犬の有毒植物の誤食や誤飲による中毒の危険性
犬は散歩中の誤食による中毒が多い
植物の中には、犬にとって危険な有害成分を含む種類がたくさん存在します。犬は嗅覚に優れていますが、好奇心が強い動物なので、どれが有害な植物なのかを判断できず食べてしまうことがあります。
近年は外で飼育されていた環境から屋内飼育へ変化してきたことから、中毒の発症も自然由来のものよりも家庭にある人工物の中毒事例が増えてきましたが、それでも事故の発生は午前10時台と午後6時台の散歩の時間帯がピークとなっており、有害植物の誤食や誤飲、吸引、皮膚への付着による中毒が多く見られます。
身の回りや散歩ルートの有害植物に注意
多くの場合、診察に際して何らかの植物中毒を疑ったとしても、身の回りや散歩ルートにどのような有毒植物があるのかを知らないことが多いため、原因の特定は難しいです。
このため日頃から庭や自宅に危険な植物がないかに注意し、また散歩や外出時はなるべく犬が落ちている植物を口にしてしまわないよう注意しましょう。
犬に危険な有毒植物の種類と症状一覧
画像引用元:ペットが出合う危険な植物|環境省
環境省も引用している「動物が出合う中毒~意外にたくさんある有毒植物~」を発行している公益財団法人動物臨床医学研究所から出版されている「イヌ・ネコ家庭動物の医学大百科(改訂版)」にはより詳しく有毒植物が紹介されていたので、こちらから犬にとって危険とされている有毒植物をまとめました。
毒性を示す植物 | 中毒症状 | 有毒部分 | 科 |
---|---|---|---|
イヌサフラン | 嘔吐、下痢、沈うつ、腎不全、呼吸困難、手足のしびれ、循環不全、腎不全が起こると死亡率が高まる | 種類により有毒部分と毒性の強さは様々だが、動物にとってはどれも危険。とくに球根には注意が必要 | ユリ科 |
エンレイソウ(タチアオイ) | |||
オニユリ | |||
オモト | |||
コバイケソウ | |||
シュロソウ | |||
ツクバネソウ(ツチハリ、ノハリ、四葉玉孫) | |||
チューリップ | |||
バイケイソウ(ハクリロ) | |||
ヒアシンス | |||
スズラン | 嘔吐、下痢、腹痛、運動失調、徐脈、不整脈、心不全 | 全草(切り花を挿しておいた水も毒性を示す) | スズラン科 |
タマネギ | 嘔吐、下痢、赤色尿、黄疸、口腔粘膜蒼白、頻脈、多呼吸。重症度は個体により様々。柴犬と秋田犬は重症化しやすい。 | 全部分 | ネギ科 |
ニンニク | |||
ネギ | |||
アマリリス | 嘔吐、下痢、腹痛、流涎、血圧低下、中枢神経麻痺、心不全。死に至ることもある。 | 球根はとくに毒性が強く、少量でも危険 | ヒガンバナ科 |
キツネノカミソリ(ヤマクワイ) | |||
スイセン(セッチュウカ、ハルタマ、ガカク) | |||
ヒガンバナ(マンジュシャゲ) | |||
アヤメ | 吐気、嘔吐、下痢、腹痛、胃腸炎 | 根茎 | アヤメ科 |
オニドコロ(ナガトコロ) | 嘔吐、胃腸炎 | 根茎 | ヤマノイモ科 |
ジャガイモ(バレイショ、ジャガタライモ) | 嘔吐、下痢、めまい、瞳孔散大、幻覚、呼吸困難、死に至ることもある | ジャガイモ、トマト、ナスなどの熟した物は無害だが、目や緑の実、葉などは有毒、チョウセンアサガオやハシリドコロは全草が猛毒。タバコの葉は紙巻きタバコ摂取と同様煮ニコチン中毒を発症 | ナス科 |
タバコ(ケブリグサ、メザマシグサ、リンゴニソウ、アホウグサ) | |||
チョウセンアサガオ(マンダラケ、キチガイナス) | |||
トマト | |||
ナス | |||
ハシリドコロ(ヤマナスビ、ナナツギキョウ、サワナスビ、オニミルクサ) | |||
ヒヨドリジョウゴ(イヌクコ、ウルシタケ、カラスノカツラ、ヒヨドリソウ) | |||
ホオズキ | |||
アサガオ | 嘔吐、下痢、反射低下、瞳孔散大、幻覚、血圧低下 | 種子 | ヒルガオ科 |
