犬が吐くこと自体は大きな問題ではない
犬や猫の嘔吐は生理現象のひとつ
人は体調不良や風邪、胃腸炎や感染症など病気にかかった時くらいしか吐くことはありません。
しかし犬や猫に関しては、嘔吐は生理現象の一つで、吐くという行為自体は、そこまで異常や深刻なことではありません。特に猫は毛玉を吐く目的でしょっちゅう嘔吐しますが、犬も自身の被毛や飼い主さんの髪の毛、またカーペットやマット、洋服など飲み込んでしまった繊維を毛玉として吐き出すことがあります。他にもおもちゃや道ばたの植物の誤飲誤食など、体によくないものを体から追い出そうとして嘔吐することもあります。
ただ嘔吐の症状は、中毒や消化器官の炎症、病気、ストレスが原因の場合もあるので、飼い主さんは必要に応じて動物病院で適切な検査や診察を受けさせる判断や、原因を解消するための工夫をしなければなりません。
犬の嘔吐物の色から分かる原因と対処方法
茶色の嘔吐物を吐く場合
茶色の嘔吐物を吐いた場合、嘔吐物からドッグフードのニオイがしないか、ドッグフードのような固形物がないか確認してみましょう。茶色の嘔吐物は、早食いや食べ過ぎ、消化不良などが原因でドッグフードが十分に消化できず戻してしまうという可能性が高いです。
もし、未消化のドッグフードで吐いた後にスッキリしたような顔で、その後は食欲もあり、元気になったことが確認できれば、基本的に心配はないと言えます。ただこれが何度も繰り返し吐いてしまう場合は、他の原因が考えられます。動物病院で一度診てもらったり、消化性の高いドッグフードに変える、早食い防止グッズを利用するなどして対策しましょう。
もし茶色がドッグフードの色ではなく、酸化した血の色の場合は、食道、胃、小腸など消化器官の出血による吐血の可能性があるので、すぐに動物病院に連れていってください。
透明で白い泡の嘔吐物を吐く場合
嘔吐物が透明、または白い泡のような嘔吐物は、唾液や胃液の可能性が高く、嘔吐物にニオイや異常がなく、犬の様子が正常であれば問題ないと考えて良いでしょう。
透明、白い泡の嘔吐物は朝に吐く犬が多く、胃が刺激されて唾液や胃液が逆流してきています。乗り物酔いで吐く場合もあります。落ち着いて寝られる場所、そして朝にバタバタしてびっくりして起こされるような場所ではなく、ゆっくり起きられる静かな場所を用意してあげることも大切です。
黄色・黄緑色の嘔吐物を吐く場合
黄色い嘔吐物は「胆汁」を吐いている可能性が高いです。胃に何も入っていない状態が長時間続くと、犬の胃には胆汁が流れ込んで胆汁嘔吐症候群を引き起こします。
嘔吐物の特徴としては、胃は空っぽなので、フードや固形物は混ざっておらず、さらっとしていて、薄い黄色や黄緑のような色になります。お腹が空いているので、ドッグフードへも勢いよく食いつくかと思われます。
黄色、黄緑色の嘔吐物の対処方法は、ドッグフードを一定時間内に与えて胃が空っぽになる時間を減らせば嘔吐は改善されます。生活リズムが合わずどうしても時間が開いてしまうことがある方は、時間設定ができる自動給餌器を購入するなどして、犬が規則正しくドッグフードを摂取できるように工夫しましょう。
赤色の嘔吐物を吐く場合
鮮やかな赤い色の嘔吐物の場合、肺や気管、口腔内、胃、食道で出血している可能性があります。原因は様々ですが、病気やストレス、その他疾患による炎症や、異物の誤食によって消化器官が傷つけられているなどの原因が考えられます。
全体が赤くなくても、赤い血が点々と混ざっている場合も動物病院で診てもらいましょう。ただし赤いものが点々としている場合、たとえばウェットフードなどに含まれるニンジンやトマトなど赤い食べ物の欠片である可能性もあるので、本当に混ざっているのが血かどうかも確認しておいた方がいいかもしれません。
犬が嘔吐する場合に考えられる病気や疾患
