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ドッグフードの原材料:冬虫夏草(Cordyceps sinensis)
昆虫(幼虫)に寄生するきのこ
冬虫夏草(とうちゅうかそう)とは昆虫に寄生するきのこの一種で、コウモリガの幼虫に寄生し、冬の間は虫の姿をして夏になるときのこの子実体を形成します。
主に中国やチベットなどの高山に生息し、免疫力向上や腸内環境の改善、抗酸化作用、抗炎症作用など多くの健康効果が期待されています。
冬虫夏草は虫草、サナギダケ、ハナサナギタケ、チベット冬虫夏草、コルジセプスシンネンシスなど様々な呼び名があります。

冬虫夏草が原材料のドッグフード例
犬が食べても大丈夫?
昆虫に寄生するきのこと聞くと「ドッグフードの原材料として使用して大丈夫なのか」「犬が食べても大丈夫なのか」と不安になりますが、犬は冬虫夏草を食べても大丈夫です!
冬虫夏草は免疫力向上や滋養強壮に効果があるとされており、中国やチベットでは古くから漢方薬やお茶として親しまれています。
高山に自生している野生の冬虫夏草は非常に希少で高価ですが、現在では人工培養技術が進んでいます。特に人工培養が可能な冬虫夏草の一種であるコルジセプス・ミリタリス(Cordyceps militaris)は栄養価が高く、ドッグフードや犬用サプリメントなどに活用されています。
原材料の配合には昆虫を使用する?
ドッグフードの原材料として使用される冬虫夏草は、基本的に「人工培養」されたものです。昆虫は使用しません。
天然の冬虫夏草は価格が非常に高額であるため、ドッグフードやサプリメントの原材料としては現実的ではありません。また採取量が限られ、安定供給が困難なため商業利用には不向きです。
また、ドッグフードの原材料に使用されるコルジセプス・ミリタリスはコストを抑えることができ、また栄養素の安定性が確保できるため、ドッグフード業界で採用されています。
冬虫夏草が原材料のドッグフード例
冬虫夏草は様々なドッグフードやサプリメントの原材料に使用されています。
冬虫夏草は非常に希少で高価であるため、冬虫夏草が配合されているドッグフードやサプリメントは、他のものと比べて価格が高い傾向があります。
原材料欄には冬虫夏草のほかに、冬虫夏草エキスや冬虫夏草粉末、コルジセプス・ミリタリス、冬虫夏草多糖類、免疫サポート成分(冬虫夏草含む)、冬虫夏草発酵エキスなど様々な表記がされます。
- 犬心 低たんぱくバランス
- アニマルエッセンシャルズ 冬虫夏草・霊芝ブレンド
- 和漢みらいのドッグフード「長寿サポート」
- コルディG
- Forema Nature 冬虫夏草-鹿 など
冬虫夏草の栄養素と犬への健康効果
多くの健康効果がある
- 免疫力の向上
- 抗腫瘍作用
- 抗炎症作用
- 抗酸化作用
- 血流改善・血圧調整
- 腸内環境の改善
- 疲労回復・スタミナ向上
- 呼吸機能の向上
- 神経保護作用
冬虫夏草にはミネラルやアミノ酸、不飽和脂肪酸など犬の健康をサポートする栄養素が豊富に含まれていますが、特にこの中でもコルジセピンやβグルカン、アデノシンなどは強い抗酸化作用や抗炎症作用、抗腫瘍作用を持ち、犬の健康効果に発揮すると考えられています。
腸内環境の改善は健康につながる

引用画像:犬の腸内環境が多様なほど、健康度が高いことが明らかに!|アニコムのデータをもとに作成
アニコムホールディングス株式会社が発表した「腸内環境の多様性と健康度」に関する調査によると、「犬の腸内環境の多様性が高いほど健康度が高い」ことが分かりました。
冬虫夏草に含まれるβグルカンやガラクタンなどの多糖類は、腸内の善玉菌を増やすプレバイオティクスとして機能します。腸内の善玉菌の増殖を促進することで腸内環境のバランスが整い、便通の改善や下痢・便秘の予防に効果が期待されます。
腸内環境は、日頃からドッグフードやサプリメント、手作りごはんなどで取り入れることで改善されていきます。
特に内臓機能が衰えている高齢犬や、病気や怪我をして免疫力が低下している犬などには毎日のごはんの中で取り入れてみましょう。
コルジセピンの抗腫瘍効果の研究
福井大学の研究では、冬虫夏草から抽出されるコルジセピンと多糖類の組み合わせが、抗腫瘍効果を高める可能性が示されています。
コルジセピンは冬虫夏草に含まれる核酸類似化合物で、抗炎症作用や血管新生の抑制を通じて、がん細胞の増殖抑制やアポトーシス(細胞死)を誘導し、がん細胞の成長を抑える作用が報告されています。
特にコルジセピン単体よりも、多糖類と組み合わせることでがん細胞の抑制作用が増大したと言われています。
参考:冬虫夏草から抽出されるコルジセピンの多糖類とのシナジー効果による抗腫瘍性の促進|福井大学
犬に冬虫夏草を与えるには?
トッピングや手作りごはん
冬虫夏草が原材料のドッグフード(総合栄養食)はほとんどありませんが、サプリメントやウェットフードは販売されています。
犬に与える場合は普段のドッグフードにトッピングしたり、おやつとして少量を与えたり、手作りご飯に取り入れてみましょう。
人工培養の冬虫夏草
天然の冬虫夏草は農薬や重金属が含まれているため、犬に与えてはいけません。そもそも天然の冬虫夏草は希少で高価であり、市場にはほとんど流通しないため、天然を入手するのは非常に難しいと言えます。
犬に冬虫夏草を与える場合は、冬虫夏草配合のドッグフードやサプリメント、粉末、エキス、ドリンクとして販売されている人工培養のものを活用しましょう。
冬虫夏草の注意点
アレルギーや副作用がないか確認
犬に冬虫夏草を初めて与える場合は少量から始め、食べたあとは犬の体調や様子に異変がないかよく確認しましょう。元気消失や嘔吐、下痢などがみられた場合は獣医師に相談してください。
服用薬との相互作用の懸念
冬虫夏草は免疫の調整や血流改善の作用があるため、免疫抑制剤や血圧降下薬などの特定の薬と相互作用を引き起こしてしまう恐れがあります。そのため、持病のある猫には与えるのは避けた方が良いでしょう。
散歩で出合う?
中国やチベットの「本来の冬虫夏草」は日本には自生していませんが、冬虫夏草の仲間であるサナギダケやセミタケなど約50種類以上の自生が日本でも確認されています。
しかし、これらは山地や森林の湿った土壌に生えることが多いため、公園や道端ではほぼ見られず、犬との散歩で出合う可能性は極めて低いとされています。
キャンプや登山などで山地や森林を散歩したり探検する場合は発見できる可能性もありますが、もし見つけても採取したり触れたりするのはやめましょう。
まとめ
- 冬虫夏草は昆虫(幼虫)に寄生して子実体を形成する珍しいきのこ
- ドッグフードでは人工培養された冬虫夏草が配合される
- 冬虫夏草が配合された犬製品は高価になる傾向
- 多くの健康効果があり、特に免疫力向上や抗腫瘍に期待
- 特定の薬との相互作用が起こらないよう注意が必要