犬の血液検査について
血液検査では愛犬の様々な病気の傾向や問題を早期に知ることができます。
血液は全身を巡るので、体中の臓器やホルモン器官と繋がっています。血液検査ではいくつか種類があり、知りたい病気や異常に合わせて血液検査の種類や項目を選択します。
- CBC検査・血液学検査(赤血球・白血球などの血液成分)
- 血液化学検査・生化学検査(血液中の糖質・タンパク質・酵素など)
- 免疫学検査(感染症・ホルモン・腫瘍マーカーや血中薬物濃度など自己免疫機能)
- アレルギー検査(ダニ・花粉・食物・アトピーなど)
CBC検査・血液学検査
CBC検査とも言われる血液学検査では、赤血球や白血球など血液を構成している成分について調べる血液検査になります。
- 貧血
- 血球形成の異常 など
血液化学検査・生化学検査
血液化学検査(生化学検査)では、臓器や器官の異常を検出する目的として行われるので、様々な項目を総合して判断されます。
- 糖尿病
- 肝臓や腎臓、胆道、膵臓などの臓器障害
- 動脈硬化
- 甲状腺疾患
- 痛風
- 心筋梗塞
免疫学検査・アレルギー検査
免疫学検査では、自己免疫やウイルス、感染症について、アレルギー検査では食べ物やハウスダスト、ダニ、花粉など体の不調の原因を特定します。
犬の血液検査の費用
血液検査だけなら2,000~10,000円
犬の血液検査の費用は、項目数によって変わってきます。
CBC(血液学)検査は1,500円前後で受けられることが多く比較的安価ですが、より病気や疾患の早期発見につながる生化学検査では5,000円前後の費用になります。健康診断の血液検査では生化学検査まで含んだプランが多いです。
なにかの病気や疾患の疑いで、1項目のみ検査するという場合は、600~1,000円程度の費用で受けられることもあります。
また動物病院によっても開きが大きいようです。その動物病院がどこまでの項目を調べることを基本プランとしているかによって、同じ検査名でも数千円~1万円以上の開きがある場合もあります。
犬の血液検査の検査項目
血液検査 | 項目名 | 日本語 | 犬の基準値 | 単位 | |
---|---|---|---|---|---|
CBC検査・血液学検査 | 血球計数 | WBC | 白血球数 | 6000~17000 | /μL |
RBC | 赤血球数 | 550~850 | ×104/μL | ||
HGB | 血色素(ヘモグロビン) | 12~18 | g/dL | ||
HCT | ヘマトクリット | 37~55 | % | ||
MCV | 平均赤血球容積 | 60~77 | fL | ||
MCH | 平均赤血球血色素量 | 19.5~26.0 | pg | ||
MCHC | 平均赤血球血色素濃度 | 32~36 | % | ||
PLT | 血小板数 | 20~40 | ×104/μL | ||
血液像 | NEUT | 好中球 | 46.3~73.6 3000~11800 | % /μL |
|
LYMPH | リンパ球 | 19.5~43.0 1000~4800 | % /μL |
||
MONO | 単球 | 3.1~6.9 150~1350 | % /μL |
||
EOSINO | 好酸球 | 1.2~9.3 100~1250 | % /μL |
||
BASO | 好塩基球 | 0.2 ~ 0.7 ~100 | % | ||
Ret | 網状赤血球 | ||||
血液凝固系検査 | PT活性度 | プロトロンビン時間活性度 | |||
PT INR | プロトロンビン時間INR | ||||
APTT | 活性化部分 トロンボプラスチン時間 | ||||
フィブリノーゲン | フィブリノーゲン | ||||
FDP | 血中フィブリン分解産物 | ||||
Dダイマー | 血中フィブリン分解産物 | ||||
ATⅢ | アンチトロンビンⅢ | ||||
血液化学検査・生化学検査 | CRP | C反応性蛋白 | |||
TP | 総蛋白 | 6000~17000 | /μL | ||
ALB | アルブミン | 2.6 ~ 4.0 | g/dL | ||
T-Bil | 総ビリルビン | ~ 0.5 | mg/dL | ||
D-Bil | 直接ビリルビン | ||||
CHE | コリンエステラーゼ | ||||
AST(GOT) | アスパラギン酸トランスアミナーゼ | 17~44 | U/L | ||
ALT(GPT) | アラニントランスアミナーゼ | 17~78 | U/L | ||
ALP _IFCC | アルカリホスファターゼ | ||||
γ-GTP | ガンマ・グルタミル トランスペプチターゼ | ||||
LAP | ロイシンアミノペプチタ-ゼ | ||||
LD _IFCC | 乳酸脱水素酵素 | ||||
CK(CPK) | クレアチンキナーゼ | ||||
CK-MB | CKアイソザイムMB | ||||
AMY | アミラーゼ | ||||
Fe | 鉄 | ||||
TIBC | 総鉄結合能 | ||||