上記の嘔吐の例を見ると、ほとんどの嘔吐は緊急性のないようにも思えますが、赤い血が混ざっていなくても、他にも様子がおかしかったり、別の症状を併発していれば、危険な病気の症状として嘔吐が現れている可能性はあります。以下、犬が嘔吐する場合に考えられる病気と、嘔吐と共に現れる可能性の高い症状などを解説したいと思います。
感染症
犬が細菌やウイルスに感染すると、代表的な症状として嘔吐の症状が現れます。他にも下痢や元気喪失、食欲不振などもみられます。
感染症は自己治癒が難しく、抗生物質など薬の投与や適切な治療が必要なので、なるべく早く動物病院に連れて行きましょう。
炎症(胃腸炎、膵炎、脳炎等)
胃腸炎、膵炎、脳炎など、各器官の病気や疾患で炎症が引き起こされることによって犬が吐くようになります。また、アレルギーが原因の炎症もあります。炎症の場合も、嘔吐の他に食欲不振や下痢、元気喪失などの症状があります。
こちらも炎症を抑え、炎症の原因となっている病気の治療が必要なので、動物病院へすぐに連れて行きます。
腫瘍(がん)
直腸がんや胃がんなど消化器官の腫瘍を始め、犬に多い体表のがん(皮膚がん、乳腺がん)でも嘔吐や下痢の症状が現れます。
中毒
犬に対して毒性のある物質が体に取り込まれることで、嘔吐や下痢、神経症状(痙攣、神経麻痺など)を引き起こします。たとえば犬が食べてはいけないと言われるチョコレートやニンニク、またオレンジ系のアロマなども中毒の原因となります。
食べてすぐに吐き出していればその後、問題ない場合もありますが、中毒は緊急性が高いケースも多く、その物質の毒性や摂取量によっては愛犬が死に至ってしまうこともあるので、なるべく早く動物病院に連れていきましょう。
腎不全
腎不全とは腎臓機能が大幅に低下して正常に働いていない状態を指します。慢性と急性があり、急性腎不全の場合、治療による完治も可能ですが、腎不全の多くは徐々に腎臓機能が低下していく慢性腎不全で、老犬に多く診られます。
尿量の低下や食欲不振、吐き気、元気喪失などを引き起こしますが、完治はのぞめませんので、進行を遅らせたり症状を抑える薬の処方となります。
肝不全
肝不全とは肝臓機能が大幅に低下して正常に働いていない状態を指します。肝不全も慢性と急性があり、嘔吐の他、腹部の体液の貯留や皮下出血、食欲不振、元気喪失などの症状を引き起こします。
腸閉塞
腸閉塞は、異物の誤飲誤食、腸重積、重度の便秘、腸ヘルニア、腸腫瘍、神経麻痺などが原因で引き起こされる病気です。腸が完全に塞がってしまっているので、嘔吐の症状の他に、下痢や便秘、食欲不振などが現れます。
犬の中でも特にミニチュアダックスフントは腸にポリープができやすい犬種なので、腸閉塞にかかりやすいと言われています。
腸重積
腸重積とは、腸管の一部が腸管に入り込んでしまい、腸が重なったまま抜けなくなってしまう病気です。上項目の腸閉塞と併発します。異物や寄生虫、腫瘍が原因で起こります。
幼犬がかかりやすく、嘔吐の他、下痢や食欲不振、元気消失、腹痛などの症状がみられます。犬種ではジャーマンシェパードが腸重積を引き起こしやすいと言われています。
胃拡張・胃捻転
胃拡張・胃捻転は、胃が大きく拡張したり捻れてしまう病気です。特にグレート・デーン、ボクサー、ジャーマンシェパード、ドーベルマンなど大型犬、超大型犬が発症しやすいとされています。この場合は、一刻を争うのですぐにでも病院に連れていってください。
嘔吐しようとするものの、よだれしか出ない場合が多く、他にも呼吸困難や脈の低下などの症状もみられます。また、一度完治したとしても、再発する可能性もあるので、前に一度治療したからといって安心はできません。
まとめ
愛犬の嘔吐は、飼い主さんにとってびっくりする症状の一つだと思いますが、原因は様々です。その時の症状や嘔吐物、愛犬の様子などを見て、どのような対策をとるか、動物病院に連れて行くかなど冷静に判断しましょう。
また、嘔吐物は獣医師さんによって重要な判断材料にもなりますので、写真を撮ったりして記録しておくといいかと思います。