難消化性デキストリンとは
難消化性デキストリン(Indigestible Dextrin)とは、トウモロコシでんぷんを加水分解し脱色や精製を行って得られた水溶性食物繊維です。
難消化性デキストリンは、トウモロコシでん粉に微量の塩酸を添加、加熱して製造した焙焼デキストリンをα‐アミラーゼおよびグルコアミラーゼにより加水分解を行った後、活性炭による脱色、イオン交換樹脂による脱塩などの精製を行い、イオン交換樹脂を用いたクロマト分画装置によりグルコースを分離し、食物繊維画分を分取して得られたものであり、酵素-HPLC法で分析した結果、食物繊維を85~95%含有するものである。
自然界では熟した果物などに含まれています。犬の血糖値や中性脂肪上昇の抑制、腸内環境を改善する機能制限材料としてドッグフードやおやつ、サプリメントに配合されています。
難消化性デキストリンを使用したドッグフードやサプリ
- RHドッグフード
- プラチナ乳酸菌5000α(ペット用サプリメント)
- ワンちゃんの介護食 350g など
難消化性デキストリンの効果や働き
血糖値の上昇やインスリン分泌を抑制
難消化性デキストリンには優れた生理機能がいくつもあり、そのひとつが食後の血糖値の上昇やインスリンの分泌を抑制し穏やかにする作用です。
通常、食べた物は胃や腸で消化吸収されてエネルギーや栄養素として利用されるので、食後は血糖値が急激に上昇します。すると、血糖値を元に戻すために一気に沢山のインスリン(ホルモン)が分泌されます。
難消化性デキストリンは、粘性のある水溶性食物繊維で、犬の消化器官をゆっくりと進み消化吸収速度を落とすことで、犬の血糖値の急激な上昇を抑制します。血糖値がゆっくりと上昇するとインスリンも一気に放出されなくなるので、インスリンの分泌量も抑えられます。
※糖尿病については、犬の場合、遺伝や自己免疫反応を原因とするI型の糖尿病がほとんどなので、血糖値上昇や肥満が原因になることはありません。
中性脂肪上昇の抑制
難消化性デキストリンは犬の中性脂肪の上昇を抑える働きもあります。
インスリンには糖質を脂肪に変える働きがあるので、上記で紹介したインスリンの分泌量を防ぐことで、糖質から変換される中性脂肪量が少なくなり、中性脂肪上昇の抑制に繋がります。
便秘の予防効果や整腸作用
難消化性デキストリンは、犬の整腸作用や便への効果を期待して配合されることが多いです。
難消化性デキストリンは、水溶性食物繊維という腸内細菌叢のエサとなり、犬の腸内環境を整える働きがあります。粘性が高くゆっくりと食物が移動するので、犬の腸内の掃除にも役立ち、便秘の予防にも効果があるとされています。
マルトデキストリンと難消化デキストリンの違い
マルトデキストリンは人工甘味料
ドッグフードでは難消化性デキストリンの他に「マルトデキストリン」が配合されることもありますが、この2つは性質がまったく別の物で、使用目的も異なります。
マルトデキストリンは甘味が強いことからドッグフードの人工甘味料として利用されています。マルトデキストリンは消化吸収がグルコースと同じくらい早く、運動量の多い犬のドッグフードや、即効性の高いエネルギー補給に向いています。
対して難消化デキストリンは甘味はわずかで、犬の胃や小腸では分解・吸収されず大腸内まで届き、腸内細菌のエネルギー源となり犬に整腸作用をもたらします。
難消化性デキストリンの危険性、デメリット
難消化性デキストリンは様々な生理機能があり、体に役立つメリットも多いですが、難消化性デキストリンは海外でもあまり好評ではなく、摂取したときの危険性や過剰摂取による下痢が心配されています。
難消化性デキストリンの過剰摂取は下痢を引き起こす
難消化デキストリンの過剰摂取は犬の下痢を引き起こすことが報告されています。
整腸作用による腸内環境へのメリットはありますが、与えすぎると軟便や下痢の原因となるで配合量や給与量には配慮しなければなりません。
遺伝子組み換えを行った作物を使用している可能性
難消化性デキストリンの原料となるトウモロコシなどの植物が遺伝子組み換えを行った作物である可能性があります。
もしドッグフードに難消化性デキストリンが使用されていた場合、調べる術がないので、使用されている可能性は否定できません。ただ遺伝子組み換え作物から抽出された難消化性デキストリンによってどの程度体に影響があるかについても問題等は報告されていません。
急性毒性、変異原性について
引用元:難消化性デキストリンの毒性学的検討 – J-Stage
結果
1、急性毒性試験
全群でPF-C投与直後より一過性の自発運動の低下が観察されたが、十数分後には回復し活発な摂食行動が観察された。最高用量20.0g/kg体重投与群では、10例中3例に投与後約30分から下痢(泥状便)の発症が認あられた。その後、他の2群においても投与後5時間までに用量依存性に軟便の排泄がみられた。しかしながら、これらの消化器症状は翌日までに軽快し回復した。以降、一般状態における特記すべき変化は何ら認められず、試験期間中死亡例はなかった。また、期間中の体重増加は群間で差異を認めなかった(開始時の平均体重:22.9~23.2g、終了時:31.1~31.5g)。さらに、観察日における剖検においても、諸臓器に変化を認めなかった。観察期間中に死亡例がみられなかったことから、PF-Cの雄性マウスにおけるLD50値は本試験での最大用量である20.0g/kg体重以上と推定された。2、変異原性試験
結果をTable2に示す。溶媒対照と比較したとき、PF-Cは代謝活性化の有無に関わらず40~5,000μg/plateの用量でいずれの指示菌株においても復帰変異コロニー数を増加させなかった。一方、陽性対照として用いたAF-2、NaN3及び9-AAはS9mixの添加なしで、また2-AAはS9mixの添加により復帰変異コロニー数を著しく増加させた。以上の成績から、本試験条件下におけるPF-Cの微生物突然変異誘起性は陰性であると判定した。
食品衛生学雑誌に掲載された「難消化性デキストリンの毒性学的検討」のラットを対象にした試験によると、軟便の排泄が認められましたが、変異原性や他の毒性は認められませんでした。
この試験は1992年とデータが古く、また試験期間が短く長期摂取ではないことから、これだけで安全と言い切ることはできませんが、難消化性デキストリンは日本も含め世界で安全性が認められている食品なので、一般的に考えられているほど危険を感じる必要はないかと思います。
まとめ
- トウモロコシなどから精製された水溶性食物繊維
- 整腸作用、血糖値や中性脂肪の上昇を抑制する働きがある
- 遺伝子組み替え原料使用、軟便や下痢を引き起こす可能性