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ドッグフードの原材料:ごぼう(burdock)
ごぼうはキク科の多年生植物で、とくに日本や中国、韓国などアジアで広く栽培され、さまざまな料理の食材として親しまれています。他の国では植物の根を食べる習慣があまりないため根まで食べる文化は非常に珍しく、アジアに来てごぼう料理を見たときは驚く人が多いといわれています。
この記事ではごぼうの栄養価について、ごぼうが原材料のドッグフードの健康効果、与えるときの注意点をご紹介します。
ごぼうを使ったドッグフードやおやつ
ごぼうは食物繊維やミネラル、ビタミンが豊富に含まれています。原材料のメインとして使われることはほとんどありませんが、犬の健康をサポートするためにさまざまなドッグフードやおやつに使用されています。
- CUPURERA/レティック ベニソンエクストリーム
- OBREMO/ドッグフード 鶏肉
- ミシュワン/国産鶏肉&馬肉入り
- アカナオリジン/オリジナル
- FORZA10/アクティブラインデルモアクティブ(皮膚・被毛)
ごぼうの栄養素と健康効果
下表はごぼう100gあたりの栄養素です。
エネルギー | 50 | kcal |
脂質 | 0.2 | g |
カリウム | 210 | mg |
ビタミンB1 | 0.03 | mg |
ビタミンB2 | 0.02 | mg |
ビタミンB6 | 0.09 | mg |
ビタミンC | 1 | mg |
水溶性食物繊維 | 2.7 | g |
不溶性食物繊維 | 3.4 | g |
クロロゲン酸 | 49 | mg |
※出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
食物繊維が豊富
ごぼうには、不溶性食物繊維のリグニン、水溶性食物繊維のイヌリンが豊富に含まれています。
- 不溶性食物繊維:水分を吸収して便のかさを増やし、腸の働きを活発にして便秘の予防や改善に効果的
- 水溶性食物繊維:腸内で善玉菌のエサとなって増殖させ、悪玉菌の繁殖を抑制する
これらの効果に加え、リグニンには高血圧や動脈硬化を予防する効果、イヌリンには腎機能を高めて利尿効果があります。
カリウムが豊富
ごぼうにはカリウムが豊富に含まれています。カリウムは体内の余分なナトリウム(塩分)を排出し、血圧を正常に保つ働きがあります。
カリウムが不足して高血圧になると心臓や腎臓に大きな負担となるため、とくに高齢犬や腎臓病・心臓病リスクのある犬にとってはカリウムの適度な摂取が重要となります。
低カロリー・低脂質
ごぼうはカロリーや脂質が低いため、満腹感を得ることができつつ、過剰なカロリー摂取を防ぐことができます。犬にとって肥満は重大な健康リスクであり、糖尿病や関節炎、心臓病などの発症の原因となるため、体重管理が必要な犬にとってごぼうを含むドッグフードは良い選択肢となります。
血中コレステロールを下げるクロロゲン酸
主にコーヒーに多く含まれる
ごぼうにはクロロゲン酸が豊富に含まれています。クロロゲン酸とはポリフェノールの一種で、野菜類や果実類などさまざまな食材に含まれていますが多く配合されているのはコーヒーで、苦みや香りの元となっています。
コーヒーといえばカフェインのイメージが強いですが、クロロゲン酸はカフェインではなくポリフェノールなので、ごぼうに含まれるクロロゲン酸は犬が摂取しても大丈夫です。
クロロゲン酸の含有量 | 100gあたり(mg) |
---|---|
コーヒー | 200 |
緑茶 | 115 |
ココア | 62 |
ほうれん草 | 42 |
豆乳 | 36 |
ブロッコリー | 35 |
大豆 | 15 |
ごぼうのクロロゲン酸(49mg/100gあたり)は、他の野菜類と比べて多く含まれています。コーヒーや緑茶、ココアは犬に与えてはいけません。
血中コレステロールを下げるなどさまざまな健康効果
クロロゲン酸を補給した高コレステロール血症動物では、肝臓の脂質沈着が著しく軽減されました。コレステロール低下効果はクロロゲン酸によってもたらされる主な有益な効果であり、それが動脈硬化防止、心臓保護、肝臓保護機能などの他の二次的な有益な効果につながると仮定されています。クロロゲン酸のコレステロール低下機能は、おそらくペルオキソーム増殖活性化受容体αmRNAの上方制御を介して肝臓の脂肪酸ユニット化が増加することによるものです。
