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このように、犬の「無駄吠え」に悩んでいる飼い主さんは多いのではないでしょうか。
実は、無駄吠えには必ず理由があり、それを理解せずに叱るだけでは、かえって悪化させてしまうこともあります。
この記事では、犬が無駄吠えをする主な原因と、状況別の正しい対策方法を解説します。
犬が無駄吠えをする原因を把握し、適切に対応することで、信頼関係を守りながら無駄吠えを改善していきましょう。
犬にとっては「意味のある吠え」
無駄吠えとは、「犬にとって明確な目的がない、または人間にとって望ましくない状況で行われる吠え」を指します。
本来、犬にとって「吠えること」はごく自然なコミュニケーション手段であり、警戒・要求・恐怖・不安などを伝えるための行動です。
このように、犬にとっては「意味のある吠え」であっても、それが人の生活に支障をきたしたり、不快に感じられると「無駄吠え」と呼ばれるようになります。
そのため、無駄吠えの対策は、叱るのではなく「なぜ吠えているのか?」を理解する姿勢が最も大切です。
無駄吠えを起こしやすい犬種や性格は?
無駄吠えの起こりやすさは犬種や性格によっても違いがあり、もともと警戒心が強い性格や、番犬としての役割を持ってきた犬種は吠えやすい傾向があります。
とくにポメラニアンやミニチュアシュナウザーは警戒心が強く、小さな物音にも敏感に反応することが多くみられます。
また、狩猟犬種であるビーグルは本能的に声や吠えを使って存在を知らせる習性があります。チワワは防衛本能が強く、警戒心から吠えることが多くみられます。
犬の無駄吠えを放置するとどうなる?
犬の無駄吠えを放置すると、さまざまな悪影響が生じる可能性があります。自然に治るものではないため、早めの対処が重要です。
- 犬自身にとって大きなストレスとなる
- 無駄吠えが習慣化すると行動の修正が難しくなる
- 飼い主との信頼関係がひびが入る
- 犬が飼い主に対して不安や警戒心を抱くようになる
- 吠え声が近隣トラブルの原因になる
犬の無駄吠えの原因と対策方法
まずは原因を特定する
無駄吠えへの対策は、まず「なぜ吠えているのか」を正確に見極めることから始まります。
要求、警戒、不安、ストレスなど理由によって取るべき対応は大きく異なり、原因が曖昧なまま叱ったり対処しても改善しないどころか、かえって行動が悪化することもあります。
日常の中で犬が吠えるきっかけやパターン、時間帯などをよく観察し、メモに取っておくのも対策への第一歩です。
要求による無駄吠えの場合:無視と報酬を使う

犬が下記のような行動や仕草をしながら無駄吠えをする場合、「要求」によるものと考えられます。
- 飼い主の顔をじっと見つめながら吠える
- おもちゃやおやつの場所を見ながら吠える
- 飼い主の側で前足でタッチしながら吠える
- ドアや散歩用リードの前で吠える
- 飼い主が動くたびに関心を引こうと吠える
- ごはんや遊びの時間が近づくと吠える
犬が「かまってほしい」「おやつがほしい」といった要求で吠えた場合、吠えた瞬間に反応したり、吠えるたびに応えてしまうと、無駄吠えはさらに定着・習慣化してしまいます。
犬が要求吠えをしている場合は、「無視」が一番の対策となります。犬が落ち着くまで待ち、静かになったら褒める、という対応が効果的です。そうすることで「吠えても無駄」と学習させることができます。
犬が必死に訴えている姿を見ると、つい応えてあげたくなるかもしれませんが、ここは心を鬼にすることが大切です。
吠えれば願いが叶うと学習させないためにも、飼い主が一貫した態度を貫くことが、要求吠えを改善する近道になります。
警戒による無駄吠えの場合:社会化トレーニング

