ペットフード製造には届け出が必要
ドッグフードを製造する製造業者は、ペットフード安全法で都道府県の地方農政局にペットフード製造業者の申請を届け出る義務があり、そこで申請が通ればペットフードの製造が認められます。すでにペットフードの製造実績があったり、申請を一度出していれば次の製造で届け出は必要ありません。
たとえば今まで食品製造を行っていた工場がペットフード製造を新たに始める際にも、ペットフード製造業者の届け出は必要となります。
ドライフードの製造工程
原料を粉砕、混合
工場に運び込まれた原材料は、ある程度の大きさにカットもしくはミキサー等にかけられ、粉砕機で粉砕されてから混合されます。原材料によってはあらかじめ粉砕されているものもあるので、そのまま混合される場合もあります。
乾燥肉や○○ミールと呼ばれる原材料は、乾燥して粉状になった状態で工場に運ばれてくるため、粉砕の必要がなく、すぐに混合できます。生肉などは工場でペースト状に粉砕しドロドロの状態にしてから混合されるので、見た目にもだいぶ違いますが、風味の強さ等も乾燥肉とは異なります。
ペットフードの製造において粉砕について触れられることはあまりありませんが、一般的に粉砕されたときの粒度が細かいほど品質が良いドライフードができると言われています。穀物などの植物においては、粉砕することでデンプンやグルテンの粘着効果を強まるので、少ないオイルで成形しやすくなり、また粉砕によってデンプンがα化し犬が穀物をより消化しやすい状態にすることができます。
加熱・加圧・成形(エクストルーダー)
混ぜ合わされた原材料は、エクストルーダーで加熱と加圧の工程に入ります。エクストルーダーによって高圧力をかけながらおよそ120~135度で10~20秒ほど加熱して調理します。10~20秒という短時間で加熱を行うことで、ビタミン等の劣化や損失を最小限に抑えることができます。
加熱と加圧で調理された原材料の生地は、最後の部分で押し出され、金太郎飴のようにカットされて同じ粒の形になります。この時点ではドッグフードの粒はまだ温かく、乾燥されていないので指で潰せる位の水分を含んだ柔らかい状態です。
乾燥、冷却、コーティング
エクストルーダーから押し出されたドッグフードの粒たちは、乾燥機で水分が10%以下になるように乾燥されます。乾燥して温かいカリカリのフードを冷却し、嗜好性を高めるためにの嗜好材などのコーティングをして仕上げます。
篩い分け、包装
最後に篩い分けで完成したドッグフードを篩いにかけて形が崩れたものや規格外の大きさのフードを除外し、一定の形・一定の大きさの粒を選別し製品として包装していきます。
店頭に並ぶようなパッケージ袋に入れられ包装されると私達がお店で見るような姿となり、製品として完成します。
製品完成
製品が完成するとトラックや船などで購入者や販売者が所有する倉庫まで運ばれていきます。
ウェットフードの製造工程
原料
ウェットフードは嗜好性や食感なども重視されるので、生または冷凍された状態で工場に運ばれてくることが多いです。生なら次の製造工程に進み、冷凍の原料なら解凍作業が入ります。
蒸煮、冷却
生の原材料または解凍された原材料は、まず「蒸煮(じょうしゃ)」という工程で調理されます。先にボイラーからの蒸気で原材料を蒸した後に煮る調理方法です。この時点ではまだ運ばれてきたままで肉と骨と分けられてはいません。蒸煮の後はあつあつの原料は冷却されます。
クリーニング 魚肉・骨分離
蒸煮した原材料はクリーニングで骨と分離し、ウェットフード製品によって使用する部位と使用しない部位は異なりますが、副原料、白身肉、血合肉等に原材料を分けられます。日本では食品の不可食部位を使用している場合が多いため、すでに骨などが分離されてすぐ使用できる状態で工場には運ばれる場合も。
充填、巻締
パウチまたは缶詰などの容器に充填(じゅうてん)し、巻締めで接合しウェットフードの入った袋や缶を密閉します。
加熱・加圧殺菌 レトルト
ウェットフードはレトルトパックや缶に詰められ密閉されてからレトルト釜で加熱・加圧されます。容器に入った状態で殺菌されるのがドライフードとの大きな違いです。
冷却、ラベル巻き、箱詰め
冷却やラベル巻き等の工程を経て箱詰めされて販売される状態の製品となります。
製品完成
製品として完成されたウェットフードは、ドライフードと同様、トラックや船などで購入者や販売者が所有する倉庫まで運ばれていきます。
自社製造と委託製造
ドッグフードの製造は、工場での製造から販売まで一環している自社製造と、販売社やメーカーが工場に製造を依頼する委託製造の2つの方法があります。
自社で製造する方法
国内でドッグフードを自社製造しているのは工場を持てるほど大手有名メーカーであることがほとんど。もしくは元々工場を所有していた製造業者がペットフードの開発を行った場合です。特にドライフードに関しては、ドライフードに必要なエクストルーダーという機器を所有している企業はほとんどが大手企業です。
自社製造のメリットは、トラブルや問題が起きた際に対処が早く原因特定もしやすいこと。また、他社製品の製造を行っていなければ他社の商品が混入したりすることがなく自社製品のみの製造ラインにできることも大きな魅力です。
委託で製造する方法方法
国内の中小企業や新しくペットフード事業を始めたメーカーは委託製造(OEM)であることがほとんどです。オリジナルレシピとしてフードを販売したい企業が委託製造を請け負う工場と契約し、ドッグフードのレシピ提案や製造を任せる方法になります。自社工場と大きく違うのは、販売業者と製造業者が異なる点です。
委託製造のメリットは、理想のレシピを実現できる工場を柔軟に探せること。また自社製造はレシピや調理方法の変更を行うためには、工場の設備自体を変える必要があるため、コストも手間も非常にかかりますが、委託製造であれば工場が変更できれば、レシピの変更やリニューアルは自社製造に比べて容易です。