犬のジフテリア感染症。人から犬へ感染する?特徴や感染経路、予防について解説

犬のジフテリア感染症。人から犬へ感染する?特徴や感染経路、予防について解説
佐藤さん
ジフテリア感染症といえば人間に見られる感染症として広く知られていますが、近年は動物における感染例も注目されています。
犬田さん
犬も例外ではなく、稀ながらジフテリア菌やその近縁菌による感染症が報告されています。

今回は犬のジフテリア感染症の症状や予防、感染経路について解説します。

ジフテリア感染症(diphtheria infection)とは

ジフテリア感染症はジフテリアという細菌による感染症で、主に毒素産生型の菌株が問題になります。この毒素は細胞を破壊し、呼吸器や皮膚、さらには心臓や神経系に重大な障害を引き起こすことがあります。

ジフテリア感染症は人間によくみられる感染症ですが、犬にも感染する可能性があります。ジフテリア菌と近縁菌の一部(とくにコリネバクテリウム・ウルセランス菌)は人獣共通感染症として知られているため、広い意味ではジフテリア感染症も人獣共通感染症に該当すると言う場合もあります。

犬のジフテリア感染症の原因菌

犬のジフテリア感染症の原因菌は基本的にジフテリア菌ですが、ジフテリア菌と近縁菌が原因菌の可能性もあります。下記で挙げる細菌は毒素を産生する場合があり、犬における病態を悪化させる原因となります。

ジフテリア菌

ジフテリア感染症を引き起こす細菌をジフテリア菌といいます。主に人間間で感染する細菌であり、飛沫感染や接触感染が主な経路です。

犬に感染することは非常に稀ですが、感染した場合は喉や鼻の粘膜に影響を及ぼす可能性があります。一部の菌株はジフテリア毒素を産生し、重篤な症状を引き起こします

コリネバクテリウム・ウルセランス

犬で報告されることが多い原因菌の一つで人に感染することが確認されており、人獣共通感染症に該当します。ジフテリア毒素を産生することがあるためジフテリア様症状を引き起こす可能性があり、動物から人に感染することもあります。

コリネバクテリウム・シュードツベルクローシス

コリネバクテリウム・シュードツベルクローシス菌は主に牛やヤギなどの家畜で感染が報告される細菌で、犬にも稀に感染が確認されています。ジフテリア毒素を産生する場合があり、感染部位に膿瘍や潰瘍を引き起こすことがあります。

犬のジフテリア感染症の感染経路

犬がジフテリア感染症にかかる主な感染経路は下記です。

感染した動物との接触

ジフテリア感染症の主な感染経路は、感染した動物との接触です。犬が感染の疑いがある他の動物(他の犬や猫、野生動物、家畜など)と接触すると、鼻や口、皮膚を介して細菌が伝播します

人から犬への感染

ジフテリア菌や近縁菌は人獣共通感染症の一種として、人から犬に感染する可能性があります。感染した人が犬を直接触ったり、呼吸器分泌物が犬に接触することで感染するリスクがあります

汚染された環境からの感染

ジフテリア菌や近縁菌は、汚染された水や土壌、物品(食器やおもちゃ)に存在することがあります。犬がそれを舐めたり、食べたり、傷口を接触させたりすることで感染する場合があります。

食品や水を介した感染

汚染された食品や飲み水を摂取することにより感染することがあります。とくに腐敗した食品や不衛生な水源が感染源となる可能性があります

傷口や皮膚を通じた感染

犬がケガをしている場合、傷口から細菌が侵入するリスクが高まります。汚染された環境や他の動物とのケンカによる傷が感染経路となることがあります。

犬のジフテリア感染症の症状

ジフテリア感染症の症状は多岐にわたり、主にジフテリア毒素によって引き起こされます。この毒素は細菌そのものではなく、細菌が感染部位で毒素を産生することで病態を悪化させます。

毒素を産生する菌株は重症化のリスクが高く、毒素を産生しない菌株は軽度の症状で終わることが多い傾向です。

◆呼吸器症状

喉や鼻腔に感染した場合、咳や鼻水、呼吸困難があらわれることがあります。喉頭に白色や灰色の膜が形成される場合があり、呼吸を妨げる可能性があります。

◆皮膚症状

皮膚感染が発生した場合、潰瘍や腫れ、炎症が見られることがあります。

◆全身症状

発熱や元気消失、食欲不振などの症状があわられます。重症化すると毒素が全身に影響を及ぼし、心筋炎や神経症状を引き起こす場合があります。

犬のジフテリア感染症の予防策

犬のジフテリア感染症を予防するためには、以下のポイントに注意しましょう。

衛生環境を整える

  • 寝床や食器、おもちゃなど犬の生活環境を定期的に清潔に保つ
  • 飲み水や食事が腐敗など菌が繁殖しないようにする(とくに夏場は注意)

動物どの接触を避ける

  • 感染が疑われる動物との接触を避ける
  • 散歩中など野生動物との接触を避ける

定期的な健康診断

  • 定期的に動物病院で健康診断を受ける
  • 感染していた場合は早期発見につながる
  • 適度な運動と適切な食事により、細菌に負けない免疫力を付ける

飼い主さん自身も健康管理を徹底する

  • 人が感染源になる可能性もあるため、飼い主さん自身も健康管理を徹底する
  • 他の犬と接触したあとは手洗いを徹底する

まとめ

  • ジフテリア感染症は犬への感染は非常に稀だが、犬にも感染の可能性はある
  • ジフテリアの近縁菌コリネバクテリウム・ウルセランス菌は人獣共通感染症に該当する
  • 感染の疑いがある動物、汚染された食べ物や水との接触を避ける

ABOUTこの記事をかいた人

古川菜々

愛玩動物飼養管理士2級、ペットセラピスト、ペット看護士、愛犬飼育スペシャリスト、ドッグフード勉強会ディレクターとして、ドッグフードに関する情報を提供しています。帝京科学大学アニマルサイエンス学科卒業。文章を通してわんちゃんの魅力を発信し、また多くの飼い主さんの悩みや不安を解決することで、飼い主さんとわんちゃんの幸せのお手伝いになれば嬉しいです。