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犬が突然、「アオーン」と遠吠えをする姿を見たことはありませんか?普段は無口な子でも、ときに深夜や留守番中に遠吠えを繰り返すことがあります。夜中に起こされてストレス…。ご近所迷惑になるからやめてほしい…。と悩む飼い主さんも多いはず。
犬の遠吠えは単なる癖ではなく犬からのサインでもあり、すべてが問題行動というわけではありませんが、放置すべきでないケースも存在します。
この記事では、犬が遠吠えをする主な理由や、やめさせるべきかの判断ポイント、対処法を解説します。
遠吠えと無駄吠えの違いは?
どちらも鳴くという行動には変わりませんが、遠吠えと無駄吠えの違いは「行動の目的」と「伝えたい内容の明確さ」にあります。
遠吠え
➡本能に基づいた意味のある鳴き声のことで、犬にとって自然なコミュニケーション手段の一つ。「アオーーン」「ウォーーン」など長く伸びるような声。
無駄吠え
➡過剰かつ不適切なタイミングで繰り返し吠える行動のこと。明確な目的がなく、生活に支障が出やすいため問題行動と見なされることが多い。「ワンワン」「キャンキャン」など素早く短い声。
なぜ犬は遠吠えをするのか?
遠吠えには必ず原因があり、その背景を知ることで対処の糸口が見えてきます。
本能的な行動
犬の遠吠えは、祖先であるオオカミの習性を色濃く残した行動のひとつです。オオカミは群れとの距離を知らせたり、なわばりを主張したり、仲間を呼ぶために遠吠えを使ってきました。
年月が経った現代の犬も本能が完全に消えることはなく、人間にとっては「意味のない鳴き声」に聞こえても、犬にとっては明確な意図がある場合が多いのです。
孤独や不安からくる遠吠え
飼い主が外出している間や、夜の静かな時間に遠吠えが頻繁に見られる場合、それは犬が「孤独」を感じているサインかもしれません。とくに分離不安の傾向がある犬は、飼い主の不在に強いストレスを感じて声を上げます。
これは「退屈している」「かまってほしい」という欲求のあらわれであり、運動や遊びの時間が少ない家庭でとくに見られます。
音への反応
救急車や消防車のサイレン、家のチャイム、遠くの犬の鳴き声など、一定の周波数や刺激に反応して遠吠えを始める犬もいます。
これは仲間に応答するような反射的な反応であるため、トレーニングは必要ではなく、環境音への慣れによって改善することもあります。
遠吠えしやすい犬種は?
猟犬や警戒心が強い犬種
遠吠えは犬種や年齢を問わずにどんな犬でも行われるものですが、とくに下記の犬種は遠吠えをしやすい傾向があります。
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シベリアンハスキー、マラミュートなど
➡オオカミに近いDNAを持ち、遠吠えを本能的に行う犬種 -
ビーグル、バセット・ハウンドなど
➡猟犬として声を使って仲間と連携を取る習性がある -
柴犬、秋田犬など
➡警戒心が強く、異常を知らせる目的で遠吠えをすることがある
遠吠えしない犬もいる
遠吠えをほとんどしない犬もいます。
- 声が小さい・鳴きにくい犬種
(例:フレンチブルドッグ、グレートデーン、キャバリア) - 人と過ごす時間が長く、分離不安が少ない犬
- 外部刺激に対して鈍感、またはおおらかな性格の犬
- 十分な運動・遊び・交流がある犬
- 飼育環境が静かで落ち着いている家庭犬
こうした犬たちは、遠吠えする必要性を感じず、結果としてほとんど吠えない生活を送ります。
ただし、どの犬種であっても環境やしつけ次第で行動は変化します。普段遠吠えをしない犬が突然夜に長時間吠えるようになった場合は体調不良や精神的ストレス、老化などのサインかもしれません。
犬の遠吠えはやめさせるべき?やめさせなくていい?
犬の遠吠えは本能や感情の発散としてごく自然なことですが、すべての遠吠えを放置していいわけではありません。
ここでは「やめさせた方がいい遠吠え」と「無理に抑えなくてもよい遠吠え」の判断基準について整理します。
やめさせた方がいい遠吠え
- 夜間に長時間続く遠吠え
- 犬の遠吠えによりご近所トラブルが発生
- 分離不安や退屈による強いストレス
上記のような遠吠えの場合は、遠吠えをやめさせた方が良いでしょう。このような遠吠えは単なる癖ではなく、心のSOSである可能性があります。また飼い主にとっても生活に支障が出るような状況では、大きなストレスとなります。
やめさせる必要がない遠吠え
- 救急車のサイレン、近所の犬の声など一時的な反応
- 軽い興奮や嬉しさを表現する遠吠え
上記のような遠吠えの場合は、自然な反射的行動であることが多いため、無理にやめさせる必要がない遠吠えと言えます。個体差による表現行動のひとつであるため、心身に悪影響がなければ無理に矯正する必要はないでしょう。
判断のポイントは、遠吠えが
- 日常生活に支障をきたしているか
- 犬の健康や精神状態に悪影響があるか
です。
吠える理由を冷静に見極め、必要であれば獣医師やドッグトレーナーなど専門家の力も借りて対応することが大切です。
犬の遠吠えをやめさせる対処法
犬の遠吠えを抑えるには、根本的な原因を見極めることが最優先です。やみくもに叱るだけでは逆効果になることもあります。
生活環境を整える
まずは、犬が不安を感じない環境をつくることが重要です。長時間の留守番を避け、帰宅後にはたっぷりとスキンシップや遊びの時間をとるよう心がけましょう。また、知育トイなどで「ひとりでも楽しめる時間」をつくってあげることも効果的です。
刺激をコントロールする
外部からの音に反応するタイプの遠吠えには、遮音カーテンを使ったり、テレビや音楽で環境音をカバーする方法が有効です。外の景色が刺激になっている場合は、窓際から犬を離すなど、視界のコントロールも検討しましょう。
行動強化としつけ
遠吠えをしていないときに褒めたり、ごほうびを与えることで「吠えないことが良いこと」と学習させるトレーニングも有効です。一方、吠えたときに大きな声で叱ると、「飼い主が反応してくれた」と誤解して遠吠えが強化されることがあります。吠えても無反応を貫き、静かになったときだけ注目するようにしましょう。
遠吠えの仕方によっては病気の可能性も
下記のような場合は、認知症や病気のサインかもしれません。
- 高齢犬が夜間に急に吠えるようになった
- 昼夜逆転や徘徊を伴う遠吠え
- 遠吠えが苦しそう、かすれている、長時間続く
- 夜間に決まって吠えるようになった
これらは、認知症や神経系の障害、慢性疼痛、聴覚異常などが背景にある可能性があります。とくに高齢犬の場合、昼夜の感覚が狂うことにより夜間に遠吠えを繰り返す例が多く見られます。
こうした場合には、獣医師による診断を受け、必要に応じた治療や環境調整が求められます。
まとめ
- 犬の遠吠えは本能に基づく意味のある鳴き声
- 犬の遠吠えは本能だけでなくストレスや病気の可能性がある
- 犬種や年齢、性別を問わずどんな犬でも遠吠えをする
- やめさせるかどうかの判断基準は日常生活や健康状態を見極める