犬が下記のような行動や仕草をしながら無駄吠えをする場合、「警戒」によるものと考えられます。
- インターホンや物音に反応して吠える
- 知らない人や犬を見た瞬間に吠える
- 耳を立てて周囲を見回しながら吠える
- 唸るような声から次第に吠えに発展する
- 体を前傾させ、相手や物に吠える
- 飼い主の前に立ち、守るように相手に吠える
警戒吠えは、「怪しい」「危険かもしれない」と判断した対象に対して、「自分や家族、縄張りを守ろう」という本能的な防衛行動から生じます。
このような警戒吠えには、少しずつさまざまな刺激に慣れさせる社会化トレーニングが効果的です。
◆インターホンや来客への警戒吠え
インターホン音に過剰に反応する場合は、音に慣れさせる練習が効果的です。
まず、録音したインターホン音を小さな音量で流し、吠えずにいられたらすぐにご褒美を与えます。徐々に音量を上げ、何度も繰り返すことで「音=怖くない・いいことがある」と印象づけましょう。
◆散歩中の犬や人に対する警戒吠え
他の犬や人に吠える場合は、吠えずに落ち着いていられる距離を見つけることが最初のステップです。
他の犬や人とすれ違う際におやつでアイコンタクトをとり、犬の意識を飼い主に向けることで吠えを防ぎやすくなります。相手を見ても落ち着いていられたらご褒美や声かけで褒め、徐々に距離を縮めながら練習を重ねましょう。
◆家の外の物音に対する警戒吠え
窓の外の車や物音に対して警戒して吠える場合は、視界のコントロールと環境の見直しが有効です。
目隠しカーテンやすりガラスシートで視覚刺激を減らし、静かな音楽を流して音を中和します。また、落ち着いているときに窓辺でおやつを与えるなど、外の環境にポジティブな印象を持たせる練習を取り入れましょう。
恐怖・不安による無駄吠えの場合:安心できる環境づくり

犬が下記のような行動や仕草をしながら無駄吠えをする場合、「恐怖や不安」によるものと考えられます。
- 体を縮めて後ずさりしながら吠える
- 尻尾を下げ、体を低くして震えながら吠える
- 耳を伏せ、目をそらしつつも吠え続ける
- 逃げ場を探しながら、また隠れながら吠える
恐怖・不安による無駄吠えは、犬が「怖い」「どうしていいかわからない」という気持ちから生じる自己防衛行動です。その対象は人や犬だけでなく、インターホンの音や工事音、花火や雷の音などに対してもあらわれます。
警戒吠えよりもさらに強い恐怖感が根底にあり、場合によっては吠えながら噛むなどの攻撃行動に発展するリスクもあります。
そのため、恐怖・不安による無駄吠えをしているときには、無理に刺激に慣れさせるのではなく、安心感を与えるという対応が効果的となります。
例えば、家の中でインターホンや雷の音に対して恐怖や不安を感じている場合は、クレートや毛布など安全な避難場所を用意し、静かに過ごさせます。飼い主さん自身も落ち着いて対応して犬に安心感を与えることが、恐怖や不安吠えの改善につながります。
退屈・ストレスによる無駄吠えの場合:運動と知的刺激を

犬が下記のような行動や仕草をしながら無駄吠えをする場合、「退屈やストレス」によるものと考えられます。
- とくにきっかけがないのに突然吠える
- 落ち着きなく歩き回りながら吠える
- 窓の外を見つめ、何もいなくても吠える
- 飼い主が相手にしないと吠え続ける
- 雨の日や散歩不足の日に吠えが増す
退屈・ストレスによる無駄吠えは、「エネルギーが余っている」「刺激が足りない」ことへの不満や発散欲求から起こることが多いです。何かに対してというより、目的のない吠えになりやすいのが特徴です。
運動不足や刺激不足による吠えには、エネルギーを適切に発散させることが重要です。単調な生活が続くと犬はストレスをためやすいため、日々のルーティンにも変化や楽しみを取り入れると効果的です。
十分な散歩に加え、家の中でもボール遊びや知育玩具を取り入れて頭を使わせることで、心身ともに満たされやすくなります。
このように、心身共に疲れや充実感を得ると穏やかに過ごせる時間が増え、無駄吠えも自然と減っていきます。
分離不安による無駄吠えの場合:留守番練習と安心できる環境づくり