ランタナ(シチヘンゲ、コウオウカ、セイヨウサンダンカ) | 嘔吐、下痢、腹痛、虚脱、嗜眠、黄疸、肝障害、瞳孔散大、光線過敏症 | 未熟種子、葉 | クマツヅラ科 |
キツネノテブクロ | 吐気、嘔吐、口渇、下痢、腹痛、耳鳴り、めまい、けいれん、不整脈、徐脈、高カリウム血症。重症例では心停止 | 葉、根、花 | ゴマノハグサ科 |
ウルシ | 皮膚のかぶれ | 樹液、植物全体 | ウルシ科 |
ハゼノキ(ハジ、リュウキュウハゼ) | |||
ホウセンカ(ツマベニ、ホネヌキ、トビクサ、エンカバナ) | 嘔吐、腹痛、胃腸障害、子宮収縮 | 全草、種子 | ツリフネソウ科 |
ツリフネソウ | |||
ドクウツギ(ウジゴロシ、サルコロシ、オニウツギ、イチロベコロシ) | 接種後30分くらいで発症。嘔吐、流涎、瞳孔縮小、血圧上昇、全身硬直、けいれん、呼吸困難。死に至ることもある。 | 種子、果実(特に未熟果)、葉、茎 | ドクウツギ科 |
トチノキ(アカバナトリノキ) | 下痢、胃腸炎、脱水、電解質不均衡、振せん、麻痺 | 種子、樹皮、葉 | トチノキ科 |
ウマノアシガタ | 流涎、口腔の灼熱感、嘔吐、下痢、運動失調、不整脈、けいれん。死に至ることもある。 | 全部分(特に根) | キンポウゲ科 |
オダマキ(イトクリソウ、ムラサキオダマキ) | |||
キツネノボタン | |||
クリスマスローズ | |||
ケキツネノボタン | |||
トリカブト(ブス、ブシ、カブトギク、カブトバナ、ハナトリカブト) | |||
ハンショウヅル | |||
ヒエンソウ(チドリソウ、デルフィニウム) | |||
フクジュソウ(ガンジツソウ) | |||
イカリソウ(インヨウカク) | 知覚神経興奮 | 全草 | メギ科 |
コウモリカズラ(ヘンプクカズラ) | 頻脈、神経障害、けいれん | 種子 | ツヅラフジ科 |
オシロイバナ(ユウゲショウ) | 嘔吐、下痢、腹痛、幻覚作用(種子)、皮膚刺激 | 根、茎、種子 | オシロイバナ科 |
ヨウシュヤマゴボウ(アメリカヤマゴボウ) | 口腔刺激、嘔吐、下痢、視覚障害、頻脈、呼吸抑制、けいれん、昏睡。死に至ることもある。 | 全草、根、種子 | ヤマゴボウ科 |
イラクサ(イタイタクサ、イライラクサ) | 皮膚接触の場合は痛み、かぶれ、炎症。経口摂取の場合は口腔の灼熱感、流涎、嘔吐、筋力低下、振せん、呼吸困難、徐脈 | 葉、茎の刺毛 | イラクサ科 |
アサ(タイマ) | アサでは運動失調、幻覚、麻痺、沈うつと興奮、嘔吐。イチジクでは皮膚のシミ、粘膜のびらん | 全草(特に雌株)、イチジクは葉、枝 | クワ科 |
イチジク | |||
ロベリア(ロベリアソウ、ルリミゾカクシ) | 嘔吐、下痢、胃腸炎、溶血、血圧低下、呼吸困難、けいれん、意識障害、散瞳、心臓麻痺。死に至ることもある。 | 全草、根、(キキョウ) | キキョウ科 |
ミゾカクシ | |||
キキョウ | |||
フジバカマ | クマリン中毒(血液凝固不全、出血) | 全草 | キク科 |
セイヨウキヅタ(アイビー、ヘデラヘリックス) | 嘔吐、下痢、腹痛、口渇、流涎、皮膚刺激 | 葉、果実 | ウコギ科 |
ドクゼリ(オオゼリ、ウバゼリ、ウマゼリ、イヌゼリ) | 流涎、嘔吐、口腔の灼熱感、胃腸炎、振せん、けいれん、呼吸困難、昏睡。死に至ることもある。経過が非常に早いのが特徴 | 全草 | セリ科 |
アゼレア(オランダツツジ、セイヨウツツジ) | 口腔内の灼熱感、流涎、嘔吐、下痢、筋力低下、視力障害、徐脈、不整脈、血圧低下、呼吸困難。消化器症状は数時間以内に発生。摂取量が多いと数日で死亡 | 葉、花(花蜜) | ツツジ科 |
アセジ(アシビ) | |||
カルミア | |||
サツキ | |||
シャクナゲ | |||
ツツジ | |||
