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<ニュース>米国NY州では合法大麻がドッグフードに使用
引用元:大麻がクッキーやドッグフードに? ニューヨーク州「娯楽用大麻」合法化で期待と不安の声|TBS・JNN NEWS DIG
一部抜粋:ニューヨークで行われている展示会。所狭しと並ぶのは、大麻関連の製品です。ニューヨーク州では去年3月、21歳以上を対象に娯楽としての大麻の使用が合法化され、所持や自宅での栽培なども認められました。早ければ年末から来年にかけて、許可を得た小売店での販売開始も見込まれ、展示会には多くの製造メーカーが。誕生日などに贈るカードに合わせ、大麻もプレゼントということのようです。
このほか、大麻成分の入ったクッキーやドッグフードまでありました。ニューヨーク州によりますと、大麻ビジネスにより1年間で日本円にしておよそ455億円の税収が見込まれるほか、最大で6万人の雇用増加につながる可能性があるということです。
大麻(cannabis)について
大麻(cannabis)とは、中央アジア原産のアサ科アサ属の植物のアサ(大麻草)からとれる花冠や葉を加工したものを言います。
麻は日本に自生する植物で、日本では古くからしめ縄やお祓いなどの宗教儀式・神事目的、また麻布や魚網などの産業目的で使用されてきました。
当時、大麻は麻薬・吸引目的ではなく、使い勝手のいい丈夫な植物として特に危険のない身近な存在でしたが、1930年に旧麻薬取締規則が制定され、戦後1948年に制定された大麻取締法によって免許所持者以外の大麻の輸入・輸出・所持・栽培・譲渡・使用などが禁止されました。
大麻の危険性とデメリット
認知機能、学習、幻覚障害や酩酊状態
大麻は各国で規制が異なります。合法の国もあれば、違法の国もあるため、大麻はそこまで危険ではないと認識して軽い気持ちで手を出してしまう人もいますが、大麻は脳への悪影響を始め、様々な危険性が報告されています。
- 幻覚や妄想
- 酩酊状態
- 運動神経の障害(運転事故の発生リスクを高める)
- 聴覚や触覚の変化
- 精神依存性
- 統合失調症を悪化させる可能性
- 肺の防御力低下
- 気管支疾患の発生リスクを高める可能性
大麻に含まれる有害成分THC(テトラヒドロカンナビノール)は、脳内カンナビノイド受容体に結合し、神経回路を阻害します。神経回路に障害がでることで、認知機能や幻覚症状、酩酊状態などを引き起こします。
また、精神疾患や呼吸器疾患の悪化や発生リスクを高める可能性が報告されています。
長期的な摂取はより大きな障害につながる恐れがあり、使用を中止しても回復がのぞめない場合もあることから、日常生活にも支障が出る可能性があります。
大麻食品の誤食で痙攣・酩酊状態になったシベリアンハスキー
引用元:Siberian Husky Dog Eats Marijuana Edible
アメリカでマリファナ入りのお菓子を誤食してしまったシベリアンハスキーのLokiくん。痙攣症状が現れ、自分では立っていられない状態になり、舌をだらんとたらして眼の焦点が定まらず、酩酊状態が続いています。その後、獣医師の診察を受けて回復したそうです。
このような悪影響があることから、犬にとって治療目的ではない大麻や大麻加工品の給与は虐待だと捉える方もいます。
また今回は誤食でしたが、ドッグフードによる長期摂取の場合は慢性的な障害につながる可能性も拭えません。
日本で大麻入りドッグフードが販売される可能性
大麻を原料とする製品は基本的に輸入NG
大麻を原料とする製品については、大麻取締法の規制対象外のものから製造されたことが客観的に確認できない限り、大麻取締法の規制対象である「大麻」となり、輸入することは認められていません。
税関の公式サイトにも記載があるように、大麻製品は基本的に規制対象として輸入は禁止されているので、大麻合法国で大麻入りのドッグフードが販売されていたとしても、日本に正規輸入されてお店や通販サイトで販売されることはありません。
ただ、現在、アメリカのAmazonは大麻合法化法案への支持を表明し、議会への働きを行っていることから、今後アメリカではAmazonで大麻売買が手軽に行われるようになるかもしれません。
海外の大型通販サイトから気軽に大麻を購入できるようになると、大麻と知らずに誤って購入してしまったり、知識のない販売事業者が増えて大麻違法国にも並行輸入で発送を行い、密輸・トラブルに発展する可能性があります。
大麻草から抽出された「カンナビジオール(CBD)」入りドッグフード
CBDオイルは麻薬取締法上の大麻には該当しない
さきほど、基本的に大麻を原料とする製品は日本で販売されないと解説しましたが、大麻由来でドッグフードにも使用可能な原材料が存在します。
大麻草の茎や種子から抽出された「CBD(カンナビジオール)」は、麻薬取締法上の大麻には該当しません。このため健康食品や化粧品にも使用され、輸入や販売も可能となっています。
人への調査や研究結果から乱用や依存の報告はなかったことから、アメリカでも2018年に、欧州では2019年に医薬品として承認され、薬物規制に関する国際条約による規制もありません。
犬の抗てんかん薬、抗不安薬、鎮痛薬としてのCBDの有用性
それどころか、大麻由来のCBDオイルは犬に良い影響をもたらすという考察もあります。
引用元:カンナビジオール (CBD) の犬および猫に及ぼす行動学的影響:オープン臨床試験|日本補完代替医療学会誌
カンナビジオール(CBD)は大麻植物に由来する植物性カンナビノイド化合物であるが、テトラヒドロカンナビノールが有する精神活性作⽤は有していない。近年、CBDは医療および獣医医療における緩和な抗不安薬、抗てんかん薬、および鎮痛薬として注⽬されている。一方、CBDの犬および猫における行動学的影響はほとんど調査されていない。本研究では診断症状ごとに8頭の犬と4頭の猫を対象に非盲検試験を実施し、CBD製品の忍容性、安全性、および有効性や有⽤性について検討した。試験では葛藤関連、恐怖関連、反復的または自傷行為などの問題行動を伴う犬および猫に8週間、CBD成分として1回当たり0.15-0.85mg/kgを1⽇2回、空腹時に経口投与した。行動症状は、試験開始前(0日目)および2週後(14日目)、4週後(28日目)、または8週後(56日目)に評価した。有効性は、獣医師による観察結果および飼育者の満足度により検討した。CBD製品を8週間継続投与した12頭の動物のうち、4例の異常行動の発現量が75%以上減少し、6例が減少した(50%±25%)と評価された。
大麻由来のカンナビジオール(CBD)は、経口投与による抗不安薬、抗てんかん薬、および鎮痛薬として注目されています。猫4頭と犬8頭に対して8週間、試験を行った結果、12例のうち、10例で異常行動が減少し、うち4例は75%以上の減少が評価されました。
ただこの試験は個体数が少ないこと、また評価方法が飼い主の満足度であることは考慮しなければなりません。また、認知機能や知覚機能に悪影響がないかも考える必要があります。深刻な有害事象は認められなかったとありますが、認知機能に障害が出て、ただ反応が鈍くなっただけという可能性もあるのではないかと感じました。
まとめ
- NYでは大麻入りドッグフードが販売されている
- 脳や神経への影響、精神依存性が報告されている
- 医療目的で使用される場合もある
- 日本でも大麻由来のCBDオイルは配合可能
- CBDはてんかんや抗不安薬、鎮痛薬として注目されている