また、大豆は高栄養である一方、大豆がアレルゲンになる食物アレルギーや、プロテアーゼヒビターによるタンパク質分解の阻害なども話題に上がります。そういった不安なところも含めて、実際のところ犬にとって大豆はどのような食べ物なのか、ご紹介してきたいと思います。
ドッグフードの大豆(SOY)について
高タンパクで「畑の肉」と言われる大豆
農作物として世界中で広く栽培されている大豆。納豆、豆腐、おから、豆乳、きな粉、醤油、味噌など、古くから様々な食品や調味料に利用されてきました。
大豆は、現在もスーパーフードとして注目されており、肉に匹敵するほど多くのタンパク質を含んでいます。このことから大豆は日本では「畑の肉」とも呼ばれています。
大豆生産量の第1位はブラジルで、米国、アルゼンチンと南アメリカ大陸の国がトップ3を占めていますが、日本は大豆の輸入の大部分を中国から仕入れています。
大豆のドッグフードや犬用おやつへの利用
ドッグフードでも原材料として様々な形の大豆が使用されています。大豆は低コストで生産者やメーカー側も非常に使いやすい原材料の一つです。
総合栄養食のドッグフードでは、脱脂大豆(大豆ミール)やおから、きな粉など食品の副産物として生成される食材を利用することが多く、おやつではペット用納豆やフリーズドライの豆腐なども販売されています。
- 大豆
- 大豆ミール(脱脂大豆)
- おから(おからミール)
- きな粉
- 大豆油
また、大豆を原料にした大豆レシチンは、乳化剤としてウェットフードや、ソフトウェットフード、ジャーキーなどに利用されています。
しかし、最近は「大豆不使用」を売りにしたドッグフードが増えてきています。その理由は大豆のデメリットや注意点でご紹介したいと思います。
犬に大豆製品を与えても大丈夫?
加熱していればOK
愛犬が大豆アレルギーでなければ、大豆製品を与えることは基本的に問題ありません。加工された大豆はほとんどが加熱されているので与えてOKな食材です。ただ、少量でも塩分が非常に高い味噌や醤油などの調味料はNGです。
プロテアーゼヒビターは加熱で失活
また、生の大豆にはタンパク質の分解酵素を妨害してしまうプロアテーゼヒビター(トリプシンインヒビター)という物質が含まれています。
このため、生の大豆は愛犬には与えるべきではありませんが、プロアテーゼヒビターは加熱すれば壊れます。このため、上記であげたような大豆製品はほとんどが加熱加工を経て製品化されているので、プロアテーゼヒビターは失活しています。
また、大豆を使用したドッグフードも、製造過程で必ず加熱加工が加えられるので心配ありません。
大豆の栄養素
成分値(100g) | 大豆 | おから | きな粉 | 納豆 | 豆腐 |
---|---|---|---|---|---|
タンパク質 | 35.3g | 6.1g | 35.5g | 16.5g | 6.6g |
脂質 | 19g | 3.6g | 23.4g | 10g | 4.2g |
炭水化物 | 28.2g | 13.8g | 31g | 12.1g | 1.6g |
代謝エネルギー (100gあたり) | 417kcal | 111kcal | 437kcal | 200kcal | 72kcal |
大豆イソフラボンの効果に注目
大豆イソフラボンは、ポリフェノールのフラボノイドの一種になります。イソフラボンは、女性ホルモンの「エストロゲン」と形が類似していることから「植物エストロゲン」とも呼ばれています。
類似しているだけでなく、イソフラボンはエストロゲンと同じ働きを担うので、犬の骨粗鬆症の予防、大豆イソフラボンが骨粗しょう症、乳がん、前立腺がんなどの予防効果が期待されています。
筋タンパク質の合成を促進するロイシンが豊富
大豆は全体的にまんべんなく栄養価が高い食材と言われていますが、特に「ロイシン」という必須アミノ酸が豊富に含まれています。
ロイシンは、筋肉に多く含まれるBSAA(分岐鎖アミノ酸)で、体内の筋タンパク質の合成を促進する働きもある体に必要不可欠な成分です。犬の必須アミノ酸の一つであり、ドッグフードの成分基準にも最低基準が定められています。
高齢期の犬は筋肉量が減少するので、特にロイシンは高齢期に積極的に摂取したい栄養素の一つです。
大豆の注意点とデメリット
メチオニンやシステインは少ない
画像引用元:改訂 日本食品アミノ酸組成表について
大豆には動物原料に匹敵するほどタンパク質量が多く含まれています。しかしタンパク質を構成しているアミノ酸のバランスがいいとは言えません。
1973年の基準では大豆のアミノ酸スコアは86でしたが、改訂されたことにより、現在は鶏肉や卵と同じ100という満点評価となっています。しかしこれはヒトの消化吸収を加味して変更された値であり、犬や他の動物にすべてに満点があてはまるわけではありません。
実際のところ、アミノ酸組成を制限アミノ酸であるメチオニンに対する比で表したアミノグラムの表では、リシン(リジン)は非常に多く含まれますが、大豆に含まれるメチオニンやシステインは少なく、決してバランスよく配合されているとは言えません。
しかしこの大豆のアミノ酸を補うものとして、メチオニンが多くリジンが少ない米などの炭水化物が良いとされており、人が納豆と白米を組み合わせた納豆ごはんは、理にかなった組み合わせと言えます。
大豆の遺伝子改良や食物アレルギー
大豆は南米や中国での生産が多いですが、アメリカや中国では大豆の遺伝子改良が進んでいます。遺伝子改良によって、より強く丈夫で育てやすい大豆を開発・生産できますが、遺伝子改良によって原種よりも食物アレルギーが出やすくなる可能性が指摘されています。
このためGMOフリー(遺伝子組み換え原料不使用)のドッグフードも見られますが、大豆を使用する場合、遺伝子改良が繰り返された原料が混入している可能性は高いと言えます。
また、大豆は遺伝子組み換えでなかったとしても、抗原となるタンパク質の含有量が多いため、他の植物に比べてアレルギーのリスクが高く、グレインフリーと合わせて大豆を不使用にしたドッグフードも増えてきています。
大豆の嗜好性はやや低い
大豆は犬にとって嗜好性が高い食材ではありません。大豆には植物性タンパク質が豊富に含まれるので、ヴィーガン食で大豆ミートが利用されることもありますが、食いつきは肉や魚には劣ります。
まとめ
- 大豆は肉などに匹敵するほど高タンパク質
- イソフラボンやナットウキナーゼ、サポニン、レシチンなどが豊富
- 犬に対しても様々な働きや効果が期待できる
- アミノ酸スコアは100だが、リジンの割合が非常に高く、メチオニンなどは低い
- 犬の食物アレルギーや嗜好性、アミノ酸バランスなどのデメリットもある