ハナヒリノキ(クサメノキ、クジャミノキ、チシコロシ) | |||
イチヤクソウ(カガミグサ、キッコウソウ、ベッコウソウ) | 血管拡張による血圧低下 | 全草 | イチヤクソウ科 |
トウゴマ(ヒマ) | 皮膚炎、口腔の灼熱感、嘔吐、下痢、腹痛、血圧上昇、めまい、けいれん、トウゴマでは神経障害、呼吸困難、腎不全。死に至ることもある | 茎(樹液)、葉、種子 | トウダイグサ科 |
トウダイグサ(スズフリバナ) | |||
ポインセチア | |||
ノウルシ(サワウルシ、キツネノチチ、ハカノチチ) | |||
ユズリハ(イヌツル、ツルノキ) | 嘔吐、下痢、腹痛、肝障害、黄疸、麻痺。死に至ることもアル | 葉、樹皮 | ユズリハ科 |
ミヤマシキミ(シキビ、タチバナモッコク、モクタチバナ) | 嘔吐、手足のけいれん、麻痺。皮膚のかぶれ(コクサギ) | 全草(ミヤマシキミ)、葉(コクサギ) | ミカン科 |
コクサギ | |||
セイダン(アフチ、アカセンダン) | 流涎、嘔吐、下痢、激しい胃炎、運動失調、けいれん、呼吸停止、心停止。摂取後数時間で症状が発現 | 樹皮、果実 | セイダン科 |
モクレン(マグノリア、シモクレン、ハネズ) | 筋肉の弛緩、麻痺 | 樹皮 | モクレン科 |
コブシ | |||
シキミ(ハナノキ、コウノキ、ハカバナ) | 嘔吐、下痢、めまい、深眠、血圧上昇、呼吸困難、全身けいれん、流涎 | 果実、樹皮、葉、種子 | シキミ科 |
イチイ(オンコ、アララギ) | 悪心、嘔吐、腹痛、散瞳、筋力低下、呼吸困難、不整脈、けいれん、突然死 | 種子(果肉は無毒)、葉、樹体 | イチイ科 |
ワラビ(ワラベ、ビケツ、ハシワラベ) | 貧血、慢性衰弱、運動失調、不整脈、血尿。死に至ることもある | 地上部、根茎 | ウラボシ科 |
エゴノキ(ロクロギ、チシャノキ) | 口腔と喉の刺激、胃のただれ、溶血作用 | 果皮 | エゴノキ科 |
キョウチクトウ(タイミンクワ、タウチク) | 皮膚のかぶれ、口腔の疼痛、嘔吐、下痢、腹痛、徐脈、不整脈、ときに高カリウム血症、心臓麻痺 | 樹皮、根、枝、葉 | キョウチクトウ科 |
クサノオウ(タムシグサ、ニガクサ、ハッカツサイ) | 嘔吐、胃腸炎、体温や脈吐くの低下、幻覚、呼吸困難。死に至ることもある | 全草、乳液 | ケシ科 |
ケシ(ツガル、アフヨウ) | |||
ケマンソウ(フジボタン、タイツリソウ、ヨウラクボタン) | |||
タケニグサ(チャンパギク) | |||
ザクロ(イロタマ、セキリュウ) | 嘔吐、下痢、胃炎、めまい、運動失調、精神混乱、湿疹、中枢神経麻痺 | 樹皮、根皮 | ザクロ科 |
エレバントイアー(カラー、アンセリウム、カラジウム) | 皮膚のかぶれ、口腔と喉の炎症、流涎、嘔吐 | 葉、茎、根茎 | サトイモ科 |
カラスビシャク(ハンゲ、ヘソクリ) | |||
クワズイモ | |||
サトイモ | |||
ショウブ | |||
スパシフィラム | |||
ディゲンバキア(シロガスリオソウ) | |||
フィロデンドロン | |||
マムシグサ(ヘビノダイハチ、ヤカゴンニャク、ムラサキマムシグサ) | |||
ジンチョウゲ(チョウジグサ、ハナゴショウ) | 口腔内の水疱と浮腫、流涎、嘔吐、腹痛、下痢、腎不全 | 全草 | ジンチョウゲ科 |
ミツマタ | |||
ソテツ | 摂取後12時間以内に発症。嘔吐、腹痛、肝不全(黄疸、凝固障害)、全不全、運動失調、嗜眠、昏睡、けいれん。死に至ることもある | 種子、茎幹 | ソテツ科 |
ダイオウ(ヤクヨウダイオウ) | ダイオウ類は嘔吐、下痢、黄疸、肝不全、腎不全、不整脈、低カルシウム血症。ヤナギタデは血圧低下、皮膚刺激 | 葉、ヤナギタデでは特に種子 | タデ科 |
ショクヨウダイオウ(ルバーブ) | |||
ヤナギタデ(ホンタデ) | |||