高コレステロール血症マウスを対象とした実験では、血中コレステロールやLDLコレステロール、脂肪肝を軽減し、心血管保護や肝臓保護の作用を持つことが分かりました。
その他にも、多くの試験や研究によってクロロゲン酸のさまざまな健康効果が報告されています。
- 体内の活性酵素を除去する抗酸化作用
- 体内の炎症反応を抑制する抗炎症作用
- 食後の急激な血糖値の上昇を抑制する
- ウイルスや細菌に対する免疫力の向上
ごぼうのおすすめの与え方
調理方法によってクロロゲン酸残留率が異なる
ごぼうは高い栄養価を持つためご家庭で与えることもおすすめです。
日本調理科学会誌によると、ごぼうの調理方法によってクロロゲン酸の残留率が異なることが分かりました。
各調理前後のごぼう中総ポリフェノール(クロロゲン酸換算)の残存率が、浸漬・加熱前に比べ調理後で低下していたことからも浸漬およびゆで水に溶出したことが示唆される。浸漬のみのごぼうと浸漬後に加熱したごぼうでは、加熱を行ったごぼうの方が組織が軟化されてよりクロロゲン酸を溶出するため、総ポリフェノール(クロロゲン酸換算)の残存率が低下した。
総ポリフェノール(クロロゲン酸換算)の残存率を切栽方法別に比較した結果では、有意差が認められた調理操作において、せん切りやささがきに比べ、輪切りが高い残存率であった。せん切りは切断面が多く、ささがきは切断面積が大きく厚さが輪切りよりも薄いことから、細胞の液胞が壊れやすく、輪切りよりもせん切りやささがきでクロロゲン酸が溶出したと推測される。
つまり、クロロゲン酸の健康効果を失わない調理方法は下記となります。
- 千切りやさきがけではなく、輪切りにする
- 加熱するとクロロゲン酸が茹で汁に溶け出すので、茹で汁も与える
アク抜きはほどほどに
ごぼうを調理するときに行うアク抜き。水に浸すと黒く変色する正体は、クロロゲン酸です。「しっかりアク抜きをしなければ」と何分も水に浸してしまうと、クロロゲン酸のような良い栄養素も失われてしまいます。
茹でて小さくカットする
生のごぼうは非常に硬く、犬にとって消化しにくい食べ物です。また喉に詰まったり引っかかるリスクもあります。そのため、犬にごぼうを与えるときは茹でて柔らかくし、小さくカットして消化しやすい状態に調理しましょう。
食物繊維は少量でも効果を発揮
食物繊維を過剰摂取すると、腸内の老廃物だけでなく栄養素も一緒に排出されてしまいます。
「食物繊維=たくさん摂ると良い」という印象が強いですが、ごぼうは食物繊維が豊富なので、少量の摂取でも健康効果を発揮します。
茹でることで嗜好性アップ
ごぼうは茹でることで香りが立つため、嗜好性アップや食欲促進が期待できます。ドッグフードへのトッピングやおやつとして与えましょう。
与える頻度は週1~2回程度、1日の適正摂取総カロリーの10%程度にしましょう。
犬にごぼうを与えるときの注意点
適切な与え方をしないと消化不良やその他の健康問題を引き起こすリスクがあるため、与えるときは注意が必要です。
食物繊維が多いため過剰摂取は消化不良になる
ごぼうは食物繊維が多く含まれているため、過剰摂取すると下痢や嘔吐、消化不良などを引き起こす恐れがあります。犬は食物繊維の消化をすばやく行うことができないため、最初は少量から始め、犬の体調を観察しながら量を調整しましょう。
消化器系が未発達の子犬や消化器系の機能が低下している高齢犬には、少量ずつ与えることがおすすめです。
キク科アレルギーの犬は注意
ごぼうはキク科の植物なので、キク科アレルギーの犬はごぼうを食べるのは控えましょう。
ごぼうを初めて与えるときは少量から始め、アレルギー反応がないかを慎重に観察することが大切です。皮膚の痒みや赤み、嘔吐や下痢などのアレルギー反応がみられた場合はごぼうの摂取を中止し、動物病院で診てもらいましょう。
まとめ
- 食物繊維、ミネラル、ビタミンが豊富に含まれている
- クロロゲン酸の含有量は野菜類でもトップクラス
- クロロゲン酸は抗酸化作用や抗炎症作用など多くの健康効果を持つ
- ごぼうはキク科なので、キク科アレルギーの犬には与えない