目次
犬がうんちを食べるのは異常?
愛犬が自分のうんちや他の犬の排泄物を食べてしまう——。
この「食糞」という行動に驚きや戸惑いを覚える飼い主は少なくありません。しかし、食糞は単なるいたずらや癖ではなく、成長過程や心理的要因、環境による影響が絡み合って起こることが多いのです。
この記事では、犬がうんちを食べる原因や対策、食糞しやすい犬種の傾向についても解説します。
食糞とは?犬にとっての「うんち」の認識とは
犬がうんちを食べてしまう行動を「食糞」と呼びます。英語では「coprophagia(コプロファジア)」と表記され、動物行動学でも研究されている行動の一つです。
犬にとってうんちはただの排泄物ではなく、場合によっては「においのする物体」や「環境の一部」、「栄養が残っているもの」と認識されることもあります。
なぜ犬はうんちを食べてしまうのか?
巣を綺麗にする本能的行動
自分や子犬のうんちを食べて巣を清潔に保つことで病気を防ぎ、外敵に気づかれにくくする目的もあります。こうした行動は野生時代の名残であり、子犬の安全と健康を守るために必要な本能的行動です。こうした母犬の習性を見て、子犬が真似してしまうケースもあります。
成長過程の一環(とくに子犬期)
生後2〜6か月ほどの子犬は、周囲のものをなんでも口にする「探索行動」を通して世界を学びます。その中にうんちも含まれてしまうことがあり、好奇心や遊びの一環としてうんちを食べてしまうことがあります。
ストレスや退屈、不安による行動
留守番が長い、生活環境に変化があった、飼い主とのコミュニケーション不足などのストレスや退屈が原因で、気を紛らわせるために食糞をするケースもあります。
栄養バランスの乱れや消化不良
犬がうんちを食べる原因のひとつに、栄養バランスの乱れや消化不良が挙げられます。
ドッグフードの質が低かったり、必要な栄養素が不足している場合、体がそれを補おうとして排泄物に含まれる未消化の栄養分に反応し、再び口にしてしまうことがあります。
また、胃腸の機能が未発達な子犬や、消化吸収に問題を抱える犬では、食べたドッグフードが十分に消化されず、そのまま便に残ってしまうことも。
このようなとき、犬は排泄物の中にまだ“食べ物のにおい”を感じ取り、興味を持って食糞する行動につながります。
飼い主の反応を引き出すための行動
犬は飼い主の注意を引きたいときに、わざと良くない行動を取ることがあります。怒られるとわかっていても「食糞をする=構ってもらえる」と学習してしまった場合、食糞が繰り返されることもあります。
食糞がもたらすリスクとデメリット
健康面への悪影響
犬のうんちには本来排出すべき老廃物や、腸内の細菌が多く含まれています。これを再摂取することで胃腸炎や寄生虫感染などのリスクが高まります。
口臭や衛生面の問題
犬がうんちを食べることで最も身近に現れる問題が、強い口臭や衛生面の悪化です。
排泄物には雑菌や老廃物が多く含まれており、それを口にすることで口腔内に細菌が繁殖し、ひどい臭いの原因となります。また、食糞後に顔をなめたり、飼い主と接触することで人への衛生リスクも高まります。さらに、排泄物の残渣が歯の間に入り込むと歯周病の原因にもなり得ます。
家庭内での信頼関係にも影響するため、早めの対策が必要です。
問題行動として定着するリスク
食糞が習慣になってしまうと、成犬になってからもやめさせるのが難しくなり、とくに一度快感や満足感を覚えた犬は、強いモチベーションで繰り返す傾向があります。
そのため、犬が食糞をしていることが分かった時点ですぐに対処することが重要となります。
【状況別】食糞をやめさせるための対策
犬の食糞行動は、飼い主の対応の仕方や環境設定によって予防・改善が可能です。
ただし、犬が「飼い主の目の前で食糞をする場合」と「留守番中など目の届かないときに食糞する場合」では、効果的な対策が異なります。それぞれに分けて解説します。
