犬と暮らす生活は、心を豊かにしてくれるかけがえのないものです。しかし、犬と人との距離が近くなるほど、注意したいのが「人獣共通感染症」と呼ばれる病気です。これは、人にも動物にも感染する病気の総称で、国内外で多数報告されています。
今回は、とくに犬に関係する人獣共通感染症の症状や感染経路、予防策を解説します。
人獣共通感染症とは?
人獣共通感染症(ズーノーシス)とは、動物から人、あるいは人から動物へ感染する病気の総称です。ウイルス・細菌・寄生虫・真菌など多くの病原体が関与しており、世界では200種類以上が知られています。
犬などのペットが保菌している場合、直接的な接触だけでなく、排泄物や空気中の飛沫、ダニや蚊を媒介とした間接感染などもあります。感染しても動物側に症状が出ないケースもあるため、飼い主が気づかぬうちにリスクに晒されることも少なくありません。
主な人獣共通感染症と犬との関係
狂犬病
狂犬病ウイルスによる致死率の高い感染症で、主に犬から人へうつります。日本では狂犬病は根絶状態にありますが、海外では今なお発生しており、海外で咬まれて帰国後に発症した例も存在します。発症すると神経症状を呈し、ほぼ100%死亡するため、ワクチン接種が何より重要です。
パスツレラ症
犬の口腔内に常在するパスツレラ菌による感染症です。咬み傷や引っかき傷がきっかけで皮膚が腫れ、化膿したり、発熱・関節炎を起こすことがあります。高齢者や免疫力の低い人では重篤化することもあるため、傷を負った場合は早めの処置が重要です。
カプノサイトファーガ感染症
犬の唾液に含まれる細菌「カプノサイトファーガ・カニモルサス」が原因で、重篤な敗血症や髄膜炎を引き起こすことがあります。とくに免疫力が低下している人では、症状の進行が非常に早く、致死的になるケースもあります。犬とのキスや傷口を舐めさせることは避けましょう。
サルモネラ症
サルモネラ菌は犬を含む多くの動物の腸管に存在しており、糞便に排出されます。感染すると発熱や下痢、嘔吐といった胃腸症状を引き起こします。とくに子どもや高齢者では重症化することもあり、糞の処理や掃除の後には手洗いを徹底する必要があります。
回虫症(トキソカラ症)
犬の体内に寄生する回虫が、人の体内に入ることで「内臓幼虫移行症」や「眼幼虫移行症」などを引き起こします。幼虫が体内を移動して各臓器に炎症を起こすため、視力障害や神経症状が起こることも。犬の定期的な駆虫が予防の基本です。
真菌症(皮膚糸状菌症)
白癬菌などの皮膚糸状菌が原因で起こる皮膚病です。犬の被毛に付着した菌が人の皮膚に接触することで感染し、赤くかゆみのある円形の発疹が生じます。飼育環境の衛生とペットの体表の清潔が重要です。
人獣共通感染症の予防策
人獣共通感染症を過度に恐れる必要はありませんが、正しい知識と適切な予防策が飼い主とペットの健康を守る鍵になります。
まず大切なのは、定期的なワクチン接種と健康診断です。狂犬病をはじめ、ワクチンで予防できる病気はきちんと接種し、定期的な獣医師の診察で体調や口腔内の状態をチェックしましょう。
さらに、駆虫と寄生虫予防も不可欠です。ノミやダニ、回虫などは人への感染リスクを高めるため、動物用の予防薬を使用し、月に一度は皮膚や便の様子を確認しましょう。
衛生管理の徹底もポイントです。糞の処理後やペットに触れたあとは手洗いを習慣づけ、ケージやトイレ、食器なども定期的に洗浄・消毒します。
また、乳幼児や高齢者、免疫力が低下している人がいる家庭では、ペットとの接触内容を見直すことも重要です。顔を舐めさせたり、口移しで食べ物を与えるような行為は控えましょう。
まとめ
犬と暮らす喜びは何ものにも代えがたいものですが、その生活の中に潜む感染症リスクに目を向けることも、ペットを家族として迎え入れる責任のひとつです。
人獣共通感染症は、その多くが「防げる感染症」です。無理に接触を減らすのではなく、どうすれば感染を防ぎながら快適に暮らせるかを考えることで、飼い主自身も、そして大切なペットも健やかに過ごせる環境を整えることができます。


















































































































