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犬のキシリトール中毒(xylitol poisoning)
キシリトール(xylitol)とは?
キシリトールは砂糖の代替甘味料として広く使用され、ガムやキャンディ、チョコレート、無糖飲料、ペースト状歯磨き粉など、さまざまな食品や製品に含まれています。
人間にとっては低カロリーで虫歯予防効果などのメリットがありますが、犬にとっては全く逆の影響をもたらすことがあります。
犬の健康に多大な悪影響がある
イヌには特異的に健康上に悪影響が出るため、使用は控えなければならない。(中略)ヒトやサル、馬などではエネルギー源にならないといわれ、低カロリー甘味料として注目され、食品添加物にもなっている。ところが、近年の米国の研究により、イヌに特異的に健康被害を起こすことが判明した。
引用元:ペットフードの主な原料
キシリトールはヒトやサル、馬などには無害ですが、イヌにとっては健康上に特異的な悪影響があるとされ、使用を控えるよう示唆されています。
ドッグフードに添加されるキシリトール
食いつきを目的とした添加物
キシリトールは甘味料・香料としてドッグフードの原材料に使われることがあり、犬の食欲促進や食いつきの向上、風味付けが目的となります。
原材料欄には、キシリトール、甘味料(キシリトール)、xylitolと表記されていることがあります。
品質や原材料にこだわっているドッグフードでは、甘味料や香料に頼らず原材料の香りだけで食いつきの良いレシピとなっています。そのため、甘味料や香料を使用していないドッグフードがおすすめです。
キシリトールが配合されたドッグフードは避けたほうが安全
アメリカの動物毒物管理センター(APCC: Animal Poison Control Center)の報告によると、犬の体重1kgあたり0.1g以上のキシリトールを摂取すると中毒症状があらわれ、0.5g以上では重篤な肝障害を引き起こすリスクが高まります。具体的には、体重10kgの犬が1gのキシリトールを摂取すると、深刻な症状を呈する可能性があります。
キシリトールはドッグフードだけでなく犬用ガムやデンタルケアグッズに含まれていることがあります。中毒とならない量をメーカーで判断して配合しているはずですが、キシリトールは微量であっても重篤な症状が出たり、多くを摂取しても症状が出ないこともあるといった、個体差の激しい成分です。そのため、キシリトールが配合されたドッグフードや製品はできるだけ避けたほうが安全です。
ドッグフードには少なからず添加物が含まれていますが、その添加物は果たして必要な添加物なのか、危険な添加物なのかを見極め判断し、安全なドッグフードを選ぶことが重要となります。
添加物の必要性や危険性については、下記の記事を参考にしてみてください。
犬のキシリトール中毒の原因
インスリン分泌の過剰反応
犬はキシリトールを摂取すると、人間とは異なる反応を示します。
犬がキシリトールを摂取すると、膵臓が通常よりもインスリンの分泌が急激に促進します。これにより血糖値が急激に低下し、深刻な低血糖症を引き起こします。
肝臓への悪影響
犬がキシリトールを摂取した場合、肝細胞が損傷を受け、急性肝不全を引き起こすことがあります。肝臓は毒素の解毒や栄養素の代謝を担う重要な器官のため、その機能不全は致命的です。
犬のキシリトール中毒の症状
キシリトール中毒の症状は摂取量や個体差によって異なりますが、以下の症状が一般的に見られます。
摂取後30分~数時間以内:低血糖症の症状
- 嘔吐
- 無気力やぐったりとした様子
- ふらつきやバランスの喪失
- けいれん
- 昏睡
摂取後12時間以上経過:肝不全の症状
- 黄疸(目や皮膚の黄変)
- 下痢
- 出血傾向(歯茎からの出血、血尿など)
- 意識混濁
犬がキシリトールを食べた!やるべき手順
犬がキシリトール製品を舐めた程度であれば中毒症状は起きないことが多いですが、誤ってキシリトールを摂取してしまった場合は迅速に対応することで命を救う可能性が高まります。
食べてしまったことが分かったら、すぐに以下の手順を実行しましょう。
①動物病院への連絡
まず、犬がキシリトールを含む食品や製品を摂取したことを動物病院に伝えます。その際、以下の情報を用意しましょう。
- キシリトール製品の種類
- キシリトールの摂取量
- キシリトールを摂取した時間
- 犬の現在の様子
②犬に触らない
一部の中毒症状の場合は応急処置として嘔吐を促すことが有効とされていますが、キシリトールの場合は逆効果の可能性があります。専門家の指示なしに嘔吐を試みないようにしましょう。
③動物病院に連れていく
犬がキシリトールを食べてしまった場合は動物病院へ行きましょう。動物病院では以下の治療が行われることがあります。
- 血糖値を維持するための点滴
- 肝臓保護薬の投与
- 緊急血液検査による状態確認
犬がキシリトールを摂取しないための対策
犬が家の中でのキシリトール中毒を防ぐためには、キシリトール製品の管理が重要となります。
- キシリトールを含む食品や製品を犬が届かない場所に保管する
- キッチンや食卓に食べ物を置きっぱなしにしない
とくにキシリトールが配合された人間用の歯磨き粉は虫歯予防や抗菌作用を目的としているものなので、キシリトールの含有量が高い傾向あり、またキシリトールの含有量が記載されていないことがあります。
少量の摂取でも中毒症状があらわれる恐れがあるため、人間用の歯磨き粉は犬の手が届かないところに保管しましょう。
まとめ
- キシリトールは人では無害だが、犬では健康に大きな悪影響がでる
- ドッグフードにも添加されていることがある
- キシリトールは少量の摂取でも中毒症状を引き起こす恐れがある
- 犬の手が届かない場所に保管する
キシリトール中毒とは、犬にとって非常に有害となるキシリトールを摂取することで起こる中毒のことで、実はドッグフードに添加されていることがあります。また家の中でも「キシリトールガムを犬が食べてしまった」という事故が発生しています。