ヤギミルク(goat milk)とは
犬に対して与えるミルクとして、近年では牛乳ではなくヤギミルクが注目されています。その名の通りヤギから採取されたミルクで、ゴートミルクともよばれています。海外では古くから美容として活用されており、世界三大美女の一人であるクレオパトラもお風呂にヤギミルクを入れて美肌を守っていたといわれています。
愛犬が牛乳を飲むとお腹を壊す…アレルギーが出る…とお悩みの飼い主さんも多いのではないでしょうか?
実はヤギミルクは牛乳よりも栄養素が豊富で、アレルギー反応が出にくいというメリットがあるんです!
この記事ではヤギミルクを与えるメリット、おすすめの与え方や注意点について解説します。
ヤギミルクの栄養素
下表はヤギミルクと牛乳100gあたりの栄養素です。
ヤギミルク | 牛乳 | ||
---|---|---|---|
エネルギー | 61 | 57 | kcal |
タンパク質 | 3.3 | 3.1 | g |
脂質 | 3.8 | 3.6 | g |
カルシウム | 110 | 120 | mg |
鉄分 | 0 | 0.1 | mg |
レチノール | 38 | 36 | μg |
葉酸 | 5 | 1 | μg |
※出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
牛乳との比較!ヤギミルクを飲むメリット
消化性・吸収性が高い
ヤギミルクの最大の特徴として、脂肪球が非常に小さいことが挙げられます。
脂肪球とは、乳製品に含まれる脂肪が小さな球状になった粒子のことです。脂肪球の大きさはミルクの種類によって異なり、牛乳の脂肪球は比較的大きく、ヤギミルクの脂肪球の大きさは牛乳の約1/6です。
ヤギミルクと牛乳の栄養素量を比較すると数値的にはそれほど大差はありませんが、ヤギミルクは脂肪球が小さい=表面積が大きいので、消化性・吸収性が高い点がメリットであり、効率よく栄養素やエネルギーを摂取することができます。
下痢をしにくい
犬は牛乳に含まれるラクトース(乳糖)を分解する消化酵素が少ないため、牛乳を飲むとお腹を壊したり下痢をする子が多いとされています。この状態をラクトース不耐性といいます。
一方でヤギミルクは牛乳に比べてラクトースが非常に少ないため消化しやすく、下痢を起こしにくいため安心して与えることができます。
アレルギーのリスクが低い
牛乳アレルギーを発症する主な成分は、タンパク質の一種である「αs1カゼイン」です。αs1カゼインは牛乳に多く含まれますが、ヤギミルクにはほとんど含まれていません。ヤギミルクの主なタンパク質はβカゼインであり、これは人の母乳にも多く含まれています。
そのため、ヤギミルクはアレルギーの発症を起こしにくいといわれています。
参考:ヤギ乳はヒトにやさしい-ヤギ乳と牛乳の比較-|北海道農業企業化研究所
アミノ酸がバランスよく豊富
ヤギミルクは、牛乳と比べると必須アミノ酸がバランスよく豊富に含まれています。必須アミノ酸とは体内で合成することができないアミノ酸で、筋肉の成長や免疫機能、エネルギー生成など総合的な健康維持のために必要不可欠なものです。
ドッグフードへの食いつきが悪いときや食欲不振のときには必須アミノ酸が不足してしまいがちですが、少量でも消化性・吸収性が高いというヤギミルクのメリットを生かすことができます。
タウリンが牛乳の約20倍
ヤギミルクに含まれるタウリン量は、牛乳の約20倍です。
- ヤギミルクのタウリン量:113μmole/100ml
- 牛乳のタウリン量:2~5μmole/100ml
中鎖脂肪酸が牛乳の約2倍
ヤギミルクに含まれる中鎖脂肪酸量は、牛乳の約2倍です。
- ヤギミルクの中鎖脂肪酸量:570mg/100g
- 牛乳の中鎖脂肪酸量:270mg/100g
中鎖脂肪酸(MCT)は消化吸収が速く、即効性のあるエネルギー源として犬に役立つ脂肪酸です。MCTは肝臓で素早く代謝されるため体脂肪として蓄積されにくく、とくに運動量の多い犬やシニア犬のエネルギー補給に適しています。また、MCTは脳のエネルギー供給もサポートし、認知機能の改善にも役立つとされています。
天然成分プロバイオティクスが含まれている
ヤギミルクには天然のプロバイオティクスが含まれています。プロバイオティクスは腸内の善玉菌を増やして腸内環境を整える働きを持つ微生物です。これにより消化を助け、下痢や便秘の予防、免疫力の向上に効果があります。
ヤギミルクのおすすめの与え方
ヤギミルクはドッグフードの原材料として使用されることは少ないですが、犬用ヤギミルクやヤギミルクパウダー、ヤギミルクボーロなど栄養補給やおやつなどの商品が多く販売されています。
ヤギミルクはご褒美や栄養補給の一環として与えるのがおすすめです。以下は効果的な与え方の例です。
食欲不振のとき
ヤギミルクは適度な甘みと香りがあるため、食欲が落ちているときなどには栄養補給や水分摂取のサポートとして役立ちます。とくに犬が病気やストレス、老化などで食欲が落ちているときに活用してみましょう。
子犬やシニア犬に
ヤギミルクは子犬の離乳期やシニア犬の健康維持に最適です。とくに離乳期の子犬には、高い栄養価と消化吸収により健康的な成長をサポートします。
また、シニア犬にとっても消化に優しく、栄養を効率的に摂取できる点でメリットがあります。
ご褒美として
ヤギミルクは犬へのご褒美としてもおすすめで、適度な甘みがあるため犬も喜びやすい飲み物です。ご褒美として与えるときには少量をおやつ感覚で与えると良いでしょう。夏場にはヤギミルクを凍らせてアイス状にしたり、涼を取るための特別なご褒美としても楽しませられます。
ヤギミルクを与えるときの注意点
過剰摂取による肥満に注意
ヤギミルクは栄養価が高い一方で、過剰に与えるとカロリー過多となり、肥満の原因になる可能性があります。適量を守り、食事の一部としてバランスよく与えることが大切です。
犬にヤギミルクを与えるのは、頻度は週1回程度、1日の総エネルギー量の10%が適切となります。
殺菌済みのヤギミルクを与える
市販のヤギミルクには、加熱処理されたもの(殺菌済み)とされていないもの(生乳)の2種類があります。生乳は栄養価が高い一方で、細菌感染のリスクがあるため、とくに免疫力が低下している犬には注意が必要です。
一般的には、殺菌済みのヤギミルクの方が安全とされています。
初めて与えるときは少量から
ヤギミルクには牛乳に比べてラクトースが少ないとはいえ、完全にラクトースが含まれていないわけではありません。すべての犬がヤギミルクに対して問題を起こさないわけではないため、初めて与えるときには少量から試すことがおすすめです。飲んだあとは犬の腹部の膨張感や下痢などの症状が出ないかを注意深く観察しましょう。
食物アレルギーのリスク
ヤギミルクは牛乳と比べてアレルギーの発症を起こしにくいといわれていますが、可能性はゼロではありません。嘔吐や下痢、皮膚の痒み、発疹などのアレルギー症状があらわれたらすぐに与えるのを中止し、獣医師に相談しましょう。
まとめ
- ヤギミルクは牛乳よりも脂肪球が小さく、消化吸収を効率よく行う
- ヤギミルクはラクトースが少ないため下痢になりにくい
- アミノ酸が豊富に含まれている
- ご褒美やおやつ、栄養補給の一環として与えるのがおすすめ