ドッグフードの原材料:フェヌグリーク(fenugreek)
健康食品やハーブ療法に使われる
フェヌグリークとは地中海沿岸やアジア地域を原産とするマメ科フェヌグリーク属の植物で、特徴的な甘く苦い香りと風味があります。なんと5000年前より古代エジプトで利用されており、薬用や生薬、漢方、ハーブ療法など幅広く使われています。
また、フェヌグリークは日本では「コロハ」と呼ばれることがあります。漢字では「胡廬巴(ころは)」で表記され、主に医薬品として使用されています。
加工しても栄養が維持されやすい
フェヌグリークは、乾燥や加工しても栄養価や風味が維持されやすいことが特徴です。
とくに抗酸化物質や食物繊維、ビタミンB群などの栄養素は熱や乾燥に強い性質を持ちます。また、種子の独特な甘く苦い香りや風味も乾燥や粉末加工後も保持されやすいため、スパイスや健康食品として広く活用されています。
フェヌグリークが原材料のドッグフード例
ヨーロッパ産のドッグフードにみられる
フェヌグリークは地中海地方が原産なので、ベルギーやイギリスなどのヨーロッパ産のドッグフードでみられることが多い傾向です。
フェヌグリークが原材料のドッグフード例
フェヌグリークはさまざまなドッグフード(ドライ、ウェット)、おやつ、サプリメントの原材料に使用され、他のハーブと一緒に配合されることが多くみられます。
原材料欄にはフェヌグリーク、乾燥フェヌグリークなどと表記されます。
- マッサンペットフーズ ウィリアムドッグフード
- AATU チキン/サーモン/ダック
- ウルフインサイト プライマル
- Vet Solution 糖尿病サポート
- アンブロシア HMN ダック(オリーブオイル入り) など
フェヌグリークの栄養や犬における健康効果
コレステロール低下や脂肪蓄積抑制
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引用元:フェヌグリークは正常ラットの脂肪蓄積抑制に関与する|日本栄養・食糧学会誌 第64巻 第2号99-106(2011)
(一部抜粋)フェヌグリークは食餌中脂質の糞中への排泄を促進することによって、肝臓および白色脂肪組織への脂肪蓄積を抑制し、その結果として体重増加を抑制することが推察された。(中略)フェヌグリーク添加によって肝臓内の中性脂肪量、総コレステロール量の減少がみられ、糞中への中性脂肪排泄量および胆汁酸排泄量が増加する傾向を示した。
フェヌグリークの生活習慣病予防効果を検討した研究によると、フェヌグリークは中性脂肪や、コレステロールを胆汁酸に変換して糞中に排泄させることが分かりました。その結果、肝臓や脂肪細胞への脂質蓄積の抑制、体重増加の抑制が報告されています。
抗糖尿病性および抗酸化作用
フェヌグリークは抗酸化作用を持ち、酸化したDNAの蓄積を抑制し、抗酸化物質を活性化させることで、糖尿病ラットの腎臓機能および形態学的損害を防御することが分かりました。
参考:フェヌグリーク(Trigonella foenum graecum)種子抽出物は抗酸化活性によって糖尿病ラットの腎機能と形態を保護する
抗炎症作用による消化促進
フェヌグリークは胃酸の分泌を調整する作用があります。
フェヌグリークの種子には食物繊維や植物化合物(サポニンやアルカロイドなど)が含まれており、これらが胃の粘膜を保護する役割を果たします。そのため胃酸の過剰分泌を抑えたり、逆に胃酸分泌が不足している場合に補助する働きをします。
消化不良などの胃腸トラブルを抱えている犬や、消化機能が低下している犬に効果があります。
血糖値の安定化や胃腸の保護
フェヌグリークの種子には、水溶性食物繊維(とくにガラクトマンナン)や不溶性食物繊維が含まれています。
- 血糖値の安定化:糖質の吸収速度を遅らせることで食後血糖値の急上昇を防ぐ
- コレステロール低下:腸内で胆汁酸を吸着して体外に排出し、血中コレステロール値を下げる
- 胃腸の保護:ゲル状物質を形成して胃や腸の粘膜を保護し、消化を穏やかにする
- 満腹感の促進:ゲル化することで胃内でかさを増し、満腹感を促進する
- 腸内環境の改善:腸の蠕動運動を促進して便の量を増やし、便秘の改善や老廃物の排出を促す
- 毒素の排出:腸内で老廃物や毒素を吸着して体外に排出することで、デトックス効果が期待
- 大腸の健康維持:腸の動きを活発にして、大腸がんなどのリスクを減らす
毛並みと皮膚の健康
フェヌグリークには抗酸化作用や抗炎症作用があります。そのため肌細胞をフリーラジカルによる酸化ストレスから守ることにより老化の進行を遅らせたり、皮膚の弾力性を維持するのに役立ちます。
また肌の炎症や赤みを軽減する効果もあるため、アレルギー性皮膚炎やかゆみのある症状の緩和が期待されます。
フェヌグリークの注意点
クマリンが含まれている
フェヌグリークには少量のクマリンが含まれています。クマリンとは自然界に存在する化合物の一種で、過剰摂取すると肝臓や腎臓に負担をかけたり毒性を引き起こす恐れがあります。
しかし、ドッグフードの原材料に使用されるフェヌグリークは少量であり、さらにフェヌグリークに含まれるクマリンの量も非常に少ないため、きちんと給与量を守っていれば健康な犬にとって有毒となるリスクは低いと考えられます。
アレルギー反応のリスク
フェヌグリーク自体はアレルギーを発症しにくい食べ物とされていますが、可能性はゼロではありません。与える場合は少量からスタートし、異変を感じたら動物病院で診てもらいましょう。
とくに大豆やひよこ豆、エンドウなどマメ科にアレルギーを持つ犬は注意が必要です。
まとめ
- フェヌグリークは地中海沿岸やアジア地域を原産とする植物
- ヨーロッパ産のドッグフードの原材料に使用される傾向
- コレステロールの低下や脂肪蓄積抑制の効果がある
- 毒性成分クマリンが含まれているが、ごく少量