った油で、香ばしい香りが特徴的です。料理において香り付けをしたり味に深みをもたせるだけでなく、植物油の中でもオメガ6脂肪酸をはじめ、ビタミンEやセサミンといった抗酸化成分を豊富に含んでいます。これらの成分は、人間と同様に犬にとっても健康に役立つといわれています。
ごま油には犬の中毒となるような成分は含まれていないため、犬が食べても大丈夫です!
適切に取り入れることで健康効果が期待され、原材料としてごま油を使用するドッグフードも多く販売されています。
この記事ではドッグフードにおけるごま油の役割や、その栄養価、おすすめの与え方や注意点についてご紹介します。
ごま油の栄養素と健康効果
ごま油100gあたりの栄養素 | |||
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エネルギー | 890 | kcal | |
タンパク質 | 0 | g | |
脂質 | 100 | g | |
カルシウム | 1 | mg |
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ビタミンE | αトコフェロール | 0.4 | mg |
βトコフェロール | Tr | mg |
|
γトコフェロール | 44.0 | mg |
|
δトコフェロール | 0.7 | mg |
|
オメガ6脂肪酸 | リノール酸 | 41000 | mg |
※出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
※Tr:成分は含まれているが、最小記載量に達していないことを示す
リノール酸
ごま油には、オメガ6脂肪酸であるリノール酸が豊富に含まれています。オメガ6脂肪酸は犬の必須脂肪酸ですが体内で合成することができないため、食事から摂取しなければなりません。
リノール酸は血中コレステロールや中性脂肪の上昇の抑制、免疫システムの強化などの効果があります。
また皮膚の健康維持にも効果的で、皮膚のバリア機能の強化、皮膚からの水分喪失の予防、被毛に潤いとツヤを与える、乾燥や痒みの予防などが期待できます。とくに皮膚のアレルギー体質を持っている犬や皮膚が乾燥しやすい犬におすすめです。
ビタミンE
ビタミンEは4種のトコフェロール(α・β・γ・δ)と4種のトコトリエノール(α・β・γ・δ)の計8種の化合物の総称をいい、主に植物油やナッツ類に多く含みます。
食品はαトコフェロールが多く含まれていますが、ごま油はγトコフェロールが多く含むという特徴があります。
ビタミンEは強力な抗酸化作用を持ち、活性酵素を除去し、細胞を酸化ストレスから守る働きがあります。それにより免疫力向上や老化防止、皮膚の乾燥予防、被毛のツヤを保つことにも効果があります。また動脈硬化や血栓の予防にも期待できます。
ごま特有成分ゴマグリナンの健康効果
強い抗酸化作用のゴマリグナン
ごま油にはセサミンやセサミノール、セサモリンなどさまざまなポリフェノールが含まれていますが、その総称をゴマグリナンといいます。
抗酸化作用による動脈硬化の予防、コレステロール値や血圧血の低下、骨関節炎の改善、トコフェロール(ビタミンE)濃度の上昇など、さまざまな健康効果が報告されています。
肝臓や腎臓の病理的変化への保護効果
(一部抜粋)生化学分析では、CYPグループでアルブミン、尿素、クレアチニン、GPT、GOT、および脂質プロファイルの増加が示されました。SOとCYPの同時投与により、このような生化学的変化は正常化しました。(中略)SO の同時投与により CYP が回復し、グルタチオン S トランスフェラーゼ (GST)、カタラーゼ、スーパーオキシドディスムターゼの発現が低下しました。さらに、SO と CYP の同時投与により CYP の働きが打ち消され、腎インターロイキン (IL-1 および IL-6)、腫瘍壊死因子アルファ (TNF-α)、ヘムオキシゲナーゼ-1 (HO-1)、アニゴテンシノーゲン (AGT)、AGT 受容体 (AT1)、肝臓のグルコースおよび脂肪酸代謝の遺伝子の発現が変化しました。CYP は腎臓および肝臓の組織学的に退行性変化を引き起こしましたが、これは SO によって改善されました。結論として、SO は肝臓および腎臓において CYP によって誘発される変化および病理学的変化に対して、遺伝子レベルおよび組織学的レベルで保護効果があります。
上記は、ラットの肝臓と腎臓でシペルメトリン(CYP)によって誘発された遺伝子変化に対するゴマ油(SO)の保護効果についての研究です。シペルメトリン(CYP)とは農業や家庭用で使われる合成殺虫剤のことです。
合成殺虫剤が投与されたラットのグループはアルブミンや尿素、クレアチニン、GPT、GOT、および脂質プロファイルの増加がみられましたが、合成殺虫剤とごま油を同時に投与されたグループでは、肝臓および腎臓において誘発された病理学的変化に対して、遺伝子レベルおよび組織学的レベルで保護効果があることが報告されました。
ごま油のおすすめの与え方
ドッグフードへのトッピングで食欲促進
ごま油は少量でも香りが強いことが特徴です。ドッグフードへのトッピングや手作りごはんに取り入れることで、食欲促進が期待できます。
とくにドッグフードへの食いつきが悪い犬や、食欲が低下しがちな高齢犬にごま油を与えることで嗜好性が上がったり食欲が刺激されます。
加熱せず常温のまま与える
ごま油は熱に弱く、加熱するとその栄養成分や栄養効果が損なわれてしまうため、加熱せずに常温のままで与えることがおすすめです。
ドッグフードにごま油をトッピングする場合は上から少量を垂らしたり、手作りごはんにごま油を取り入れる場合は最後の仕上げとして少量を回しかけると良いでしょう。
犬のごま油を与えるときの注意点
ごま油は健康に良い効果をもたらす一方で、適量を守ることが重要となります。過剰摂取や日常摂取は逆に健康に悪影響となる恐れがあるため、以下のことを注意しましょう。
カロリーが高い
ごま油はカロリーが高く、過剰に摂取すると肥満につながる可能性があります。
ドッグフードへのトッピングは、頻度は週1~2日に1回程度、与える量は1日の総エネルギー摂取量の10%となります。
バランスを考慮する
ごま油にはオメガ6脂肪酸が多く含まれていますが、オメガ3脂肪酸とのバランスが重要です。オメガ6脂肪酸とオメガ3脂肪酸の摂取バランスが崩れると炎症を引き起こしやすくなるリスクがあるため、フィッシュオイルた亜麻仁油などのオメガ3脂肪酸も適切に摂取することが望ましいです。
アレルギーに注意する
ごま油は主原料がごまです。
ごまはすりごまや練りごまよりもたんぱく質の含有量が少ないためアレルギーの発症リスクは低いですが、可能性はゼロではありません。初めてごま油を与える場合は少量から始め、食べたあとは犬の体調や皮膚の様子を確認してください。
もし嘔吐や下痢、痒みなどのアレルギー症状があらわれたらすぐにごま油の摂取を中止し、獣医師に相談しましょう。
リノール酸の過剰摂取はアラキドン酸を生成する
リノール酸は良質な必須脂肪酸ですが、摂取しすぎると体内でアラキドン酸が過剰に生成されます。アラキドン酸は皮膚や被毛の健康維持に効果のある栄養素ですが、過剰なアラキドン酸はアトピーやアレルギー、ガンを誘発する恐れがあるといわれています。
手作りごはんでごま油を取り入れる場合は、量や頻度に注意しましょう。
まとめ
- ごま油は必須脂肪酸が豊富に含まれている
- ごま油の摂取は、肝臓や腎臓の病理的変化の保護効果が期待できる
- 過剰摂取は肥満やアトピーなどを誘発する恐れがある
ご家庭でもドッグフードへのトッピングや手作りごはんにも取り入れてみましょう。