ドッグフードのタイム。消化・免疫・呼吸器にうれしい効果とは?与える注意点も解説

ドッグフードのタイム。消化・免疫・呼吸器にうれしい効果とは?与える注意点も解説

ドッグフードの原材料:タイム(thyme

タイム(学名:Thymus vulgaris)とはシソ科の多年草で、地中海沿岸を原産とする香り高いハーブです。古代ギリシャやローマ時代から薬用・料理用として広く利用されてきました。

特有の強い香りは、チモールカルバクロールといった精油成分によるもので、防腐・抗菌作用に優れています。乾燥や寒さにも強く、ガーデニング用としても人気があります。

古代ローマではタイムが“勇気の象徴”だった

タイムは古代ギリシャ・ローマでは「勇気や精神」を象徴するハーブとして尊重され、戦士たちの儀式や装いに取り入れられていました。戦場や危機に向かう際のお守りとして広く用いられており、勇ましさや精神力を象徴する植物としての歴史が今も残っています

そのため、欧米では「勇敢な子に育ってほしい」という願いから、犬の名前に「タイム(Thyme)」と名付ける飼い主が多いと言われています。

タイムが原材料のドッグフード例

タイムはさまざまなドッグフードやおやつ、サプリメントの原材料に使用されています。

など

タイムの栄養素と犬への健康効果

ドッグフードの原材料に使われるタイムには、下記のような栄養素や犬への健康効果があります。

タイムの栄養素(100gあたり)
エネルギー342kcal
水分9.8g
たんぱく質6.5g
脂質5.2g
炭水化物69.8g
ナトリウム13mg
カリウム980mg
カルシウム1700mg
マグネシウム300mg
リン85mg
110mg
βカロテン980μg
ビタミンB10.09mg
ビタミンB20.69mg
ナイアシン3.4mg

※出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

  • 抗酸化作用
  • 抗菌・抗真菌作用
  • 消化促進
  • 抗炎症作用
  • 呼吸器サポート

腸の働きを改善、消化を助ける

この論文では、タイムに含まれる香り成分(揮発性成分)であるチモールカルバクロールは、犬の体にさまざまな良い影響を与える可能性があるとされています。

とくに腸の働きを整えたり、消化を助けたりする作用があり、お腹の調子をサポートするハーブとして注目されています。また、体の免疫機能を整える働きもあり、病気にかかりにくい体づくりにも役立つと考えられています。さらに、体の炎症を抑えたり、筋肉の痙攣を和らげる作用も報告されており、健康維持のための自然なサポート素材として期待されています。

参考:Thymus vulgaris essential oil: chemical composition and antimicrobial activity

抗酸化作用・抗炎症作用

この研究では、ハーブの一種であるタイムの抽出物に、体の炎症を抑える効果があることが明らかになりました。とくに関節の炎症や慢性的な体の不調に関係する成分に働きかける作用が確認されています。

タイムには抗酸化物質も豊富に含まれており、細胞のダメージを防いで体を守る働きも期待できます。

犬においても、こうした成分が役立つ可能性があり、関節の健康維持や高齢期のケアにおいて注目されているハーブのひとつです。

参考:Antioxidant and Anti-Inflammatory Effects of Thyme (Thymus vulgaris L.) Essential Oils Prepared at Different Plant Phenophases on Pseudomonas aeruginosa LPS-Activated THP-1 Macrophages

去痰作用や鎮咳作用

この研究では、タイムのチモールやカルバクロールが咳を鎮めたり、痰を出しやすくしたりといった呼吸器のサポートに効果があることが分かりました。チモールやカルバクロールは古くから咳止めや去痰薬として使われており、自然な方法で呼吸を楽にする働きがあるとされています。

犬にとっても、気管支の不調や季節性の咳の緩和に役立つ可能性があります

参考:Thymol and Thyme Essential Oil-New Insights into Selected Therapeutic Applications

虫除け効果や嗅覚トレーニングにも使われる

天然の防虫成分

タイムのチモールやカルバクロールは天然の防虫成分としても利用されています。

とくに蚊やノミ、ダニといった害虫を遠ざける効果があるとされ、欧米では犬用のナチュラル虫除けスプレーやシャンプーにタイムの抽出物が使用されることもあります。

ノーズワークにも活用される

犬の嗅覚を活かす遊びやトレーニングのひとつに「ノーズワーク」があります。ノーズワークとは犬に特定の香りを覚えさせて探させるゲームのことで、集中力や自信、ストレス発散にもつながります。そこで使われる香りの一例として安全性の高いドライハーブが挙げられ、タイムもそのひとつです。

タイムは香りがはっきりしているため犬の嗅覚を刺激しやすく、誤って口に入れても少量であれば健康被害が起きにくいとされているため、訓練用のアイテムとして適しています。

犬はタイムを食べても大丈夫?

タイムは犬が食べても安全なハーブのひとつです。ドッグフードやサプリメントにも使用され、犬の健康維持や胃腸のケア、免疫サポートを目的とした自然素材として注目されています。

普段のドッグフードに乾燥タイムをトッピングしてみましょう。とくに食欲が落ちている犬にとってはタイムの香りによって興味が引き、嗜好性が上がることが期待できます。

犬にタイムを与える注意点

ごく少量にする

犬にタイムを与えるのは健康や嗜好性の面で良い影響がありますが、トッピングする量はごく少量にとどめましょう。チモールやカルバクロールは濃縮されると刺激が強くなり、胃腸に負担をかけることがあります。

とくに子犬や高齢犬、胃腸が弱い犬は与えない方が良いでしょう

タイムのアロマはNG

また、タイムの精油(エッセンシャルオイル)を犬に使うのは非常に危険です。犬は人間よりも嗅覚が鋭く、精油の刺激が強すぎて呼吸器や皮膚に負担をかけてしまう恐れがあります。

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2020年4月8日

まとめ

  • タイムのチモールやカルバクロールは多くの健康効果を持つ
  • 防虫効果やノーズワークにも活用される
  • 犬はタイムを食べても大丈夫
  • 犬に与える際はごく少量にとどめ、精油は与えない

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帝京科学大学アニマルサイエンス学科卒業。愛玩動物飼養管理士2級、ペットセラピスト、ペット看護士の資格を取得。ドッグフード勉強会ディレクターとして、わんちゃんの栄養や病気、生態、ドッグフードなどの情報を提供しています。わんちゃんの魅力を発信し、飼い主さんの悩みや不安を解決することで、わんちゃんと飼い主さんの幸せのお手伝いになれれば嬉しいです。