ドッグフードの原材料:トウモロコシ
トウモロコシの約6割は家畜用肥料へ利用
トウモロコシ(corn、maize)は世界三大穀物の一つで、現在は穀物の世界生産量第一位、ドッグフードでもよく利用される原材料です。
トウモロコシは飼料での消費量が多く、トウモロコシの約6割が動物たち食べる家畜飼料用、約3割がコーンスターチ、食用はたった4%ほどです。
消費量の約3割を占めるコーンスターチは、化粧品や工業製品、ドッグフードなどのペットフード飼料の原材料にも使用されます。
犬はトウモロコシを消化できない?
「犬は穀物を消化できない」は間違い
近年は、犬は穀物を消化できないという話がネットで多く見られますが「犬が穀物を消化できない」というのは間違いです。
トウモロコシを始め、穀物は加水・加熱でデンプンの結晶構造をゆるめ、消化のしやすい形にα化(粘化)させれば、犬もエネルギー源として消化・利用することができます(例:米を炊くとふっくら柔らかくなる)。
ドッグフードも加圧・加熱でα化されている
また、ドッグフードは製造工程の中で加圧・加熱を行うエクストルーダー処理でα化されるので、ドッグフードにトウモロコシや穀物が含まれていても、犬は問題なく消化することができます。
トウモロコシが避けられる本当の理由
しかしトウモロコシにはアレルギー性や遺伝子組み換えの心配、カビ毒のリスクもあるので、愛犬の健康や安全を考えるとおすすめとは言い難い食材です。
遺伝子組換えトウモロコシのリスク
トウモロコシの世界生産量第1位のアメリカでは、栽培するトウモロコシの88%が遺伝子組み換えされた品種です。
遺伝子組み換え作物は、ガンや白血病、アレルギーや不妊などの健康被害が懸念されています。分析試験や短期的な試験によって危険でないことは証明されているものの、犬の体への影響や長期的な摂取についてはまだ安心安全とは言い切れないのが現状です。
低タンパク質食になりやすい
トウモロコシは肉や魚に比べてタンパク質量が少なく、必須アミノ酸が少ないデメリットもあります。
タンパク質を構成する必須アミノ酸の一種「トリプトファン」は精神状態を安定させたりストレスケアにも有効とされており、2000年のアメリカ獣医学協会誌でも、トリプトファンの補給で犬の攻撃性が低下すると発表されました。攻撃性が高い犬や問題行動の多い犬には、トウモロコシ原料がメインのものより、アミノ酸がバランスよく配合された肉系のドッグフードがおすすめです。
コーンスターチは栄養が少ない?
また、トウモロコシはエネルギー源となるデンプンを始め、食物繊維や葉酸、ビタミンB1、ナイアシン、カリウムなど様々な栄養素が豊富に含まれていますが、トウモロコシデンプンを粉末状に加工した「コーンスターチ」は水分や他の栄養素がほとんどなくなり、全体の8割以上が炭水化物(でんぷん)で構成されます。
このためエネルギー源やカロリー摂取を目的とした原材料としては利用しやすい原材料ですが、そぎ落とされたビタミンやミネラル、食物繊維、タンパク質などは他の原材料や栄養添加物で補わなければなりません。
トウモロコシのカビ毒のリスク
また、穀物はカビ毒が発生しやすく、特にトウモロコシは、カビ毒の中でも特に毒性の強い「アフラトキシン」が発生しやすい作物です。
最近では2020年12月にスポートミックスというドッグフードからトウモロコシ原料が原因で高濃度のアフラトキシンが検出され、110頭以上の犬が死亡する悲しい事件がありました。
カビ毒はペットフード安全法によって上限値が定められていますが、上記の事件のように、危険性が認知され規制がされていても、普通にカビ毒入りのフードが販売され、命を落としてしまった犬がいることを考えると、警戒したい原材料の一つになるのではないでしょうか。
トウモロコシの量が多いドッグフードは激安?
トウモロコシは安価で安定的な供給が見込め、沢山使えば低コストでドッグフードの生産が可能なので、スーパーやホームセンターなどで販売されるいわゆる激安キャットフードはトウモロコシが第一原料になっているものが多いです。
ですがトウモロコシには安全面や栄養面での懸念点が多く挙げられるため、プレミアムフードやヒューマングレードなど、犬の健康や安全に配慮した原材料を使用したドッグフードでは、トウモロコシを不使用にした製品が多いです。
まとめ
- トウモロコシの約6割が家畜用飼料に使われている
- トウモロコシを多く配合したドッグフードは低コストで生産可能
- デンプンやビタミンが豊富、コーンスターチはほぼデンプン
- 犬もα化していれば消化可能
- トウモロコシは遺伝子組み換えされたものが多い
- アレルギーやカビ毒、栄養面での懸念点が多い