家の中や散歩中に犬同士がじゃれ合っているとき、「これは遊び?それとも喧嘩?」と見分けるのが難しくなったり、不安に感じた経験はありませんか?一見楽しそうに見えるやり取りの裏に、実はストレスや攻撃性が隠れていることもあります。
そこでこの記事では、犬の遊びと喧嘩を見分けるポイントや、喧嘩にならないための対策法について解説します。
「遊び」と「喧嘩」を見分ける重要性
犬は「遊び」と「喧嘩」を明確に分けない
犬は人間のように「これは遊び」「これは喧嘩」と明確に区別して行動するわけではありません。
多くの場合、遊びの中でテンションが上がりすぎると、無意識に攻撃的な行動が混ざることがあります。じゃれ合いから始まったやり取りが、どちらかのストレスや誤解をきっかけに喧嘩に発展するケースも少なくありません。
関係性の悪化を防ぐために
犬同士の関係性は、一度こじれてしまうと修復に時間がかかります。最初は仲良く遊んでいたのに、飼い主が小さなトラブルを見過ごしていたことで、次第に相手を避けるようになったり、攻撃的な態度をとるようになるケースも少なくありません。
とくに多頭飼いの場合、力関係や優先順位をめぐる争いが起きやすく、放置していると不信感やストレスが積み重なってしまいます。
犬同士が喧嘩になりやすい状況とは?
犬同士が喧嘩になりやすい状況を把握することで、喧嘩しそうになる前に止めることができます。とくに下記のような状況では、犬同士が喧嘩しやすい傾向にあります。
・食べ物やおもちゃ
➡普段は仲の良い犬同士でも争いになることがあります。とくにフードボウル、ガム、ボールなどはトラブルの元です。
・初対面や犬種の相性
➡気質の異なる犬同士では、遊び方のテンポや好みが違い、一方が楽しくても、もう一方がストレスを感じていることがあります。
・3頭以上で遊ぶとき
➡2頭では遊べていたのに、3頭以上になると一気にバランスが崩れることがあります。1頭が孤立したり、ターゲットになったりする状況では、喧嘩に発展しやすくなります。
「遊び」と「喧嘩」を見分ける5つのポイント
犬にとって「遊び」と「喧嘩」の境界はあいまいだからこそ、飼い主の見分ける力が重要となります。
家の中や散歩中に犬同士がじゃれ合いを始めたら、下記のポイントに注目して見分けましょう。
- 犬のボディーランゲージに注目
- 声のトーンと頻度
- 追いかけっこや取っ組み合いのバランス
- 途中でやめることができるか
- 噛み方や口の使い方
①ボディランゲージに注目
■遊びの場合
- 前足を地面につけて、胸を低く下げる
- お尻を高く持ち上げるポーズ
- 尻尾を振っていることが多い
- 口元が緩み、動きが弾むように柔らかい
犬がこのような仕草をしているときは、相手に「遊ぼう!」「これは攻撃じゃないよ」という合図を送っているサインです。初対面の犬同士が仲良くなりたいときや、飼い主に遊んでほしいときにもよく見られます。
■喧嘩の場合
- 唸り声を出しながら体を低く構える
- じっと見つめる
- 耳を後ろに倒す
一方で、下記のような仕草をしているときは、警戒や攻撃のサインです。また犬同士の距離感にも注目し、互いに自然に近づいたり離れたりできていれば遊びですが、どちらかが硬直して逃げ場を探しているようであれば、ストレスの兆候と言えます。
②声のトーンと鳴き方
■遊びの場合
- 声のトーンが高い
- 時折「キャン!」と鳴く
- クンクンと甘えるような音を出す
楽しくじゃれているときは、声のトーンが高く、時折「キャン!」と鳴いたり、クンクンと甘えるような音を出したりします。
■喧嘩の場合
- 低いうなり声が持続的に出る
- 喉の奥から鳴るような声
一方、喧嘩の兆候として上記のような声のトーンや鳴き方をします。
遊びの最中に一度声が荒くなっても、その直後に態勢を緩めたり、尻尾を振りながら距離を置く様子が見られれば喧嘩ではありません。しかし、唸り声が止まらず、動きも過剰に激しくなっている場合は、緊張感が高まり始めている証拠です。
③追いかけっこや取っ組み合いのバランス
■遊びの場合
