ドッグフードのグレープフルーツ。原材料の使用は大丈夫?抽出物との違いは?健康効果や危険性について

ドッグフードのグレープフルーツ。原材料の使用は大丈夫?抽出物との違いは?健康効果や危険性について

ドッグフードの原材料:グレープフルーツ(grapefruit)

グレープフルーツは柑橘類の一種で、甘酸っぱい風味と豊富な栄養素が特徴の果実です。果肉は黄色やピンク色で、果汁はジュースや調味料としても広く利用されます。

主にビタミンCや抗酸化物質、カリウムを多く含み、免疫力向上や心血管の健康サポート、疲労回復などに役立つとされています。一方で、果皮や種子にはリモネンソラレンなどの成分が含まれ、猫にとっては中毒となります

この記事では、ドッグフードの原材料に使用されるグレープフルーツの目的や犬における健康効果、懸念点について解説します。

ドッグフードの原材料に使用して大丈夫?

「グレープフルーツは犬にとって中毒成分が含まれている」「犬はグレープフルーツを食べてはいけない」とされていますが、グレープフルーツを原材料に使用しているドッグフードやデンタルケア製品があります。

グレープフルーツは、ドッグフードの原材料に使用しても大丈夫なのでしょうか?

実は、ドッグフードに使用されるグレープフルーツには、グレープフルーツそのものと、グレープフルーツ抽出物があります。その違いについてご紹介します。

グレープフルーツそのものの使用は推奨されない

グレープフルーツはミネラルやビタミンCなどの栄養が豊富に含まれていますが、下記に挙げた理由により、グレープフルーツそのものの摂取や原材料に使用することは推奨されていません。

①中毒成分リモネン

リモネンは柑橘類の果皮に多く含まれる天然のモノテルペン化合物で、爽やかな柑橘系の香りの主成分です。主にグレープフルーツやオレンジ、レモンの皮に豊富に含まれ、食品や香料、清掃用品、アロマオイルなど幅広い分野で利用されています。リモネンは抗菌・抗炎症作用や抗酸化作用を持ち、食品では保存料や香料として機能します。また、溶媒特性を活かし、工業用洗浄剤にも使用されます。

しかし犬にとっては代謝が難しく、大量摂取すると中毒症状(嘔吐や下痢、神経症状)を引き起こす可能性があります。人間には比較的安全とされていますが、皮膚刺激やアレルギー反応を示す場合もあるため、使用には注意が必要です。

②ソラレン

ソラレンとは植物に含まれる天然の化合物で、とくにグレープフルーツやライムなどの柑橘類や、パセリやフェンネルなどのセリ科の植物に多く含まれます。ソラレンは光感作性を持つ化合物で、紫外線を吸収すると活性化し、DNAに結合して細胞の機能を変化させます。

しかし食品や化粧品に含まれる場合、紫外線に当たると皮膚炎や色素沈着を引き起こすリスクがあるとされています。とくに犬には毒性を示す可能性があり、摂取や皮膚接触に対する管理が重要です。

③酸性度が高い

グレープフルーツは他の果物と比べると酸性度が高いため、胃壁を刺激して胃酸分泌を過剰に促すことで嘔吐や胃炎、下痢などの症状を引き起こす恐れがあります。とくに胃腸が弱い犬や高齢犬には影響が大きいとされています。

また消化酵素の働きを阻害してしまうため、栄養素の吸収効率が低下する可能性があります。

④糖度が高い

グレープフルーツは他の果物と比べると果肉や果汁に含まれる糖度は低いですが、過剰に摂取すると余分なエネルギーとして体脂肪に蓄積される可能性があります。

とくに日常的にカロリー摂取が多い犬や、運動量が少ない犬は肥満や糖尿病、心臓病のリスクが高まります。

「グレープフルーツ抽出物」は大丈夫

一方で、グレープフルーツ抽出物は果実や種子から特定の有効成分を抽出したものを指します。抗酸化物質であるフラボノイドビタミンCが豊富で、免疫力向上や老化防止、心血管の健康サポートに役立ちます。

リモネンやソラレンなどの有害成分は製造工程で取り除かれるため、グレープフルーツそのものより安全性が高いです。安全に犬の健康をサポートできる成分として注目されています。

グレープフルーツ抽出物に含まれる抗酸化成分は、ドッグフードの酸化を抑制する自然な保存料として機能します。製品の鮮度を長期間保つ目的で原材料に使用されることもあります。

また、グレープフルーツ抽出物は食中毒の原因であるノロウイルスに対してに対する不活化効果を有することが報告され、食品業界で注目されています。

参考:グレープフルーツ種子抽出物および配合製品中の合成殺菌剤の調査

グレープフルーツが原材料のドッグフード、製品例

グレープフルーツにはリモネンやソラレンなどの中毒成分が含まれていますが、グレープフルーツ抽出物には含まれていないため、さまざまなドッグフードやデンタルケア商品などの原材料に使用されています。原材料欄にはグレープフルーツ、グレープフルーツ抽出物、グレープフルーツ種子エキスなどと表記されています。

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グレープフルーツの栄養と犬における健康効果

ドッグフードの原材料にはグレープフルーツそのものではなく抽出物が使用されるため、こちらでは抽出物に豊富に含まれるフラボノイド(ナリンギン、ヘスペリジン)やビタミンCの健康効果についてご紹介します。

フラボノイド

フラボノイドとは植物由来のポリフェノールの一種で、柑橘類や茶葉、ベリー類などに多く含まれています。

フラボノイドは体内の活性酵素の働きを抑制し、細胞の酸化ストレスを軽減します。これにより老化の進行を遅らせたり、慢性疾患(心血管疾患や関節炎)を低減します。

また免疫系の活性化により感染症や炎症に対する体の抵抗力を高めたり、血液循環の改善を行って疲労回復を促進する効果があります。

ビタミンC

ビタミンCはフラボノイド同様、強力な抗酸化物質なので、活性酵素の除去による老化予防や、免疫力向上などの効果を持ちます。またビタミンCはコラーゲンの生成を助けるため関節や骨の健康維持に効果的で、とくに関節炎の予防につながります。

犬は人間と違い、体内でビタミンCを合成する能力を持っていますが、加齢やストレス、病気などの影響で合成能力が落ちていきます。そのため、とくに高齢犬は食事からの摂取を怠らないように気を付けなければなりません。

まとめ

  • グレープフルーツそのものを原材料に使用するのは推奨できない
  • グレープフルーツは酸性度や糖度が高い
  • グレープフルーツ抽出物のリモネンやソラレンは製造工程で除去される
  • グレープフルーツ抽出物はノロウイルスに対して不活化効果がある
  • グレープフルーツ抽出物はフラボノイドやビタミンCが豊富

ABOUTこの記事をかいた人

古川菜々

愛玩動物飼養管理士2級、ペットセラピスト、ペット看護士、愛犬飼育スペシャリスト、ドッグフード勉強会ディレクターとして、ドッグフードに関する情報を提供しています。帝京科学大学アニマルサイエンス学科卒業。文章を通してわんちゃんの魅力を発信し、また多くの飼い主さんの悩みや不安を解決することで、飼い主さんとわんちゃんの幸せのお手伝いになれば嬉しいです。