犬が自分の体を舐めたり毛づくろいする行動(グルーミング)は、決して珍しいものではありません。
しかし、そのグルーミングが長時間にわたって続いていたり、特定の部位をしつこく舐めていたりするような過剰なグルーミングの場合、単なる清潔習慣ではなく、体や心に何らかの異常があるサインである可能性が高いです。
今回は、犬の過剰なグルーミング(自傷的な舐め行動)の原因、放っておくとどうなるか、そして飼い主ができる具体的な対策について解説します。
犬のグルーミングとは?正常と過剰の違い
正常なグルーミング行動
犬が体を舐めたり毛を整えたりするのは、ごく自然な行動です。例えば食後に口まわりを舐めたり、外出後に足先を舐めて清潔にするなど、日常の中に見られる軽いグルーミングは問題ありません。
また、リラックスした状態で時折毛づくろいをするのも正常な行動です。
過剰なグルーミング行動
一方で、以下のような行動が頻繁に見られる場合は過剰なグルーミングといえます。
- 同じ場所を執拗に舐め続ける
- 舐めた部位の毛が抜けて皮膚が赤くなる
- 舐めながらうなったり、イライラした様子を見せる
- 舐める行動が止められない(声をかけても再開する)
これらは「常同行動」や「舐め壊し」とも呼ばれ、ストレスや不調のサインである可能性があります。
犬が過剰にグルーミングをする原因とは?
皮膚の病気やアレルギー
皮膚炎、アレルギー(食物アレルギー、接触性アレルギー)、ノミ・ダニなどの寄生虫によるかゆみがあると、犬はかゆみを抑えようと舐め続けます。とくに脇の下、足先、耳の後ろなどが頻繁にターゲットになります。
慢性的な皮膚のかゆみは、放置すると感染症や脱毛の原因になります。
ストレスや退屈、不安
過剰なグルーミングは、精神的な不安や退屈からくる“ストレス行動”である場合も多いです。とくに留守番が長い、運動不足、環境の変化(引っ越し、家族構成の変化)などがきっかけになることがあります。
このような舐め行動は、「転移行動」と呼ばれるストレス解消手段であることが多く、やがて癖になることもあります。
痛みや違和感
関節炎やケガ、神経痛など、痛みや違和感のある部位を過剰にしつこく舐めるケースもあります。これは自分でケアしようとする自然な反応ですが、根本的な治療をしなければ症状は悪化していきます。
足先をずっと舐める、爪の根本を噛むようにして舐めるといった行動は、体に痛みを感じているのかもしれません。
ホルモンバランスの乱れ
内分泌系の異常(甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症など)によって皮膚の状態が悪化したり、違和感を感じやすくなったりすることで過剰なグルーミングが生じることもあります。
とくに高齢犬や避妊・去勢後の犬に多く見られます。
飼い主ができる過剰グルーミングの対策
まずは、動物病院で診断を
まずは動物病院で皮膚の状態を確認してもらいましょう。
アレルギー検査や、寄生虫の有無を調べる皮膚スクレーピング検査などによって、かゆみや炎症の原因を特定できます。原因に応じた適切な治療を受けることが、舐め行動の根本解決への第一歩です。
舐めグセ対策として環境を見直す
留守番時間が長い、刺激が少ない生活をしているなど、犬にとって退屈な環境になっていないかを確認しましょう。
散歩時間の増加、知育玩具の導入、ノーズワーク(嗅覚遊び)などを取り入れることで、舐める以外の行動に意識を向けさせることが重要です。
舐め防止グッズの活用
傷の悪化を防ぐ目的で、エリザベスカラーや専用の舐め防止スプレーなどを一時的に使用するのも有効です。
ただし、根本原因の解決にはならないため、獣医師やドッグトレーナーなど専門家と相談してうえで使用しましょう。
過剰なグルーミング中は反応しない
過剰な舐め行動に対して大声で叱ったり、過度に構いすぎたりすると、逆に行動が強化されてしまう場合もあります。
犬が過剰なグルーミングを始めても一切反応せず、犬が何もしていないとき、あるいは他のことに集中しているときに静かに褒めたり、遊んだり、おやつをあげましょう。そうすることで「舐めてもメリットがない」という学習をさせることができます。
まとめ
犬のグルーミングが過剰である場合、それは単なる癖ではなく、心や体からのSOSサインかもしれません。過剰なグルーミングはさまざまな要因が絡み合って起こるため、飼い主の早期対応が何より重要です。
犬が過剰にグルーミングをする原因を把握し、根気強く向き合うことが、舐め行動の改善につながります。