BUN(UN) | 尿素窒素 | 9.2~29.2 | mg/dL | ||
CRE | クレアチニン | 0.40~1.40 | mg/dL | ||
UA | 尿酸 | ||||
Na | ナトリウム | 141~152 | mEq/L | ||
K | カリウム | 3.8~5.0 | mEq/L | ||
Cl | クロール | 102~117 | mEq/L | ||
Ca | カルシウム | 9.3~12.1 | mg/dL | ||
T-Cho | 総コレステロール | 115~337 | mg/dL | ||
TG | 中性脂肪 | 23~149 | mg/dL | ||
HDL-C | HDLコレステロール | ||||
LDL-C | LDLコレステロール | ||||
糖尿病関連検査 | GLU | 血糖 | 75~128 | mg/dL | |
HbA1c | ヘモグロビンA1C | ||||
IRI | インスリン | ||||
CPR | Cペプチド | ||||
腫瘍マーカー検査 | AFP | アルファフェトプロテイン | |||
CEA | 癌胎児性蛋白 | ||||
PSA | 前立腺特異抗原 | ||||
CA19-9 | 糖鎖抗原CA19-9 | ||||
CA15-3 | CA15-3 | ||||
CA125 | CA-125 | ||||
SCC | 扁平上皮癌関連抗原 | ||||
甲状腺ホルモン検査 | FT3 | 遊離トリヨードサイロニン | |||
FT4 | 遊離サイロキシン | 1.0~2.9 | µg/dL | ||
TSH | 甲状腺刺激ホルモン | ~0.50 | ng/mL | ||
感染症検査 | HBs-Ag | B型肝炎ウイルス抗原 | |||
HCV-Ab | C型肝炎ウイルス抗体 | ||||
HIV-Ab | HIVウイルス抗体 | ||||
TPPA | トレポネーマパリダム抗体 | ||||
RPR定性 | RPRカードテスト |
WBC(白血球数)
白血球数とは免疫機能に関わる検査項目で、高い場合には感染症や白血病やリンパ腫、低い場合にもリンパ腫の疑われます。
RBC(赤血球数)
赤血球は杯から得た酸素を取り込み全身の細胞に運搬する血液細胞であり、低いと貧血による立ちくらみやめまい、湿疹などが起こる可能性があります。
CREA(クレアチニン)
クレアチニンは、筋肉へのエネルギーの供給源であるクレアチンリン酸の代謝産物であり、筋肉内のタンパク質の老廃物です。
クレアチニンが低いと筋肉量の低下、高いと腎機能障害が疑われます。特にシニア期にかけて増えてくる腎臓病の診断でよく耳にする検査項目です。
CL(クロール・クロライン)
クロールが高すぎると嘔吐や下痢などで大量の水分を失った脱水状態、低すぎると塩分の摂り過ぎなどの可能性があり、嘔吐を招きます。
K(カリウム)
カリウムは低い値では下痢や、嘔吐、腎不全、また高い値では脱水、腎不全の可能性があります。カリウムの値は高くても低くても腎不全の疑いが出てきます。
NA(ナトリウム)
ナトリウムは低い値では下痢、嘔吐、高血糖、高脂血症、腎疾患、高い値では脱水、腎不全、胃腸の異常、糖尿病などが疑われます。
GLU(グルコース・血糖)
グルコースでは血液中のグルコース濃度、すなわち血糖値を知ることができます。血糖値が高いと糖尿病、甲状腺機能亢進症や副腎皮質機能亢進症、反対に低いと栄養失調や甲状腺機能低下症が疑われます。
PHOS(無機リン)
リンの値が高い場合は、高リン血症、リンの供給過剰、上皮小体機能低下症、また慢性腎臓病、腎不全の重症度の指標となります。
低い場合は、低リン血症、利尿薬の投与、ビタミンD欠乏、吸収不良、原発性上皮小体機能亢進症などの可能性が考えられます。
CA(カルシウム)
カルシウムの値が高い場合は、腎不全、副腎皮質機能低下症、高カルシウム血症、悪性腫瘍の可能性があり、低い場合は急性膵炎、腎不全、低蛋白血症、吸収不良、原発性上皮機能低下症などの疑いがあります。
TG(中性脂肪)
中性脂肪は血液中に含まれる脂肪の一種で、高値では特発性高カイロミクロン血症、特発性高トリグリセリド血症、急性膵炎、糖尿病、肝機能不全、甲状腺機能低下症などの疑いがあり、低値では蛋白漏出性腸症などの可能性があります。
T-CHO(総コレステロール)
総コレステロールは、血液中のコレステロールの総量を示した値で、高値では特発性高脂血症、脂肪血症、糖尿病、副腎皮質機能亢進症、甲状腺機能低下症、また低値では肝不全、小腸疾患による吸収不良などの可能性があります。
ALT(GPT)
ALTとは「アラニンアミノ基転移酵素」という肝臓に多く存在する酵素のことで、肝臓細胞がダメージを受けると血液中にALTが漏れ出し高値となるため、肝臓の異常を発見するために重要な検査項目となっています。
まとめ
- 血液検査には血液学検査、生化学検査、免疫学検査、アレルギー検査などがある
- 費用は血液検査だけなら2,000~1万円前後
- 血液検査では複数の検査項目の値を総合的に見て病気や疾患の可能性を判断する