マサキ(シタワレ、ウシコロシ) | 嘔吐、下痢、手足の腫れ、麻痺 | 葉、樹皮、果実 | シニキギ科 |
ゴクラクチョウカ | 嘔吐、下痢、腹痛 | 全草 | バショウ科 |
ボタン(スメラギクサ、ヤマタチバナ) | 皮膚のかぶれ(乳液)、嘔吐、胃腸障害、血圧低下 | 根、乳液 | ボタン科 |
シャクヤク | |||
ヤマシャクヤク(ノシャクヤク) | |||
キバナハウチワマメ(キバナハウチワマメ、ルピナス、ノボリフジ) | 嘔吐、腹痛、流涎、発汗、血圧上昇、運動失調、呼吸不全。死に至ることもある | 全草、種子 | マメ科 |
キバナフジ(ゴールデンチェーン、キングサリ) | |||
ニセアカシア(ハリエンジュ) | |||
フジ(ノダフジ、シロバナフジ、アカバナフジ) |
ユリ科
ユリ科の植物には、ユリ、チューリップ、ヒアシンスなど身近な花が多いです。動物にとってどの種類も危険ですが、特に球根の毒性が強いため注意しましょう。
手足のしびれや循環不全などを引き起こし、腎不全がを発症すると死亡率が高くなります。
スズラン科
スズランは運動失調や不整脈、心不全などを引き起こします。切り花を挿しておいた水も毒性を示すので、観賞用として飾るのもおすすめしません。
ネギ科
タマネギやネギ、ニンニクなどに含まれる有機チオ硫酸化合物は溶血性貧血を引き起こすため、犬に与えてはいけない食べ物として有名です。
重症度は犬個体によって異なりますが、柴犬と秋田犬は特に重症化しやすいと言われています。
タマネギは、様々な食品に含まれるので、人の食べ物を食べたがる犬の場合は、特に注意しましょう。
ヒガンバナ科
ヒガンバナやスイセンなどの花には強い毒があり、毒に球根は少量でも危険です。神経麻痺や心不全などを引き起こし、最悪死に至ります。
ナス科
ジャガイモ、トマト、ナスなどの熟した野菜は無害ですが、未成熟の緑の実や芽、葉などは有毒成分が含まれています。人にとっても犬にとっても身近な野菜ですが、摂取量によっては死に至ることもあるので誤食に注意しましょう。
有名なところではジャイガモの芽に含まれるソラニン、青いトマトに含まれるトマチンなどが挙げられます。
タバコの葉は紙巻きタバコ摂取と同様、ニコチン中毒を発症する危険性があります。
ゴマノハグサ科
葉から抽出される成分(ジギタリス)は、強心利尿剤して使用されます。若葉の頃に食用コンフリー(ヒレハリソウ)と混同してしまうことがあるので注意が必要です。
吐気や嘔吐、下痢などの症状の他、重症例では高カリウム血症や心停止などを引き起こす場合もあります。
ウルシ科
漆器にも使用される漆(ウルシ)科の植物に含まれる「ウルシオール」は強力なアレルギー性接触性皮膚炎を誘発し皮膚のかぶれを引き起こします。
ウルシオールは気化するので、直接接触していなくても、犬が近くを通っただけでもかぶれることがあります。
ドクウツギ科
ドクウツギ科はウジゴロシやサルゴロシ、イチロベコロシなど物騒な名前ですが、美しく甘味があるため、人での中毒も多発しています。犬も甘味に嗜好性を示すので誤食してしまう可能性があります。
摂取後30分程で発症すると、瞳孔縮小や血圧上昇、全身硬直やけいれん、呼吸困難などを引き起こし、最悪の場合、死に至る場合もあります。
キンポウゲ科
キンポウゲ科の植物はトリカブトなど毒性が非常に強い種類が多く、運動失調やけいれんを引き起こし、死に至ることもあります。
ヤマゴボウ科
アザミの根を加工したヤマゴボウという漬け物の誤食による中毒が発生した例があります。呼吸が抑制され、けいれんや昏睡状態に陥り、死に至ることもあります。
クワ科
クワ科の大麻(アサ)は、マリファナの原料として知られています。日本では「大麻取締法」により規制されていますが、日本では自生する場合もあります。
また、イチジクの有毒部分は葉や枝なので果実に毒はありません。
キキョウ科
キキョウの根は漢方薬として使用されますが、呼吸困難や胃腸炎、けいれん、心臓麻痺などを引き起こし死亡することもあります。
