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犬がかかりやすい外耳炎(Otitis Externa)
外耳炎とは、犬の耳介から鼓膜までの外耳道(垂直耳道・水平耳道)で炎症が起こる疾患で、犬が最もかかりやすい病気に一つとされています。
外耳炎は人もかかりますが、犬や動物に多い皮膚疾患として知られています。
というのも、人の場合は耳道が鼓膜までほぼまっすぐに続くので、通気性がよく、菌が繁殖しにくい構造となっています。
ですが、犬の外耳道は図を見ても分かりますが、まっすぐな道ではなくL字型をしているので、人の耳道に比べると通気性が悪く、悪化もしやすいです。
放っておくと炎症は外耳に留まらず、中耳、内耳まで進行してしまう可能性があるので、犬が外耳炎になってしまったら、早期の対処、治療を行う必要があります。
外耳炎にかかりやすい犬種、耳の特徴
外耳炎になりやすい耳の形
犬の耳は犬種によって様々な形や構造があり、耳の形は6タイプがあります。
- ブリック・イアー(直立耳)
- バット・イアー(コウモリ耳)
- セミプリック・イアー(半直立耳)
- ブタン・イアー(半直耳、V字垂れ耳)
- ローズ・イアー(バラ耳)
- ドロップ・イアー(垂れ耳)
※太字が外耳炎になりやすい耳タイプ
比較すると、直立耳やコウモリ耳、半直立耳の犬は耳がピンと立っているので、耳の状態が確認しやすく通気性もいいので、外耳炎になりにくい傾向があります。
しかし6タイプの中でボタン・イアー、ローズ・イアー、ドロップ・イアーの3タイプの耳に該当する犬は、外耳炎にかかりやすく、発見までに時間がかかるので悪化もしやすいとされています。特にドロップ・イアーの犬は垂れた耳が愛らしいですが、耳道が狭く耳毛も多いため、他の犬より菌が増殖しやすく外耳炎を発症しやすい傾向があります。
外耳炎になりやすい犬種例
- ゴールデンレトリーバー
- ラブラドールレトリーバー
- アメリカンコッカースパニエル
- キャバリアキングチャールズスパニエル
- シーズー
- マルチーズ
- ブルドッグ
- パグ
- ミニチュアダックスフント
- テリア
- プードル 等
他、上記以外にも、耳の通気性が良くない犬種や、長毛の犬の場合は、外耳炎にかかりやすいと言われています。
犬の外耳炎の症状
- 耳のかゆみ、赤み
- 耳の痛み
- 後ろ足で耳を引っ掻く
- 耳の炎症(赤み、かさつき、耳垢、爛れ、膿、悪臭など)
- 頭を振る
- 耳を床や壁にこすりつける仕草
犬の外耳炎の原因
- ノミアレルギー
- 疥癬症(ダニ)
- 真菌症(マラセチア真菌症 等)
- アトピー性皮膚炎
- アレルギー
ノミアレルギー
犬にもっともよく見られる代表的な寄生虫がノミです。ノミによる皮膚疾患は、ノミに刺されるという物理的な刺激だけでなく、ノミの唾液中に含まれるタンパク質に対するアレルギー反応によっても引き起こされます。
このため、一匹のノミに刺されただけでもかゆみをともなう重篤な皮膚症状を引き起こすことがあります。
疥癬症
疥癬症は、ヒゼンダニの寄生によって感染する皮膚疾患で、犬の場合、イヌセンコウヒゼンダニによる寄生がほとんどです。強いかゆみを引き起こすのが特徴で、伝染するため散歩中や他の犬と触れ合った時に感染する可能性もあります。
真菌症(マラセチア真菌症)
真菌症は細菌感染による外耳炎とは異なり、健康な犬にも常在する菌が増えすぎたり、バランスを崩すことにより発症します。
代表的な真菌症には「マラセチア外耳炎」があり、マラセチアが増える原因としては、食物アレルギーやアトピー性皮膚炎、内分泌障害、代謝異常、免疫力低下、体調不良などがあります。
マラセチアは酵母様真菌の一種で、通常より増えると皮膚が脂っぽくなり皮膚がベタつき、赤みやかゆみを引き起こします。また、マラセチアの特徴として、黒っぽい湿った耳垢が増えて悪臭を発生させます。
食物アレルギー
食物アレルギーによる皮膚の炎症で外耳炎を併発することがあります。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎を発症している犬の多くが外耳炎を患っています。アトピー性皮膚炎による外耳炎が重度になると、耳道がふさがってしまうこともあり、そこまで重症化すると外科手術などが必要となります。
アトピー性皮膚炎のほとんどの犬が3歳までには発症が確認され、遺伝の他、花粉やダニなど複数の抗原によって反応が引き起こされるため、原因のアレルゲンの除去や完治は難しいとされています。
アトピーの好発犬種としては、以下が有名です。
- テリア系
- アイリッシュセッター
- ジャーマンシェパードドッグ
- ダルメシアン
- ミニチュアシュナウザー
症状は強いかゆみが特徴で、皮膚病変は経過によってさまざまな段階を示します。また、寄生虫あるいは細菌の感染などを併発するために他の皮膚病と誤診されやすいことも特徴です。
アトピー性皮膚炎の治療には、かゆみを抑えることを目的とした「副腎皮質ステロイドホルモン剤」の投与のよる対症療法や、抗原液を注射してアレルギー反応を低下させて根治治療をはかる減感作療法などの治療法があります。
犬の外耳炎の治療方法・治療費
基本的に、外耳炎は耳道内の汚れを取り除き、点耳薬や駆虫薬などの薬の投与で治療を行います。人間用の薬は人間用であって犬用ではないので、用量や使用方法も異なる可能性があるので、自分では判断せず、獣医師の指示に従って動物病院から処方されたものや犬用として販売されているものを使用しましょう。
重症度によっては外科手術が行われることもあり、ほか必要に応じて検査や食事療法等を行い、原因を特定したり回復のため療養します。
軽度であれば、診察と薬代合わせて約2,000~5,000円程で済みます。外科手術が必要になった場合、1、2万円程度で済むこともあれば約10~15万円以上の金額になることもあるので、一概には言えません。
犬の外耳炎の予防法
外耳炎の原因は様々ですが、飼い主さんにできる予防方法は、日々の耳のチェックとケアです。
外耳炎は耳の中の清潔を保つことで細菌が発生しにくくなるので、1~2ヶ月に1回くらいは耳掃除を行いましょう。耳を触られるのをどうしても嫌がる犬の場合は、動物病院での定期検診や普段通っているペットサロンでお願いするのもいいかもしれません。
また、小さい頃から耳のチェックや掃除に慣れておかないと、大きくなってから耳を触られたりチェックされるのを嫌がることがあります。
普段から耳の状態が確認できないと、悪化するまで気付けないので、愛犬との触れ合いの中で、飼い主さんが耳に触れる機会をつくり、耳の中をチェックしたり掃除できるようにトレーニングしていくといいかと思います。
まとめ
以上、今回は犬の外耳炎についてご紹介しました。犬の外耳炎は特にかかりやすいので、耳の穴が見えにくい垂れ耳や長毛種の犬は要注意です!
外耳炎まで発展してしまうと、犬も痛みや激しいかゆみをともなって見ているだけで可愛そうなので、なるべくこまめにチェックして、外耳炎になったら早めに動物病院を受診しましょう。