遊びの中での追いかけっこは、犬にとって楽しいコミュニケーションの一つです。健康的な追いかけっこは互いの立場が入れ替わるのが特徴で、ある時は追う側、ある時は追われる側になることで遊びのテンポが保たれます。
転がし合いや取っ組み合いでも、どちらか一方が常に優勢ではなく、互いに譲り合うような様子があれば遊びと言えます。
■喧嘩の場合
しかし、一方的に追われる側がずっと逃げている状態や、逃げ道をふさがれてしまう状況が続くと、それは遊びではなく喧嘩に発展していると言えます。
片方がキャンキャン鳴き続けたり、地面に押さえつけられて動けない状態が続く場合はじゃれ合いを止めましょう。
④途中でやめることができるか
■遊びの場合
健全な犬同士の遊びでは、どちらかが「もうやめたい」と示したときに、もう一方がそれを受け入れる余裕があります。具体的には、相手から顔を背けたり、その場から距離を取ろうとした際に、追いかけずに様子を見る姿勢があるかどうかがポイントです。
■喧嘩の場合
逆に、相手がやめたがっているのにしつこく付きまとう、前足や口を使って無理に再開させようとする場合は、喧嘩へと発展する可能性が高くなります。
⑤噛み方や口の使い方
■遊びの場合
犬の遊びには、口を使ったやり取りが多く含まれます。遊びでの噛みは、あくまで「甘噛み」にとどまり、歯を軽く当てる程度で、痛みを伴わないのが基本です。口を開いてパクパクする仕草や、歯を見せ合ってじゃれ合うのも典型的な遊びの表現です。
■喧嘩の場合
しかし、噛む力が強くなったり、相手がキャンと鳴いているのに離さない、あるいは皮膚に傷をつけてしまうような噛み方は、本気の喧嘩の兆しと見なすべきです。とくに口角が吊り上がり、牙を剥き出しにしている場合は、明確な威嚇行動です。
喧嘩になってしまったときの対処法
大きな音や水で一瞬気を逸らす
犬同士の本気の喧嘩は非常に激しく、一瞬の判断ミスが大けがにつながることもあります。そんなとき、飼い主が素手で止めに入るのは極めて危険です。
そのため、
- 大きな音(声、拍手、水の音、金属音)を立てる
- ハーネスを持ち上げる
- 空のペットボトルを床に落とす
- 水スプレーを吹きかける
- 犬同士の間にものを挟む
などして、一瞬でも犬の意識を喧嘩から逸らすのが有効です。
大きな音を立てたりハーネスを持ち上げたり、水スプレーを拭きかけることで、犬は驚きによって動きが止まるため、気をそらせることができます。ただし、これはあくまで緊急時の応急措置であり、頻繁に使うと犬が慣れてしまったり、飼い主に対して不信感が生まれる可能性があります。
喧嘩の兆候を早期に察知し、そもそも発生させないことが第一ですが、いざという時の対処法として準備しておきましょう。
怪我をした場合はすぐに確認
喧嘩が終わった後、犬同士が一見落ち着いた様子に見えても、まずは体に怪我がないかを念入りに確認しましょう。とくに口元や耳、足先などは傷つきやすい箇所です。また、皮膚に傷がなくても、喧嘩の衝撃で内出血や打撲をしている可能性もあるため、翌日以降の様子も注意深く観察してください。
食欲が落ちている、元気がない、触られるのを嫌がるなどの変化があれば、必ず動物病院を受診しましょう。
今後の再会は慎重に
一度喧嘩をした犬同士を、すぐにまた同じ空間に入れるのは避けるべきです。
犬が「あの犬は怖い」「あの場は危険」といった印象が残っている場合、再会時に再び緊張状態となることがあります。再び会わせる場合は、まずはリードをつけたまま距離を保ってすれ違うだけの状況から始め、様子を慎重に観察します。お互いに落ち着いていれば、少しずつ距離を縮めていきましょう。
表情が硬い、しっぽが立っている、にらみ合っているといった兆候が出たら中止することが重要です。再会は、あくまで犬のペースに合わせることが成功のカギとなります。
まとめ
- 犬同士の関係悪化を防ぐために飼い主の見分ける力が大切
- じゃれ合いがヒートアップして喧嘩するケースが多い
- 見分けるには行動や仕草、声のトーン、噛み方に注目
- 喧嘩を止めるのは大きな音を出したりハーネスを持ち上げる