キク科
キク科のフジバカマはクマリン中毒を引き起こします。クマリンは殺鼠剤が有名ですが、血液凝固不全を引き起こし、血が止まりにくくなります。
セリ科
ドクゼリなどのセリ科植物は茎が1m以上にもなる大型の植物で、根茎にはタケノコに似た節があり、春先の若葉の頃にはワサビやセリと間違えやすいようです。
けいれんや呼吸困難、昏睡状態になることもあります。発症や重症化するまでの経過が非常に早いのが特徴で、死に至ることもあります。
ツツジ科
ツツジ科の植物は庭木として自宅に植えられていることが多く、庭で遊ばせている時や散歩ルートで食べてしまう事があります。
消化器症状は数時間以内に発現し、摂取量が多いと数日で死亡する危険な有毒植物です。
トウダイグサ科
トウゴマ(ヒマ)は神経障害、呼吸困難、腎不全を引き起こします。種に含まれるリシンは人でもたった4~5粒で死に至る程の猛毒です。
ポインセチアの樹液による皮膚炎は人で多発しています。
ユズリハ科
肝障害や黄疸、嘔吐、下痢などを引き起こし、死に至ることもあります。
セイダン科
セイダン科の植物は摂取後、数時間で症状が発現し、人も動物の死亡例も発生しています。
シキミ科
仏前に備える木として知られています。葉から抹香や線香を製造しますが、毒性が強く「悪しき実」からシキミといわれています。
ウラボシ科
ワラビなどのウラボシ科の植物は、ハムスターやモルモットが摂取すると膀胱腫瘍や出血性膀胱炎を誘発することが分かっています。
不整脈や血尿を引き起こし、死に至る場合もあります。
ケシ科
観賞用や医薬品などに利用される有用なものが多いですが、有毒な種類も多く、幻覚や呼吸困難などを引き起こし、死に至る場合もあります。
ケシの栽培は一般には禁止されていますが、ケシ科には身近にみられる植物もあります。
ザクロ科
ザクロの樹皮や根皮にはペレチエリンという駆虫薬にも用いられる有毒成分が含まれています。精神混乱、湿疹、中枢神経麻痺を引き起こします。
サトイモ科
サトイモの葉や茎、根茎を食べると、皮膚のかぶれや、口腔・喉の炎症を引き起こします。
尿路結石の原因となる「シュウ酸カルシウム」を含んでいます。有害ですが食べた時の刺激が強いため、多量摂取はまれです。食用のサトイモも生で食べると中毒を発生してしまうので自宅での誤食にも注意しましょう。
ソテツ科
嘔吐や腹痛、肝不全、昏睡、腎不全やけいれんなどを引き起こします。摂取後12時間以内に発症し、死に至ることもあります。
また、発がん性や催奇形性があることから長期摂取も危険です。
タデ科
タデ科のダイオウの根茎を乾燥させたものは漢方薬の大横(緩下剤)として利用されています。
ショクヨウダイオウ(ルバーブ)の葉柄(葉のじく)はジャム、ヤナギタデの葉は「たで酢」の材料として使用され身近ですが、ダイオウやショクヨウダイオウの葉にはシュウ酸塩が含まれるので、犬が食べると中毒を発症する場合があります。
ボタン科
ボタンやシャクヤクの根(根皮)は漢方薬として使用されますが、そのまま食べると中毒を発症する場合があります。
マメ科
一部のマメ科植物の全草や種子には有毒成分が含まれることがあり、嘔吐や下痢、運動失調、呼吸不全などを引き起こす場合があります。
犬の中毒の治療方法
- 催吐
- 胃洗浄
- 吸着剤の投与
- 下剤の投与
有毒植物によって中毒を発症した場合、治療として催吐や胃洗浄、活性炭などの吸着剤や下剤の投与の他、それぞれの犬の症状に応じた治療(対症療法)を行います。
粘膜への刺激が強い物質による中毒の場合は、吐く時に犬の食道や口腔の粘膜を痛めることがあるため、吐かせるには十分な注意が必要です。
まとめ
- 身近な有害植物による犬の中毒事例はよく見られるが原因の特定は難しい
- 植物の種類や摂取量によっては死に至ることもある
- 治療には胃洗浄や活性炭などの吸着剤、下剤の投与や対症療法が用いられる