今回はドッグフードの増粘安定剤について紹介していきたいと思います。
ドッグフードの増粘安定剤の働き
とろみや粘り気をつける増粘安定剤
増粘安定剤は、ドッグフードの食感を調整するためにとろみや粘りをつける添加物です。同じ増粘安定剤でも用途によって粘りやとろみをつける増粘剤、形が崩れないよう接着する安定剤、プルプルとしたゼリー状にするゲル化剤があります。
ペットフード安全法で用途と添加物名の記載が義務
愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(ペットフード安全法)によって、ドッグフードに使用した増粘安定剤は原則として使用したすべての添加物の用途名と添加物名の両方の記載が必要です。
ドッグフードの原材料名欄に記載する場合、たとえば「増粘安定剤(グアーガム、キサンタンガム)」と表記されるので、増粘安定剤として使用される添加物は一目で分かります。
ドッグフードに使用される増粘安定剤
次からはドッグフードで使用される代表的な増粘安定剤を紹介します。
増粘多糖類
増粘多糖類は複数の糖で構成されている水溶性の糖類の総称なので、ペクチン、カラーギナン、キサンタンガム、グアーガム、カルボキシメチルセルロースなども増粘多糖類に含まれます。
増粘安定剤は増粘多糖類と表現されることが多く、どの水溶性糖類かまでは原材料名表示では分からないことが多いです。
基本的に安全なものになりますが、どのような種類の添加物をいくつ使用しているか特定できないことについては懸念点になります。中には増粘多糖類とした上で()に具体的な物質名を表記しているメーカーもあります。
デンプン(加工でんぷん)
デンプンは糊料としても利用される粘り気を出す増粘剤の一つです。
ドライタイプのドッグフードには増粘安定剤としては含まれていませんが、芋類や穀類などに含まれるデンプンが熱処理によってα化し粘性が出ることによって粒状に成型することができます。この植物由来のデンプンを利用して作られた添加物が「加工でんぷん」です。
加工デンプンは他成分と合成した物質になりますので、複数の種類がありますが、加工デンプンの安全性試験成績を評価した結果で、発がん性や生殖発生毒性及び遺伝毒性はないと報告されており、人に対しては基本的に安全とされています。
ただ、ヒドロキシプロピルデンプンとヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプンは、「プロピレンオキシド」が処理で使用される際、残留する可能性があります。プロピレンオキシドは発がん性が懸念されており、国際がん研究機関はグループ2Bに分類しています。
このためプロピレンオキシドが残留する可能性のあるヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンは、乳幼児向け食品には用いるべきでないとされています。
ペクチン
ペクチンは、植物の葉や茎、果皮に多く含まれる複合多糖類で、天然由来の増粘多糖類として利用されています。
リンゴや柑橘系フルーツ(グレープフルーツ、レモン、オレンジ)、ビートパルプの原料となるサトウダイコンなどから抽出されます。ゼリー状に固める作用があるため、増粘多糖類の中でもゲル化剤に分類されます。
ペクチンは水溶性食物繊維の一つで、腸内環境を整える作用も期待できます。
果皮からとれる天然由来の既存添加物なので基本的に安全な増粘安定剤ですが、果実を利用するため、栽培で利用される農薬の残留が懸念される場合もあるようです。
キサンタンガム
キサンタンガムは、デンプンを細菌で発酵させて作られる天然由来の増粘剤で、とろみや粘性を出す増粘剤として利用されることが多く、水を混合すると粘性を発揮するので、ドッグフードでもグアーガムと一緒に増粘安定剤としてウェットタイプのドッグフードに使用されることがあります。
ただキサンタンガムは難消化性の性質を持つので、人には影響はないと考えられていますが、犬はキサンタンガムの含有量が多すぎると下痢や軟便の症状が出ることが報告されています。
グアーガム
グアーガムとは「グアー(Guar)」という豆からとれる天然由来の増粘安定剤で、キサンタンガムと一緒に配合されることが多く、化粧品や薬にも使用されます。グアーガムは水溶性食物繊維の一つでもあり、血糖値上昇の抑制やコレステロール低下、便通改善などの効果も期待されています。
カラギーナン
カラギーナン(カラギナン)は紅藻類という赤みのある藻からとれる天然由来の増粘剤で、ゲル化剤、増粘剤、また食物繊維源としてもドッグフードによく用いられます。
げっ歯類(ネズミやモルモット)の動物に対しては、炎症や発がん性があると報告されていますが、人や他動物に対しての毒性はないと考えられています。
カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)
カルボキシメチルセルロースナトリウムは、パルプに化学物質を混ぜてつくられる水溶性のセルロース誘導体です。
指定添加物(合成添加物)に登録されていますが、毒性はなく安全性が高いものとして増粘剤、安定剤、乳化剤など食品から医薬品まで様々な用途に利用されています。
プロピレングリコール※
プロピレングリコールは、猫が溶血性貧血を引き起こすため、猫用製品やキャットフードでは使用禁止の添加物です。
ただ犬に対しての毒性は認められて折らず、ドッグフードへの使用は禁止されていません。犬と猫の両方を飼われている家庭は、プロピレングリコール入りのドッグフードを猫が誤って口する可能性があるので特に注意しましょう。
まとめ
- ウェットタイプのドッグフードでよく見かける
- 増粘安定剤はとろみや粘りをつける
- 基本的に植物由来が多い(天然添加物)
- 安全な添加物が多いが一部発がん性がある種類も
- 増粘多糖類は物質名が特定できない