飼い主が見ているときに食糞をする場合の対策
◆無反応で対応する(叱らない・驚かない)
飼い主の注意を引くことが目的になっている可能性があります。怒ったり大きな声を出すと「注目された」と犬が勘違いし、行動が強化されてしまうことがあります。無言で冷静に片付けるようにしましょう。
◆排泄直後にすぐに回収する
排泄の瞬間を見ていられる場合は、排泄が終わったらすぐに便を片付けましょう。食べる隙を与えなければ食糞の成功体験を積むことがなくなり、次第に行動が減っていきます。
◆排泄後に褒めて他の行動に誘導する
排泄を済ませたあと、軽く褒めておもちゃやおやつで気をそらすのも効果的です。「排泄=飼い主に褒められ、良いことがある」という正の強化を習慣づけ、食糞行動から意識をそらします。
◆味やにおいを変える補助サプリを使う
市販の食糞防止サプリやフード添加剤には、便のにおいを変えて食欲を失わせる成分が含まれているものがあります。併用することで成功率が上がることもあります。
見ていないとき(留守番中など)に食糞をする場合の対策
◆トイレ環境を見直す
クレートやケージ内で排泄する場合、うんちと長時間同じ空間にいると、暇つぶしやストレス解消で食糞することがあります。トイレと寝床はできるだけ離し、排泄物に接触しにくい環境を整えましょう。
◆留守中の排泄タイミングを調整する
散歩や排泄のタイミングを工夫して、留守番の時間中に便をしないように調整するのも一つの方法です。外出前にしっかり運動をさせて便を出しておくと、室内での排泄を減らせます。
◆監視カメラで様子を確認する
ペットカメラを設置して、食糞のタイミングや行動パターンを把握することで、より適切な対策を立てられます。日中の様子を記録しておけば、獣医師やトレーナーへの相談時にも役立ちます。
◆長時間の留守番にはシッターやペットホテルの活用も
どうしても排泄後すぐに回収できない状況が続く場合は、ペットシッターやドッグデイケアを検討するのも手です。定期的にトイレ掃除をしてもらうことで、食糞の機会を減らせます。
どちらの場合でも、「なぜ食糞するのか」という根本的な原因を見極めて、同時に改善していくことが必要です。表面的な行動を防ぐだけでなく、背景にある要因を取り除かなければ、別の問題行動に置き換わる可能性もあるため注意が必要です。
食糞しやすい犬種は?
食糞は犬種による傾向も一部報告されています。とくに下記のような犬種は、飼い主の報告数が多く、行動傾向としても関連性が指摘されています。
小型犬や愛玩犬に多い傾向
トイプードル、チワワ、ポメラニアン、マルチーズなどの小型犬は、運動量や刺激不足、飼い主への依存度が高くなる傾向があるため、ストレスや暇つぶしでの食糞が見られることがあります。
ラブラドールやビーグルなどの「食欲旺盛な犬種」
食欲旺盛で、ドッグフードなどに強い執着を見せるラブラドール・レトリバーやビーグルなども、うんちを「食べ物のようなにおいがするもの」として認識しやすく、食糞傾向が強く出ることがあります。
動物病院に相談すべきタイミング
一時的な食糞であれば、成長過程の一部として自然に解消することもあります。しかし、下記のようなケースでは獣医師への相談をおすすめします。
- 成犬になっても頻繁に繰り返す
- 他の犬のうんちに強く執着する
- 便の状態に異常がある(血便、粘液便など)
- 食欲異常や体重減少が見られる
病気が隠れていたり、消化吸収の問題がある場合もあるため、見過ごさずに専門家の判断を仰ぐことが大切です。
まとめ
- 犬が食糞をするのは本能的行動やストレス、栄養不足などがある
- 犬が食糞をすることで口臭の悪化や健康への悪影響がある
- 犬が食糞をするタイミングによって対策を変える
- 体重減少や血便がみられる場合は動物病院に相談を