目次
今回は鳥インフルエンザがドッグフードに与える影響や飼い主が取るべき具体的な対策について解説します。
鳥インフルエンザ(bird flu)とは
家禽肉が原材料の製品に影響
鳥インフルエンザ(bird flu)とはA型インフルエンザウイルスが引き起こす鳥類の病気で、とくに抗原性株(H5N1やH7N9)は鶏やターキー、アヒルなどの家禽に高い致死率をもたらします。
感染地域では、家禽類の処分や移動制限が行われるため、家禽肉を原材料とする製品の供給に深刻な影響を及ぼします。野鳥は鳥インフルエンザを発症するのは稀ですが、ウイルスの媒介者として感染拡大の要因となることがあります。鳥インフルエンザウイルスは感染した鳥やその排泄物、分泌物との接触、また汚染された水や飼料を介しても感染が拡大します。
ドッグフードにおいても、鶏肉や鶏副産物(鶏脂肪、鶏粉末など)は多くの製品で主要の原材料となっているため、鳥インフルエンザの流行により、さまざまなドッグフードが生産停止や販売終了となることがあります。
人にも感染する
H5N1 亜型の高病原性鳥インフルエンザウイルス(注1)はヒトに感染することは稀であり、ヒトからヒトへと効率よく飛沫伝播は起こしませんが、ヒトに感染した場合には重篤な症状を引き起こし、50%程度の致死率を有します。
参考:ヒトから分離された牛由来高病原性H5N1鳥インフルエンザウイルスの病原性と感染伝播性|東京大学 国立国際医療研究センター
鳥インフルエンザは人に感染することがありますが、感染は非常に稀です。また人から人への感染も非常に稀で、持続的な感染拡大は確認されていません。
感染経路は感染した家禽やその排泄物、分泌物との濃厚接触で、発熱や咳、喉の痛み、呼吸困難などの症状があらわれ、重症化すると肺炎や多臓器不全に至ることもあります。H5N1株の致死率は約50%と非常に高く、一方でH7N9株も致死率が約30%と報告されています。
ドッグフードの原材料でよく使用される
鳥インフルエンザを発症するのは主に鶏やターキーなどの家禽ですが、これらはドッグフードの原材料としてよく使用されます。
そのためドッグフードの原材料の原産国で鳥インフルエンザが発生した場合は、販売終了や輸入停止となることがあります。
鳥インフルエンザの影響でドッグフードが販売終了する理由
原材料の供給不足
鳥インフルエンザが発生した地域では、感染拡大を防ぐために家禽類の出荷が停止されます。これにより、ドッグフード製造に必要な鶏肉や鶏副産物の供給がストップします。
輸入規制の影響
ドッグフードの原産国で鳥インフルエンザが発生した場合、感染国との間で家禽製品の輸入が規制されます。この場合、家禽製品の原材料を使用しているドッグフードが国内で販売できなくなります。
製造コストの増加
鳥インフルエンザ発生により原材料が供給不足になると、メーカーは代替原材料を調達しなければならず、製造コストが増加します。
鳥インフルエンザ発生における影響は?事例を紹介
【2024年12月】Butchドッグフード
引用元画像:Butch(ブッチ)公式サイト
ドッグフードを販売しているButch(ブッチ)では、ニュージーランドで発生した鳥インフルエンザを受けて全フード商品の新規販売を終了し、販売開始時期は未定となっています。
【2022年】ロータスドッグフード
2022年にカナダで発生した鳥インフルエンザにより、オーブンベイクド製法で人気だったロータスは、「チキンレシピ」「ラムレシピ」「ダックレシピ」「ターキーレシピ」が2022年11月をもって販売終了となりました。
参考:「ロータスペットフード」 終売商品のご案内|ロータスジャパン株式会社
【2021年】be-NatuRal
be-NatuRalのドッグフード「ルート・ターキー」「ルート・ターキー・ライト」はオーストラリアでの鳥インフルエンザ発生に伴い、同国政府が鳥製品の輸出を原則禁止した影響で、輸入が困難となり販売終了となりました。
販売終了となった製品の代替として、良質な豚肉を使用した「ルート・ポーク」および「ルート・ポーク・ライト」が新たに発売されています。
販売終了になった場合、飼い主さんがするべきこと
鳥インフルエンザ発生によりドッグフードの輸入が停止し、普段使っている製品が手に入らなくなった場合、飼い主が取るべき対応として以下のポイントがあります。
使用中のドッグフードの供給状況を確認
現在使っているドッグフードの原材料の原産国で鳥インフルエンザの発生が確認された場合、まずはドッグフードのメーカーや販売店に連絡し、製品の供給状況や販売終了の可能性について確認しましょう。公式ウェブサイトやSNS、カスタマーサポートを活用するのがおすすめです。
代替フードの選定
供給が難しい場合、同等の栄養バランスを持つ国内製造のドッグフードを探します。選ぶ際には以下を確認しましょう。
- 栄養バランスを確認:タンパク質や成分と現在のドッグフードを比較
- 他のたんぱく源を検討:豚肉、ラム肉、魚などの異なるタンパク源を使用したフードを試す
- アレルギー対応:犬に特定のアレルギーがある場合は、代替品が安全かを確認
- 他ブランドの検討:ビューや獣医の推奨を参考に他社製品に切り替える
手作りごはんの検討
代替ドッグフードが届くまで、一時的に手作りごはんを取り入れるのも良いでしょう。
しかしドッグフードのような総合栄養食と同じように手作りするのは非常に難しいため、獣医師さんや栄養士さんに相談するのがおすすめです。
動物病院に相談
ドッグフードの変更や手作りごはんを導入した際は、獣医師さんにアドバイスを受けると安心です。とくに以下の場合は相談が必要です。
- 特殊な健康状態や持病がある犬
- アレルギー体質の犬
- 慢性疾患や特別な栄養管理が必要な犬
犬の体調を注意深く観察し、異変があればすぐに動物病院で診てもらいましょう。
ドッグフード販売終了に伴う注意点
慌てて買いだめしない
供給不足を懸念して、むやみにドッグフードを買いだめすることはおすすめできません。大量購入は賞味期限切れや保管環境などの問題を招く可能性があります。
販売が再開されたら
ドッグフードの販売が再開されたら、メーカーや販売店の公式発表を通じて、再開されたドッグフードが以前と同じ原材料や栄養バランスを持っているかを確認してみましょう。
成分や製造工程に変更があれば、犬のアレルギーや健康状態に影響がないか注意してください。
以前のドッグフードが販売再開して購入する際は、愛犬の体調を見ながら以前のドッグフードに戻すかどうかを慎重に判断します。新しいドッグフードに慣れている場合は、徐々に戻すことで犬の消化器官への負担を減らせます。また、販売停止期間中に与えた代替ドッグフードに満足している場合は、無理に切り替える必要はありません。
必要に応じて動物病院に相談し、愛犬に最適な選択をしてください。
普段からフードローテーションを取り入れる
今後も鳥インフルエンザや災害などが発生した場合は、急な販売終了や輸入停止が起こり得ます。そのような場合に対応するには、普段からドッグフードをローテーションすることがおすすめです。
普段からローテーションを経験している犬は、このような緊急事態でもストレスなく移行することができ、偏食しにくい傾向にあります。
まとめ
- 鳥インフルエンザは人に感染することもあるが、非常に稀
- 鳥インフルエンザ発生によるドッグフード販売終了は急に訪れる
- 販売終了になった場合、代替ドッグフードや手作りご飯を検討する
- 普段からドッグフードのローテーションをすることがおすすめ