ドッグフードの原材料:しいたけ(Shiitake)
しいたけ(椎茸)とは独特の香りと旨味が特徴で、日本や中国を中心に古くから食されてきました。「椎茸業者は風邪知らず」という言葉があるように、しいたけを扱う業者や生産者は特に風邪をひきにくいと言われています。
しいたけは低カロリーでありながら、食物繊維やビタミンD、ビタミンB7(ビオチン)、βグルカンなどの栄養素を豊富に含み、免疫力向上や腸内環境の改善に役立つとされています。
特に高齢犬や免疫力が低下しやすい犬の食事に取り入れることで、健康維持のサポートが期待できます。
この記事では、しいたけの栄養素や健康効果、与え方の注意点について解説します。
しいたけが原材料のドッグフード例
原材料では乾燥しいたけが使用される
ドッグフードの原材料に使用されるしいたけは、乾燥しいたけの粉末やエキスの形で配合されることが一般的です。
それは、乾燥しいたけは生しいたけに比べて
- 水分が抜けることで栄養が凝縮される
- 保存期間が長くなり、品質管理がしやすい
- 生の食物繊維は硬いが、粉末なら負担が少ない
- ドッグフードの風味や旨味が強くなり、嗜好性が高まる
という理由であるためです。
しいたけが原材料のドッグフード例
しいたけは様々なドッグフードやおやつ、サプリメントの原材料に使用されています。特に犬の免疫力向上や腸内環境の改善を目的とした製品にみられます。
原材料欄には、しいたけ、干ししいたけ、しいたけエキス、しいたけパウダーなどと表記されます。
- やずやのプレミアムワン
- ドッグフード うまか
- 和漢みらいのドッグフード
- ベジタブルサポート 顆粒タイプ など
しいたけの栄養素と犬への健康効果
下表は、生しいたけと乾燥しいたけ100gあたりの栄養素です。
生しいたけ | 乾燥しいたけ | ||
---|---|---|---|
エネルギー | 25 | 258 | kcal |
タンパク質 | 3.1 | 21.2 | g |
炭水化物 | 6.4 | 62.5 | g |
カリウム | 290 | 2200 | mg |
鉄分 | 0.4 | 3.2 | mg |
ビタミンD | 0.3 | 17.0 | μg |
ビオチン | 7.6 | 41.0 | μg |
水溶性食物繊維 | 0.4 | 2.7 | g |
不溶性食物繊維 | 4.1 | 44.0 | g |
※出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
抗ウイルス作用
椎茸の水抽出液がインフルエンザウイルスに対して抗ウイルス作用を持つことを示唆する研究があります。
マウスを用いた試験で、しいたけの胞子成分の水抽出液がインフルエンザウイルスに対して強い抗ウイルス活性を示したと報告されています。この研究では、胞子成分の水抽出液が特に有効であり、毒性も低いことが確認されました。
これはマウスによる研究ですが、犬にも応用できる可能性が高いです。
しいたけ特有成分「エリタデニン」
しいたけ特有の成分「エリタデニン」には、血清脂質レベルを低下させる作用があります。
血清脂質レベルの低下とは、血清脂質(総コレステロール・中性脂肪・リン脂質)の濃度が減少することを指します。
肥満傾向のある犬や、運動不足の犬、高脂肪・高カロリーな食事をしている犬、代謝が低下する高齢犬は中性脂肪が高いと肥満や健康リスクが増加するため、適切に管理することが重要となります。
また、コッカー・スパニエルやミニチュア・シュナウザー、ビーグルなどの犬種は脂質の代謝がうまくいかず、中性脂肪が高くなりやすい傾向があります。
参考:本態性高圧自然発症ラットの血圧および血清脂質レベルに及ぼす自己消化処理したシイタケの影響
抗酸化作用のある「エルゴチオネイン」
エルゴチオネインとは強力な抗酸化作用を持つアミノ酸の一種で、特にきのこ類に多く含まれています。
- 抗炎症作用
- 抗酸化作用
- 脳細胞を酸化ストレスから守る
- 免疫機能の強化
高齢犬や肥満傾向の犬、ストレスを感じやすい犬、皮膚や関節のトラブルが多い犬などは抗酸化作用を得ることが重要です。
免疫力向上の「βグルカン」が豊富
βグルカンとは多糖類の一種で、犬の免疫機能を向上させる成分として注目されています。
特にしいたけには「β-1,3-グルカン」と「β-1,6-グルカン」が含まれており、これらが免疫細胞を活性化します。
βグルカンは腸内の免疫細胞に作用し、マクロファージやナチュラルキラー(NK)細胞 を活性化させ、体の防御力を高める働きがあります。これにより、風邪やウイルス感染の予防、アレルギーの抑制、抗腫瘍作用が期待されています。
また、βグルカンは食物繊維の一種であり、犬の腸内環境を整える効果もあります。便秘の改善や善玉菌の増加を促し、消化機能の向上にも期待できます。
犬にしいたけを与える注意点
過剰摂取を避ける
しいたけは犬にとって有毒な成分は含まれていませんが、過剰に与えると消化不良を起こす可能性があります。
特に乾燥しいたけは栄養が凝縮されているものの、必ず水で戻してから与えましょう。
アレルギーの可能性
しいたけは犬がアレルギーを発症しにくい食べ物の一つですが、可能性はゼロではありません。初めて与える際は少量からスタートし、食べたあとは異変がないか確認しましょう。
しいたけは散歩で出合う?

しいたけは、広葉樹の倒木や枯れ木に発生する木材腐朽菌です。主に春(3~5月)と秋(9~11月) に発生することが多く、特にクヌギやコナラ、シイ、ミズナラなどの樹木を好んで生えます。
しいたけは一般的な散歩コース(舗装道路や公園)では出合うことはほぼありません。しかし、里山や雑木林、湿度が高い森や沢沿い、伐採された木が放置されているエリアなどを散歩する場合はまれに見つかる可能性があります。
自生のしいたけを見つけても安全性が保証されていないため、採取や食用は避けましょう。特に、しいたけに似た外見の毒きのこ(ツキヨタケなど) もあるため、専門知識がない場合は触れずに観察するだけにとどめるのが無難です。
まとめ
- ドッグフードの原材料は乾燥しいたけが使用される
- しいたけの配合目的は免疫力向上や腸内環境改善が主な目的
- 抗ウイルス作用や中性脂肪の低下などの健康効果がある
- 場所によっては自生しているため、散歩の際は注意する