犬が下記のような行動や仕草をしながら無駄吠えをする場合、「分離不安」によるものと考えられます。
- 外出の準備を始めるとソワソワして吠える
- ドアを閉めた直後から激しく吠え続ける
- 留守番中、長時間にわたって断続的に吠える
- 飼い主が帰宅したとき興奮しながら吠える
- 飼い主が別室に移動しただけでも吠える
分離不安による吠えは、飼い主と離れる不安によるものです。
対策には、短時間の留守番から徐々に慣らす練習が効果的です。最初は数分間から始め、犬が吠えることなく一人で寝ていたりおもちゃで遊んでいたりなど留守番を一人で過ごせたら褒めてあげましょう。
また、出かける際や帰宅時に過剰な声かけをしないなど、飼い主自身の行動にも配慮が必要です。
高齢化や認知症による無駄吠えの場合:生活環境の見直しと医療的サポート

犬が下記のような行動や仕草をしながら無駄吠えをする場合、「高齢化や認知症」によるものと考えられます。
- 夜間に理由もなく吠え続ける(夜鳴き)
- 同じ場所をぐるぐる歩き回りながら吠える
- いつもと違う場所にいると不安になり吠える
- 方向感覚を失い、家具や壁にぶつかって吠える
- ぼんやりしている時間が増え、突然吠え出す
高齢犬の場合、認知機能の低下や身体的不調が原因により無駄吠えが増えます。
まずは生活リズムを整えることが対策への一歩となります。日中はしっかり散歩や日光浴を取り入れて適度な刺激と運動を与え、夜間はしっかり眠れるよう常夜灯を使って暗闇への不安を和らげるなどの工夫をしましょう。
高齢犬や認知症の犬には、叱らず、安心させる対応が基本となります。完璧を求めず、愛犬のペースに合わせて寄り添ってあげましょう。
対策をしても夜鳴きが続く場合は獣医師に相談し、認知症の進行防止や不安軽減を目的とした治療やサプリメントの使用も検討しましょう。早期対応が犬の負担を和らげます。
無駄吠えしない犬に育てるために子犬期からできること
無駄吠えを予防するためには、子犬期からの社会化と正しいしつけが重要です。
さまざまな人、犬、物音、環境に慣れさせることで、必要以上に警戒心を持たない落ち着いた犬に育てることができます。
また、吠えた時にすぐ反応せず、静かにしている時に褒める習慣をつけることで、望ましい行動が自然と身についていきます。過剰に甘やかしたり、不安をあおるような行動を避けることも大切です。
子犬期から「吠えなくても安心できる」という成功体験を積ませることが、無駄吠え防止への近道になります。
無駄吠えが改善しない場合は専門家に相談!
無駄吠えに対して原因を特定し、適切な対策を講じても改善しない場合は、専門家のサポートを受けることを検討しましょう。
獣医師による健康チェックを通じて体調不良や認知症などが隠れていないかを確認したり、ドッグトレーナーや動物行動学の専門家による行動修正プログラムを取り入れることで、より効果的な改善が期待できます。
自己流で悩み続けるより早めに専門家に頼ることで、犬も飼い主さんも無理なく、無駄吠えを改善できる可能性が高まります。
まとめ
犬の無駄吠えには要求、警戒、恐怖、不安、ストレス、加齢による認知機能の低下など必ず理由があります。
「犬がなぜ吠えているのか」を理解しないまま叱るだけでは、問題はむしろ悪化してしまいます。まずは冷静に原因を見極め、適切な対策を根気強く続けることが大切です。
場合によっては専門家の力を借りることも視野に入れながら、愛犬と飼い主さんにとって快適な生活を目指していきましょう。